見出し画像

哲学を採り入れた魅力発掘・観光振興(その1)フッサールの現象学


哲学は、そのものの魅力を発掘し観光商品にまで昇華させるに有効な考え方をいくつか生み出しています。
なかでも次の3つが重要かなと考えています。
1)エドモンド・フッサールの「相互主観性」
2)ヘーゲルの「止揚(アウフヘーベン)」
3)キルケゴールの「関係性」

それぞれの考え方の説明をしながら、少し実例を出してみたいと思います。
いずれも大学時代に一哲学徒であった私なりの解釈ですから、詳細を正しく知られたい方は哲学の専門家などの解釈のほうを確認することをおすすめします。

1)エドモンド・フッサールの「相互主観性」
フッサールは現象学の開祖ですが、その広範な考えの中で、観光振興のための魅力発掘という観点で活用するといいのは「相互主観性」という概念です。
これは、目の前の世界を見るにあたって、「客観的」とは「ありえない」とする考えです。

「客観とは何か?」と考えるとそこには、必ず「複数の主観の共通点」であることに行きつく。そうなると、もし「世界」があったとしたら、それは、「客観的」ではなくて、その世界を構成している構成員の主観の集まりであるから、それは、「相互主観性」と言うべきであろろうと考えるのです。これは、実は、「世界」があるとしても、その「世界」とは、その構成メンバーによって変わるので、「絶対的な世界とは存在しない」という考えにまで行きつくのです。つまり、「客観的」という概念の否定につながりますから、これを社会の中で行うと、「常識」「一般的」などの概念の否定、それらの概念にとらわれない「自由な発想」を持てることにまでつながります。さらにここで、方法論として、デカルトの考えた「方法的懐疑」を採り入れれば、「常識、一般的、客観的という概念で現れているものこそ、疑ってかかる(ことで新しい価値を見つける)」ということになりますから、魅力発掘をする上で強力なエンジンになるはずです。
そして、この姿勢は、以下2つの価値創出方法に枝分かれして発展させられます。
■1 ひとつの地域資源にあらたな価値を付随させる
■2 観光客として大きくくくるのではなく、観光客ごとに「価値」を見つけ出すようになる。

観光資源を考えるにあたって、「価値とは、人によって変わる」ということにつながり、さらに、「そのものの絶対的な価値など存在しない」ということになるのです。そして、それだからこそ、何に注目すべきかと言えば、それは、個々人の主観。つまり意識の流れだったり、ものの捉え方だったりするのです。ここにぐいっと力を込めると、これまで注目されなかった価値が新たに発見できるようになります。この魅力発掘法はけっこうな労力を使うため、これを完遂するには、並々ならぬ情熱が必要かとは思います。
そして、この基本的なスタンスを持っているか持っていないかがその情熱の多寡を決め、ひいては、地域資源のブラッシュアップする力の優劣の源泉になるのだと思います。

さて、以下は実際に「まちあるき」の中に、この考えを反映して好評を得た2つの工夫をお伝えします。
※いずれも「恵比須・化け猫・河童伝説 佐賀のお城下ナイトウォークツアー」の中のコンテンツについてです。

ここから先は

1,085字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?