【読書感想文】おとなになって初めて『ダレン・シャンI -奇怪なサーカス-』を読んだら、感情移入しすぎて涙がとまらなかった話。
どうも!
最近、ありし日の青春を取り戻そうとしているかのごとく児童書を読みあさっている遅読です。
皆さま、児童書といえば何を思い浮かべますか?
年代によって違うとは思いますが、やはり私が小〜中学生のころはハリー・ポッター、指輪物語、ダレン・シャン、デルトラ・クエストあたりが強かったです。
しかし、なんと私は当時、この中でハリー・ポッターしか読んだことがありませんでした。
(ちなみに、デルトラ・クエストは前回読んで記事にしています↓)
そのハリー・ポッターも炎のゴブレットまでしか読んでないし、内容もあまり覚えていないという体たらく。
映画版もそのくらいまでしか観ていない……。
これはいかん、と最近は必修科目とでも言うべき児童書を読みあさっているというわけです。
そのきっかけというのも、最近ひょんなことから地元の同級生と飲み会することが増え、懐かしい話に花を咲かせるようになったから。
やはり、当時読んでいた児童書というのは盛りあがるんですよね。
しかし、有名どころを通ってこなかった私、話についていけない……。
それは悔しいッ!
というわけで、本日は児童書としてはあまりに有名な作品、『ダレン・シャンI -奇怪なサーカス-』の感想を書いていきます。
書籍情報
……あのですね。
小学館の公式HPには、あらすじらしいあらすじがありません。
続刊の内容も似たり寄ったりなので、小学館さんは何とぞあらすじのほうも充実させてくださるよう、お願いいたします。
それでは、以下感想文です。
例によって、前半はネタバレなし、後半はネタバレありでいきますね。
ネタバレなし感想
私が小学生だった当時、海外翻訳もののファンタジー小説といえば、ハリー・ポッターかダレン・シャンか、という二大派閥がありました。
男子の中には、そこにデルトラ・クエストが加わる感じ。
とにかく、どちらかを一度は読んでいて当たり前って空気でした。
私はどちらかといえばハリー・ポッター派で、ダレン・シャン派の人とは話があわなかった記憶があります。
でも、別にダレン・シャンが嫌いだとか、否定していたわけではなく、たんに当時の私が大のホラー嫌いだったからです。
そう、うわさ話でなんとなく「ダレン・シャンにはホラー要素がある」ということを聞いていたので、避けていたんですね。
でも、私ももういい大人。
立派かどうかはわかりませんが、社会人です。
さすがに今なら大丈夫だろ〜と本作を手にとったのでした。
さて、そんなダレン・シャンですが、たしかに少しばかりホラー要素があります。
あらすじにも書いてあるので言っちゃいますが、本作は主人公ダレンと親友スティーブが、とあるサーカスを観にいくところから物語は始まります。
サーカスといっても、ただのサーカスではありません。
『シルク・ド・フリーク』――ようは見世物小屋です。
本書の最初にも、
と注意書きがあるくらいです。
生々しい表現ではないけれど、出血や欠損描写もあります。
あまり影響を受けすぎる年齢や性格のお子さんに読ませるには、ちょっと危険かもしれないと心配になるくらいには、ダークな内容かもしれません。
しかし、おそらくシルク・ド・フリークに所属する人々は、普通の人間社会からは爪弾きにされた存在です。
サーカスという居場所の中で、精いっぱい生きているのでしょう。
実際、このような見世物小屋は歴史上あったことで、そこでは今でいう障害者や珍獣が出し物として扱われていたといいます。
とくに、奇異な外見が好まれる傾向にあり、奇形の人間だけでなく、誘拐された子どもが人身売買で足の腱などを切られて被虐的な道化役をさせられたり、覗き穴から性行為を見せるなどの、非人道的なおこないがあったとされています。
そういった歴史を思えば、おとなの立場から、見世物小屋を扱った作品など子どもに読んでほしくないと忌避感を覚えるのは当然かもしれません。
しかし一方で、社会福祉が発達していなかったころには、障害者が金銭を得るための仕事であり、生活手段のひとつであったことは事実です。
もちろん、こういった商売を擁護するつもりはありません。
間違いなく差別が前提になければ成り立たない商売だからです。
しかし当時、そうやって見世物小屋に規制をかけて障害者を解放し、その後の受け皿となる仕事や福祉を用意しなかった結果、それまで見世物小屋でなら金銭を稼げていた人たちの多くが路頭に迷う結果となった、という事実もまた、目を背けてはいけない事実だと感じます。
ダレン・シャンに出てくる見世物小屋のメンバーは、おそらく皆、人間ではありません。
バンパイアなど、人の世で暮らすにはあまりに苦しい人々の集まりです。
もし、一般社会でまともに生きられない人々がいるならば、一体どうすればいいのだろう?
見世物小屋を「非人道的だ」と批判するならば、代わりにどのような社会を用意すべきなのだろう?
本書は、我々が無意識に避け、蓋をしていた臭いものを真っ向から突きつけてきます。
それを見て、嫌悪感を覚えるかもしれません。
自分の子どもには見せたくないと願うかもしれません。
しかし、その臭気から逃れられない人々が、この世にはたしかにいるのです。
そこから逃げだして、目を背けることが、はたして本当に『正しい』ことなのでしょうか?
考える機会を奪うことになるのではないでしょうか?
こういう、社会の暗部を知らぬまま大人になるよりは、あるていど受け止められる土壌が育ったころに、本作を読んでみたほうがいいかもしれません。
それに、子どもって不謹慎なことが好きな子が多いですよね。
私は残念ながらそういう子どもではなかったのですが、本作の主人公たちもまた、不謹慎なことが大好き。
どうにか大人たちを出しぬいて、未知の世界をのぞき見ようとします。
こういうリアリティのある感情描写こそ、本作が子どもたちにウケている要因なのかもしれませんね。
主人公たちが、ちょっと危険なことに触れたがるのと同じように、本書に惹かれる子どもたちもまた、ちょっと危険な匂いのする『ダレン・シャン』という物語に夢中になるのでしょう。
そういう子どもの危険に惹かれる欲求、むりに押さえつけたらかえって燃えあがっちゃうと思うんですよね。
それこそ、本作の主人公たちのように。
親や先生に「行ってはいけない」と止められるほど、やりたくなる。
こういった心理を『心理的リアクタンス』と呼ぶそうです。
アメリカの心理学者ジャック・ブレーム博士が提唱した理論で、「人は自由を制限されると反発し、より自由に執着する」というもの。
人間には「自分の行動は自分で決めたい」という欲求があるのです。
そして、自らの自由が奪われそうになっていると感じたとき、本能的に反抗・反逆してしまうのだそう。
ようするに自己防衛の一種なのです。
「宿題しなさい」とか、「ゲームしてはいけません」とか親に言われて、「いまやろうと思ってたのに!」だとか、「あと少しだから!」などと反論した・されたことはありませんか?
こういった指示や命令を受けると、自由な権利を守ろうとして、あえて反発してしまうのだそう。
本能を理性で抑えるのは、子どもにはちょっと難しいですよね。
浦島太郎は「開けないように」と忠告された玉手箱を開けてしまうし、鶴の恩返しでは「絶対に中を覗かないでください」と言われた老夫婦が、ふすまを開けてしまいます。
「決して振り向いてはいけない」と言われたイザナギは、変わり果てた妻・イザナミを見て、黄泉比良坂から逃げだします。
それこそ日本神話のころから連綿とつづく、我々の本能です。
恋愛においても、反対されるほど気持ちが燃えあがる『ロミオとジュリエット効果』という心理がありますね。
そうした心理を回避する方法は、相手が「自分の意思で決めた」と思えるような声かけをすることなのだそうです。
とはいえ、親心として、お子さんが傷ついたり、危険な方向にいってしまうのは心配ですよね。
本作の主人公ダレンは、そんな『致命的な失敗』を犯してしまった少年です。
子どもたちには、彼を反面教師にして、自らを守るすべを身につけてほしいと願います。
以下、ネタバレありです。
さて、ここからはネタバレありで遠慮なく語っていきます。
実をいうとわたくし、小学生のころに一度、『ダレン・シャン』を読もうとしたことがあります。
結果的に読まなかったわけですが、それがなぜかと言えば、当時の友人に
「え、遅読は読まないほうがいいよ〜。ダレン・シャンってグロいし、ホラーだよ。そういうの苦手でしょ?」
なんて脅かされたからです。
当時の私はホラー耐性0のビビりだったので、そう忠告されて素直に諦めました。
我ながら他人の意見を素直に受け入れる、めちゃくちゃ聞き分けのいい子どもでしたね。
一方、本作の主人公ダレン・シャンですが、そんな当時の私とは真逆の性格をしています。
彼とその悪友たちは、とにかくヤンチャ坊主どもです。
主人公・ダレンはクモ好きですが、両親からプレゼントしてもらったクモを、掃除機で吸いこんでバラバラにしてしまうような、子ども特有の好奇心と残酷さをもっています。
この事件をきっかけに、両親はダレンがクモを飼うことを禁じます。
その理由を「(プレゼントであるクモが)高い買い物だったから」とダレンは言いますが、本当にそれだけが理由なのでしょうか?
思うに、子どものダレンに伝わっていないだけで、両親は「虫にも命があること」を考えてもらいたかったのではないでしょうか?
そして、それがわかるようになるまで、彼が生き物を飼うことを禁じたのでしょう。
また、ダレンの親友であるスティーブもまた、とんでもない悪童です。
本名はスティーブ・レナード(『本名』とは言うものの、ダレン・シャンの登場人物は主人公含め全員仮名)なのですが、『レパード』とあだ名で呼ばれています。カッコいい。
そんな厨二心を刺激するあだ名の持ち主ですが、その由来は、名前の響きが近いのはもちろん、彼がとんでもない乱暴者だからという物騒な理由。
小さなころから騒ぎを起こし、ケンカし、万引きしとやりたい放題。
挙げ句の果てに、まだベビーカーに乗った赤ん坊のころ、通りすがりの女性を、先のとがった枝で刺したという。とんでもねー悪ガキである。
ところで、ここで主人公が「どこを刺したかって? もちろん、ご想像のとおり!」と語っているのですが、よくわからなかった……。
ひょっとして、イギリス人お得意のブラックジョークだったりする?
だとしたら、スティーブが女性を刺したのは事実ではなく、誇張された武勇伝なのかしら。
考えてみれば、赤ちゃんが枝で人を刺すなんて、現実的じゃないですもんね。
でも、そんな伝説が創られるくらいには、乱暴者で有名だったということでしょう。なんてヤツだ。
クレイジーすぎて、母親はいろんな病院へ連れまわし、どうにか息子を腕のいいカウンセラーに診てもらったとのこと。
ひょっとして、今でいう特性持ちなのかもしれませんね。
しかもですね、父親は逃げているみたいで、どうもシングルマザー家庭っぽいんですよね。
詳しい理由は明かされていないので想像ですけど、子育てが大変すぎて逃げちゃったんじゃないですかね……。
生まれた子どもに障害があるからって、子育てから逃げちゃう父親の話は、残念ながらよく聞きますからね。母親は逃げられないけど。
スティーブは、そんな母親にものすごく偉そうな口をきくのですが、そういうことわかっていてその態度なのだろうか?
もっとカーチャン大事にしろよ。
彼の将来の夢は兵士になって、人殺しや戦争がしたいらしいのですが、間違いなくカーチャンを泣かせるので、もっと安定した職業に就いてやんなさい。
さらにですね、悪童は彼らだけではありません。
友人のひとりアランには、学校一の暴れ者で、とうとう退学になったトニーという兄がいます。
しかも退学になっても反省せず、お酒を飲める年齢でもないのにパブに入り浸り、おとなにまとわりついて酒を奢らせるとか。
この地域、荒れすぎじゃない????
なんとなく小学生くらいをイメージしていたのですが、退学ってことは義務教育は卒業済み?
――と思ったのですが、気になって調べたところ、イギリスの学校では義務教育においても退学のシステムがあるとのこと。
また、イギリスの法定飲酒年齢は『ビール、シードル(リンゴ酒)などで食事を伴う場合は16歳、その他は18歳』らしいので、トニーは16歳未満である可能性が高いですね。
となると、主人公たちはもっと若いわけで……。
うーん、これ以上考えるのはよそう。
ちなみにダレンは、このトニーのことを「やたらと図体がでかく、意地が悪く、おまけに顔もまずい」と毒舌を飛ばしていて笑う。
息をするように貶すじゃん。
この学校、タバコを吸う上級生とかもいるし、治安が最悪すぎる。ここは神室町か何かか????
まさかこんな形で、自分が日本に生まれたことに感謝するとは思わなかったわ。児童書を読んで愛国心が芽生えとる。
当時の真面目で潔癖な小学生だった私じゃ、ドン引きして読み進められなかったかもしれない。
さて、そんな治安が終わってるダレンたちの地域へ、新たに風紀を乱す存在が現れました。
それが、〈シルク・ド・フリーク〉です。
先生も親も「こんなものは非人道的だ」と否定し、「絶対に行かないように」と釘を刺します。
しかし、行くなと言われれば言われるほど、行きたくなるのが悪童というもの。
いわく、「大人がいやがるものは、たいがいおもしろい」
たしかに、子どもからすれば、そういう不謹慎なものほど面白いのかもしれません。
彼らはどうにかサーカスのチケットを手に入れようとするのですが、チケットは1枚15ポンドします。
1ポンドが約180円らしいので、1枚あたり約2700円ですね。
「高すぎる」と文句タラタラな彼らですが、舐めんなよ。
そんな値段じゃ宝塚のB席(3,500円)すら買えないからな。
SS席は12,500円だぞ。
大相撲のタマリ席なんか、1人20,000円だ。
フリークショーという危険な出し物であることを考えるに、妥当な値段じゃないかな(相場がどのくらいなのか、調べてもわかりませんでした。情報求ム……)。
警察に捕まるリスク込みだろうし、観にくる人間は厳選したいだろうからね。
しかし、お子様にはなかなか手が出ないお値段であることも確か。
ここでスティーブが、母親のへそくりから内緒でお金を借りると提案します。
本人いわく「後でちゃんと返す」らしいのですが、ほんとぉ?
実は盗むつもりなのに、友だちの罪悪感を煽りたくなくて嘘ついてない? 大丈夫??
どうあれ、お金を手に入れた彼らは、どうにかチケットを手に入れることができました。
ただし、チラシ1枚につき、チケットは2枚しか売ってくれません。どんなにお金を払うと主張しても、サーカスの団員はガンとして頷きませんでした。
ダレンたちが持っているチラシは1枚。
チケットは2枚。
そして、彼らは4人です。
一番お金を払い、チケットを買いにいったスティーブは確定として、残りの1枚の争奪ゲームが始まります。
ここで、主人公はなにやら不思議な力に後押しされ、チケットを手に入れることができたのですが、この力はいったい何だったのでしょう?
本人は運命力と解釈しているのですが、本当にそんなフワッとした理由なのかなぁ。
のちのち明らかになるのかもしれませんね。
さて、まんまと大人たちを出しぬき、サーカスにやってきたダレンとスティーブ。
彼らを劇場へ案内したのは、〈シルク・ド・フリーク〉のオーナー、ミスター・トール。
彼はなぜか、名乗りもしないダレンの名前を、初対面で呼んだのです。
彼いわく、「わたしはいろいろ、知っているぞ。君たちの名前も、家の場所も、親と仲が悪いこともな」とのことですが、この能力はなんだったのでしょうね?
なんとなく、サイコメトリーやら読心術やらの能力者なのかな? と予想しているのですが。
というか、シルク・ド・フリークのメンバーには謎が多いのですが、2巻以降も出てくるのかな。
こんなにキャラが濃い連中ばかりなのだから、まさか使い捨てキャラじゃないとは思うのですが。
ちなみに、『ダレン・シャン』には映画版もあるようで、ミスター・トールの役者はなんとあの渡辺謙氏です。
なのに評判はイマイチのようで、中でも一番面白かったレビューは
「ハリー・ポッターをリオのカーニバルだとすると、これは近所の盆踊りな感じ」
というコメントでした。逆に気になる。
さて、そんなシルク・ド・フリークですが、ミスター・トールいわく、
「今晩お見せするフリークは、すべて正真正銘の本物」
だそうで、のちに出てくる重要人物のことを考えるに、全員人外であると予想します。
最初に出てきたのは狼人間のウルフマン。
獰猛なので、サーカスの人間が催眠をかけて操っています。
そのため、大きな音を立てない限りはおとなしく安全なのですが……はい、フラグですね。
案の定、どこからか大きな音が響きわたり、ウルフマンは覚醒。
なんと女性客のひとりに飛びかかり、手を噛みちぎってしまいます。
わ、私の中にいる小学生の私がショックでぶっ倒れた――!!
しかしご安心ください。
ミスター・トールと、青いフードの助手が協力し、女性の傷になにやらキラキラ光るピンクの粉を振りかけ、二本の針とオレンジの糸で、手首を縫いあわせました。
このシーン、『血のふき出す手首』やら『針が肉をつらぬきながら手首をぐるりと回る』やら、想像力が強すぎるお子さまには刺激が強すぎるかも……。
ハイ、当時の私のことです。
「二、三日もすれば、傷あとも残りません。元通りになります」
とのことですが、この力って何なのでしょう?
ミスター・トールと青いフードの助手、どっちの能力?
縫ったのは助手だから助手かな、とも思うのですが、ピンクの粉をかけたのはミスター・トールだし、女性になにやら耳うちしておとなしくさせたのも彼ですし、やはりトールの能力なのかな。
トールといえば北欧神話のトールを連想するのですが、調べたらミスター・トールの綴りはTallらしいので、普通にノッポなだけかな(北欧神話のトールはThorらしい)。
でも、いろんなことを言いあてたり、魔法のような力を使ったり、まるで神さまみたいですよね。
青いフードの助手のほうも、謎が多いですね。
背たけは主人公たちとたいして変わらないのに、腕も足も太く、筋骨隆々。
オマケに、しゃべりかけても口を開かない。
ちなみに、手を噛みちぎられた女性の夫が激怒して、「医者と警察に行ってもらう!」とカンカンにつめ寄るのですが(それはそう)、ミスター・トールは、
「ではお聞きしますが、そういうあなたは奥さまが襲われていたあいだ、どこにいらしたんですか
な?」
と、そっけない態度。
奥さんのすぐ隣にいたはずの夫でしたが、ウルフマンが暴れだした時、なぜすぐ助けに入らなかったのかと(それもそう)。
これ以上やぶを突くと、女房を放って自分だけスタコラサッサと逃げだしたことがバレてしまいますからね。
すごすごと引きさがる旦那なのでした。あとでめちゃくちゃ奥さんから責められそう。
ここでミスター・トールが、あらためて全員に忠告します。
どなたさまの安全も、保障しかねます。
いやー、めちゃくちゃ印象的なセリフですね。
この〈シルク・ド・フリーク〉を端的に表した言葉です。
キャッチコピーにできそう。
印象的すぎて、このセリフだけ
_人人人人人人_
> 突然の死 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄
みたいに囲おうかと迷いましたが、やめました(バラしたら意味ないけど)。
さて、サーカスではいろんな役者が登場するのですが、中でもとくに主人公たちの目を引いたのが、ミスター・クレプスリーと、相棒の猛毒グモ マダム・オクタでした。
ミスター・クレプスリーを見た瞬間、親友のスティーブは息をのんで、顔を青ざめさせるんですよね。
なにやら彼の正体に気づいてしまった様子。
白状すると、私はこのとき、
「ひょっとして、ミスター・クレプスリーはスティーブの生き別れた父親? 自分を捨てた最低の父親が、こんなフリークショーに出ていたからショックを受けた?」
とか予想していたのですが、全然違いました。
とんだポンコツ探偵だよ。
サーカスが終わったあと、ダレンを先に返し、スティーブはミスター・クレプスリーに対面します(心配だったダレンはこっそり覗いていた)。
そこで判明する真実。
ラーテン・クレプスリーを名乗る彼の本名は、バー・ホーストン。
正真正銘の吸血鬼だったのです。
なんでスティーブがそのことに気づいたかというと、彼が生粋のオカルトマニアで、パリで一九〇三年にかかれた絵に彼がいたことを思い出したからなんですね(なんか元ネタになる吸血鬼がいるのかと思って調べたけど、特にそういうのはなさそう)。
なんでも、婚約寸前までいった彼女にバンパイアであることがバレて、フラれてしまったとか。それ黒歴史じゃない??
他人の恥ずかしい過去を堂々と暴くんじゃない、スティーブよ。
そんでもって、スティーブはミスター・クレプスリーに「俺もバンパイアにしてくれ」と頼みます。
イカれポンチか????
しかも、ここでスティーブが、
「おやじはいないよ。会ったこともない。おふくろだって、おれを愛しちゃくれない。おれがなにをしようが、どうでもいいんだ。いなくなっても、気がつくかどうか」
とか言うんですが、バカ野郎!!!!
アンタみたいな難しい子どもを見捨てず、どうにかしようと必死で腕のいいカウンセラーを見つけだしてくるような母親が、アンタのこと愛してないわけないじゃないのさ。
優しいだけが愛情じゃないんだよ。
アンタのためを思うから、厳しいことも言うんだよ。
もっとカーチャンの愛に気づいたれよ……。
と、この時点で親に感情移入しまくっているわたくし。
小学生のころに読んでいたら、また違った感想だったのでしょうが、この『ダレン・シャン』は全体的におとなに感情移入してしまう。
だって子どもたちがどいつもこいつも悪ガキすぎて、見ててハラハラしちゃうんですもの。
ミスター・クレプスリーも悪いやつじゃないっぽくて、周りに恵まれてない(と本人は思いこんでる)スティーブに同情したか、しぶしぶ彼をバンパイアにしようと血を味見するのですが……。
スティーブ、まさかの血液マズすぎ問題。
え、そんなことある????
クレプスリーはスティーブに「きさまは悪魔だ!」と突きつけます。
なにやら、「悪意だらけの血」「人殺しの本能が宿っている」そうで。
これって比喩?
スティーブが昔からヤベー悪ガキだから?
将来は兵士になって人を殺したいって言うくらい殺人願望があるから?
それとも……本当に悪魔の血を引いている?
いなくなった父親となにか関係があるのだろうか。
比喩じゃなく、スティーブ父が実は悪魔で、スティーブはその血を引いているとか??
だとしたら、スティーブの殺人願望も個人の特性ではなく、悪魔としての本能だったりする?
吸血鬼とかいる世界観だから、ありえなくもないですよね。
拒絶されたスティーブは「なんでだよお」と泣きだしますが、クレプスリーはガンとして頷きません。
バンパイアは命を粗末にしないので、殺人願望のある人間とは相性が悪いみたいですね。
最終的にスティーブは、
「絶対に復讐してやる。いつかおまえをさがし出して、この手で息の根を止めてやる!」
と捨てゼリフを吐いて立ち去ったのでした。そういうとこだぞ。
まあ、バンパイアにしてくれなきゃ将来バンパイアハンターになってやるって脅すようなやつだからなぁ。
この世界のバンパイアが命を大切にする誇り高い種族なら、人殺し願望のある彼は、バンパイアハンターのほうが向いているのかもしれん。
「子どもをバンパイアなんかにしたら、バンパイア将軍に殺される」って発言もあるくらいだし、この世界のバンパイアってそういう自治というか、横の繋がりもありそうですよね。
となると、人間視点では脅威から守ってくれているバンパイアハンターって、その実は罪もない種族を偏見から迫害する殺人団体ってことじゃあ……?
中世の魔女狩りか何か?
いやまあ、ミスター・クレプスリーが話の通じる相手ってだけで、他の吸血鬼にはヤベーやつがいっぱいいる可能性も全然ありますけども。
さて。
一連のやり取りをこっそり覗いていた主人公ダレン、めちゃくちゃドン引きます。
あいつバンパイアになりたいってマジかよ〜
今後どう接すりゃいいんだよ〜
ってな具合です。
しかし、そんなダレンはダレンで、あのマダム・オクタが欲しくてほしくてたまりませんでした。
そこでダレン、考えます。
そうだ!
サーカスは夜だったんだから、朝早く忍びこんだら、みんな寝てるんじゃないか?
その隙に盗んだれ!
いやなんでやねん。
もうこのあたりから、読者の私は冷や汗ダラダラです。
なにせ私は三歳ごろには共感性羞恥に目覚め、テレビの中でバイキンマンが悪いことをしようものなら、画面の前から逃げだしていたという筋金入り。
もう嫌な予感がとまりません。
しかし、私の心配をよそに、無鉄砲な死に急ぎヤロウのダレンはサーカスに忍びこみ、まんまとマダム・オクタを盗みだすのでした。
これがホラー小説なら後で殺されるやつだぞオイ。
スティーブのことドン引きする資格はねぇ!
人外になりたいやつも、人外から窃盗するやつも、どっちも同じくらいヤベーやつだよ!!
そんな自分のことは棚あげヤロウのダレンなので、バンパイア願望のあるスティーブが怖くて、学校でも避けてしまいます。
そしたら週末になってスティーブが家まで押しかけ、「なんで俺のこと避けるんだよ」と迫られてしまいました。「あの時、バー・ホーストンとのやり取りを盗み聞きしてただろ」と。
「お前とミスター・クレプスリーとの間で何が起こったかなんて知らない」とシラを切るダレンでしたが、スティーブは悪知恵が働くので、「なんでバー・ホーストンがミスター・クレプスリーだって知ってるわけ?」と指摘します。最初からカマかけてたんですねぇ。
ダレンはシラを切りたいなら「バー・ホーストン? 誰それ?」と返すべきだった。
まんまと白状させられたダレン、一悶着ありながらも仲直りします。
まあ、「なんでも話せるのはお前だけなのに、そのお前が友だちでなくなったら、どうしたらいいんだよお」なんて泣かれちゃあね。
そして同時に、マダム・オクタのこともゲロっちゃうのでした。
さすがにスティーブからも「何やってんだボケ(意訳)」みたいなことを言われますが、ダレンは、
「悪いやつからぬすむんだから、考えようによっちゃあいいことさ」
と悪びれないようす。
口から生まれた屁理屈王子かキサマ????
バンパイアだからって悪者だって決めつけるんじゃないわい。
スティーブも最終的には「大したヤロウだぜ」と感心する始末。
……やれやれだぜ。
たとえ無謀でも度胸のあるやつが一目置かれちまうんだ、ヤンキー漫画ってやつぁ(※注・ダレン・シャンは児童書です)
そうして2人はフルートを使い、マダム・オクタを操って遊びます。
大きな音さえ出さなければ、マダムは安全なパートナーのはずでした。
……そう、あとはわかりますね。
ダレンの妹がノックなしに押しかけてきて、毒グモに悲鳴をあげるというハプニングが起きてしまうのです。
そして、催眠のとけたマダムは、案の定スティーブをブスリとやりました。
なんとか死ぬのは避けられましたが、スティーブはピクリとも動きません。
補足すると、マダムはひと刺し目で相手を痺れさせ、ふた刺し目で息の根をとめる二撃決殺の持ち主です。BLEACHにいたよね、そんなキャラ。
ここから主人公、保身に走りまくります。
まず妹にマダムのことを口止めし(妹は賢いので、この時点でサーカスから毒グモを持ってきたこととかいろいろ察している)、現実逃避のため、なぜか15分くらい様子を見ようとします。バカヤロウ。
当たり前ですが、現実では毒をもった生き物に刺されたり噛まれたりした場合、とにかく時間との勝負なので、迅速に救急車を呼んでくださいね。
また、傷口はよく洗い流し、刺された箇所より心臓側を布などで軽くしばり(静動脈が軽く浮き出る程度)、傷口を心臓より低い位置にして、安静にしないとダメですよ。
どうしても自分で歩かせなければならない場合は、慌てずゆっくり歩いて移動するようにしてくださいね。
また、血清はどんな生き物に刺されたかによって違うので、その生き物の特徴を覚えておいて、医師に伝えることが重要です。
なのにダレンのアホは自己保身の悪たれの与太郎なので、医者にも両親にもマダムのことを内緒にします。アホンダラが〰〰〰〰!!!!
まあね、わかりますよ。
あまりに事が大きくなりすぎて、自分が原因だと言い出せなくなってしまうのは。
なにも知らない親が「お前のせいじゃない」って慰めてくれるから、余計に言いだしづらいよな。
でもね、ここでスティーブの母が、
「あんた、あの子になにしたの? あたしのぼうやに、けがさせた? あたしのスティーブ、殺したの」
と金切り声でダレンにつめ寄って、赤ん坊のようにわんわん泣きだすものだから、もう読んでてつらすぎる。
気がついたらつられ泣きでティッシュひと箱なくなってた。
おいスティーブ!
こんな母親の姿を見て、それでもまだ「自分は愛されてない」って言うんか!?
甘ったれてんじゃないよ!!
今すぐ起きてカーチャンを抱きしめろ!!!!
オメーは誰より母に愛されとる!!!!!!
もうね、『親の心子知らず』ってことわざを擬人化したらスティーブの姿になるって世間じゃ言われてますからね。
子知らずにもほどがあるっちゅー話ですよ。
よくもまあ「バンパイアになりたい」なんて言えたもんだわバカヤロウ。
ホント、この時の姿を録画してスティーブに見せておくべきだった。
いや、それどころじゃなかったし、ひょっとしたら死んじゃうかもしれなかったわけだから、そんな鬼畜なことできないけどさ。
せめてダレンが責任もって、「お前こんなに母親に愛されてたぞ」って伝えておけば、あんな決別にはならなかったろうに……。
とにかく、話を続けますね。
病院では世界中の権威から毒の情報を集めたりしたのですが、特定には至りませんでした。
しかも最悪なことに、マダム・オクタは突然現れたミスター・クレプスリーに回収されてしまいます。
刻一刻とタイムリミットが迫る中、ダレンが下した結論は、ミスター・クレプスリーと交渉して、血清をわけてもらうということでした。
もうさあ、度胸の使いどころを間違ってンのよ。
なんで身内とかには保身に走りまくるのに、毒グモを盗んだり、吸血鬼と一対一の交渉をしたりとかにはムダに行動力あるのよ。
まあ、それこそ悪童って感じでリアルだけどさあ。
なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!
そして交渉の結果、ダレンはミスター・クレプスリーの手下になる代わりに、血清を手に入れることに成功しました。
ようは半バンパイアになったのです。
ヒトと吸血鬼の混血は『ダンピール』って呼ぶらしいけど、その状態を人工的に作りだした感じなのかな?
とはいえダレンは「チャンスがあれば裏切るし、仕返しする」と宣言するわけですが、そもそも他人のものを盗んでおいてどの口が言ってんじゃ。
ミスター・クレプスリーがモノ好きで、ダレンの行動を「見どころがある」と好意的に受けとめてくれなきゃ、今ごろ殺されていてもおかしくないんだぞ。
っていうか、ホラーならそうなってる。
ちなみに、バンパイアになるためお互いの傷口をあわせるだとか、その傷口を舐めてふさぐとか、血清もクレプスリーが一度口に含んでから傷口に注入するとか、医療従事者が悲鳴をあげる描写が続きます。
私も思わず楳図かずお画風で「ギャ――ッ」って叫んじゃいました。
よい子は絶対にマネしてはいけませんよ!
そんでもって、血清によってスティーブは助かるわけですが、ダレンは一度クレプスリーから逃げだすわけですよ。
でも、彼は「どうせお前は戻ってくることになる」って不吉な予言を残して、ダレンを見逃すのです。
でまあ、最初のうちはよかったんですよね。
半バンパイアってことは強化人間みたいなもんで、授業でもサッカーでも大活躍!
ダレンも調子に乗っちゃうわけです。
でも、吸血衝動というのは、そう簡単に抑えられるものじゃないのでした……。
ようやく自分が化け物になったと自覚したダレンは、家族や友だちを傷つける前にと、観念してミスター・クレプスリーの元に戻る決心をします。
で、どうするかというと……。
一度、死ぬんです。人間界での居場所を消すために。
断っておくと、クレプスリーも嫌がらせで提案したわけではありません。
勝手にいなくなると親は諦めきれず、捜索願やら何やらで厄介なことになります。
だから、死んだと思わせて、ダレンのことを完全に諦めてもらわなくてはならないのですが……。
ここから先の描写、大人になってから読むとしんどすぎる。
みんな、泣くんですよ。
お母さんは嘘だ、そんなことないって泣くし、お父さんは「麻痺してるだけだ。スティーブみたいに、すぐよくなる。とにかく救急車を呼んできてくれ」ってお母さんをその場から離して、ひとりになったところで、もう息子が絶対に助からないことを確信して、大声で泣くんですよ。
妹のアニーは、棺に横たわるダレンを見て、「冗談でしょ、起きてよお兄ちゃん、起きてったらぁ」ってすがりつくし、お父さんは物言わぬ息子に向かって、
「おまえには、ああしてやろうと思ってた、大学はあそこかな、こんな仕事がいいんじゃないか」
なんて長いこと話しかけて、泣くんですよ。
母とふたりで泣きながら抱きあって、
「まだアニーがいるじゃないか、また子どもを作ってもいい、養子という手もある、ダレンは即死だから痛みは感じなかったはずだ、これからもダレンは心の中で生きている――」
なんて慰めあうんですよ。
ここ、自分が死んですぐ次の話をしてるの本当にしんどいしやめてくれって思うんですけど、そうやってムリやりにでも前向きに考えなければ、生きていけないくらい苦しいんだろうな。しんどいよな、自分より先に子どもが、若くして事故で亡くなるなんて。
でも私が母親だったら、「息子に代わりなんかいない! すぐ次の話なんかするな」って激怒するかも。冷静に見つめてみれば、夫だって傷ついてることがわかるだろうにね。そんな余裕はないだろうからね。
ああ……
しんどいなぁ……。
そんでもって、ダレンは内心で
なんて言ってるのですが、本当だよ。
ミスター・クレプスリーに、「こんな目に遭わせるなんて極悪非道もいいところだ」とか言ってるけど、元はといえばお前がマダム・オクタを盗んだのが悪いんだからな。
物語冒頭から、アレンが〈シルク・ド・フリーク〉のチラシを持ってきたことや、サーカスを見にいったことを「あの時ああしなければ……」みたいなこと言ってたけど、そもそも窃盗さえしなけりゃよかった話じゃろがい。
いやでも、ダレンはふしぎな力によってサーカスにこれたわけだし、ひょっとしてこうなるように仕向けるなにかがあったのかな。
クモを盗んだのも、その力に導かれた結果だった?
この不可思議な運命力についても、後々わかってくるのかな。
それにしても、怪しいサーカスに行った悪ガキが、サーカスから毒グモを盗んだことで、サーカス団員だったバンパイアに殺される――
とかもう、事情を知らない第三者から見たら完全にホラーなんよ。
ダレン視点だからファンタジー児童書になってるけど、やってることホラー小説の流れなんよ。
もうホント、親御さんが不憫で仕方ない……。
そして、ダレンは夜のものになります。
誰にも気づかれず、ひっそりと――そのはずでした。
ただ一人を除いて。
そう、ダレンの親友スティーブだけは、気がついていました。
友の異変を、その真相を。
でもですね、スティーブこそはバンパイアになりたかったわけです。
そんな彼からしたら、ダレンは自分の欲しかったものを横からかすめ取った裏切り者なわけです。
てなわけで、スティーブはダレンを責めまくります。
どんなにダレンが「お前を助けるために、仕方なくバンパイアになったんだ」と言っても、「そんなお涙ちょうだいの作り話はごめんだ」と信じようとしません。
それどころか、自分が「悪魔だ」とクレプスリーから拒絶されたのも、ダレンが嘘を吹きこんだせいだと決めつけているようす。
ちったあ冷静になれ。
スティーブは家族の愛というものを信じていないからこそ、そうだとしか考えられないんでしょうが、普通に考えて家族からめちゃくちゃに愛されていたダレンが、バンパイアになりたいからって家族を捨てるわけないでしょうが。
自分がそうだからって、他人も同じ考えだと思うなよ。
スティーブも、死にかけた時にどれだけ母親が取り乱して、悲しみに暮れたか知っていれば、バンパイアになりたいだなんて悲観的なことを考えなくて済んだろうに。
ひょっとしたら、バンパイア化したダレンに対して、嫉妬の炎を燃やさずに済んだかもしれない。
しかし、それらはすべて、ありえたかもしれないifの話。
スティーブはダレンを恨み、
「てめえらをどこまでも追いかけて、息の根を止めてやる」と宣言します。
これ、この先の巻で二人が対峙することになるんだろうなぁ……やだなあ、しんどいなぁ。
しかもおそらく、ダレンは成長が遅くなっているから、再会した時にはダレンが子どもなのに向こうが青年か、もしくはオッサンになっていて、嫌でも生きる世界が違ってしまったことを直視せざるを得ないんだろうなぁ。二次創作のし甲斐がありそうな設定ですね。
いつか誤解は解けるのだろうか。
もしも私が予想したとおり、スティーブの父親が本当に『悪魔』という種族で、クレプスリーに悪魔呼ばわりされたのが嘘ではなく血筋であると判明したら、「ダレンが嘘を吹きこんだわけじゃなかったのか」と気づくかな?
それには、スティーブが『悪魔』と呼ばれた理由が、彼の性根ではなく、遺伝的なものであることが前提なのですが……。
これでフツーに「殺人願望があるヤベーやつだから」だったら救いようがないぞ……。
そんなわけで、主人公・ダレンは家族とも友人とも、なんなら人間社会とも決別して、闇の世界で生きていくのでした。
……いやさ、家族が泣き叫んでいてしんどいし、本人も自分のしたことを後悔してるから、あんまり言ったら可哀想だけどさ。
悪さしなけりゃよかった話じゃない????
最初から最後まで自業自得すぎて、主人公よりご両親にばかり感情移入しちゃったよ。
とはいえ、悪ガキだったダレンが、どう成長していくかも見どころのひとつでしょうから、今後が楽しみですね。
友を思う心だとか、大切なものを守る勇気とかはすでに兼ね備えていると思うので、そこは損なわないでほしい。
これから待ち受けているであろう冒険を通して、いい男に成長することを願ってます。
それでは、今回はこのへんで。