小説初心者、文フリに挑む【当日編】「ファミマ、行くしかねぇ......」
2023年11月11日。
文学フリマ東京37開幕である。
前回のあらすじ
大学で4回振られるという大失恋(?)を成し遂げたばりとんくりそふぉん。大学の先輩方や教員の導きもあり、文フリにて小説初心者ながら恋愛私小説の出品を決意。しかし、未経験故に「文章ですべて表現しなければならない」ことに悪戦苦闘。結果、文フリ開催2日前にて滑り込みの入稿となってしまったが、果たして、間に合うのか…?
こちらの記事の続きですので、未読の方はぜひ!
執筆を2日前にやっとの思いで終わらせ、
間に合わせてくれる印刷会社を片っ端から探した。
文フリの会場がオープンする12時に間に合うためには届いた冊子を持った上で、10時に自宅を出なければならない。
電話で10時に間に合うように頼み込んだところ、
「ヤマト運輸の指定便で10時にお届けできるよう手配しますが、配送状況により遅れが生じる可能性がございますので予めご了承ください。」とのことだった。
極限までギリギリになってしまった依頼を引き受けてくれた時点で感謝しかないのだが、叶うならイベント開始と共にブースの仲間と商品を並べたい。
↑参加ブース・ろくまる社のお品書き
(遅くとも皆前日までには手元に商品がある状態だったらしいので余計焦った。)
文フリ当日 10:00
____10時になった瞬間、インターホンが鳴った。
「〇〇様のご自宅でお間違いないでしょうか。」
お間違いないです...!
勢い余ってヤマト運輸の配達員に意味不明な返答をしてしまったが、この時ばかりは恥よりも安堵が勝った。
間に合ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ダンボールを開けるとB6の冊子が注文した25部に加えて、予備分の5冊が梱包されていた。
死に物狂いで文字を紡いだ時間が、冊子という形を成して目の前にある。
その感動が、ただただ心地いい。
印刷を引き受けてくださった、株式会社セントグラフィック様
運んでくれたヤマト運輸とその配達員様。
本当にありがとう。
11:50
会場到着。
前回の東京開催時には客として訪れたが、今回は売る側としてこの地に降り立った。
なんだか感慨深い……
ディズニー開園前ですか???
前回の東京36の際も会場入口前でかなり並ばされたため、人混みに呑まれる覚悟はできていた。
しかし、今回に至っては会場前面だけでは並びきれず、会場後方の搬入口の方まで列を成す事態に。
これだけの行列は久しぶりに見た。
ディズニーなどのテーマパークなら見慣れた光景だが、周辺が輸送経路で埋め尽くされるこの景色に映り込む人の量ではない。
12:00
列と誘導員に従うこと数分、ようやく入場できた。
ろくまる社のブースがある第二展示場の二階中央にたどり着き、先入りの設営メンバーや自分以外にも実は結構いた、当日持ち込みのメンバーと合流。
予備分を除いた冊子25冊を店番の子たちに託し、ろくまる社 設営完了である。
雑誌、写真集、フリーペーパー、ポストカード。
そこにブース唯一の小説である自分の冊子も含めると、かなり豊富な品揃えだ。
大学のコース皆で作り上げた空間が、ここにはある。
皆の制作物が、実際に商品として立ち並んでいる様は壮観だった。
これからが本番なのに、このブースの景色を見ただけで満足してしまった。
13:00
ブースの店番はシフト制だった。
自分のシフトは14:00 〜 15:00だったため、それまでに可能な限りブースを回りきりたい。
事前に回りたいブースをピックアップしてこなかったので、
目標は「全ブース制覇」である。
会場は「第一展示場」と「第二展示場」に分かれているが、自分たちのブースがあった第二の方から回り始めた。
______前回の反省を踏まえて決めていたことがある。
それは
ひとつのブースにかける時間を極力減らし、本当に欲しいと思ったものだけを買うということ。
東京36の際にはブースとブースの間で身動きがとれなくなるほどの混雑さにより、時間内にすべてのブースを回りきることが叶わなかった。
そのため、今回こそは道草を食わずに、緩急をつけて回ろうと。
しかし、そんな曖昧な決意など、目の前の魅力あふれる冊子たちが余裕で消し去っていく。
結局、財布の中身は万札だけになった。
入場前に財布の中には二万円ほど(千円札十枚・一万円札一枚・小銭少々)があったが、流石に足りるだろうと思っていたのが甘かった。
まさか第二展示場を回りきった時点で一万円弱を使ってしまうとは……
(どう考えても使う上限金額を決めるべきだった。)
ここで問題になるのは、一万円札で冊子を買えるわけがないということ。
お金の管理を現金かつほぼアナログで行われている文フリ会場において、
万札を出す客など、迷惑極まりないだろう。
となれば両替、もしくはどこかで一万円札を使用して崩す他なかったが、
流通センター前のコンビニとタリーズコーヒーは案の定混んでいた。
そこで思いついたのが、流通センター駅の券売機(精算機)で一万円札を使うということ。
しかし、無慈悲にも券売機の画面が告げる。
「一万円札は使用不可です」
スマホで周辺マップを確認するも、流通団地とも言えようこの地には卸業の拠点施設ばかりが立ち並ぶ。
それでも諦めずにマップを拡大したところ、二件のコンビニを見つけることができた。
「ミニストップ 京浜トラックターミナル店」
「ローソン平和島倉庫店」
安心できたのも束の間で、この2つの店舗は完全に施設内にある店舗だったらしく、その入口には「関係者以外立ち入り禁止」と書かれていた。
今度は逆にマップを縮小してみると、大きな坂と橋を渡った先にあるファミマが見つかった。
かなり遠い。
シフトの時間もかなり迫っていたため、走らなければ間に合わないだろう。
しかし、シフトに入る前の今を逃せば、一万円を崩せる機会はもうないだろう。
第一展示場を回らずして今回の文フリを終わらせてしまっていいのか。
ファミマ、行くしかねぇ……
会場内ではなく、外でトラックと並走するという意味不明な状況。
こんな文フリ参加者、未だかつていただろうか。
まだ見ぬ冊子たちのためだと言い聞かせて、コートと冊子が入ったカバンを抱えながらひたすら走った。
あった……!
息を切らしながらも急いで入店し、あまり幅をとらないであろうグミを購入。
ようやく一万円札を崩すことができた。
当然、帰りも走らなければならないが。
(これから文フリに訪れる皆さんは、予算を決めるか、余分に千円札・硬貨を持ち込む等して計画的に楽しみましょう……笑)
14:00
なんとか14時手前で第二展示場に到着できたので、シフトの時間に間に合うことができた。
直前のシフトの子からの引き継ぎを終え、ブースの席につく。
自分の役割は在庫管理で、売れた冊子の数と在庫を照らし合わせて管理するといったところか。
この時点で自分の小説は一冊だけ売れていた。
直前すぎる入稿ゆえに黒字になることは確定でなかったため、
一冊だけ売れれば勝ちだと思っていた。
それが叶った。
自分が創作したものが、ついにお金となって返ってきたのだ。
自分の創作活動が一歩前進したような気がする。
興奮冷めやらぬうちにも、シフトの時間は続いていく。
そんな中、大学のゼミの教員と大学のサークルの先輩が駆けつけてくれた。
「帰って、時間ができたら読みますね。」
「どんな形であれ、創作を続けてるのは偉いよ。」
完全に身内だが、それでもお金をだして買ってくれるのは嬉しい。
小説が出来上がらなかったら、この会話はできなかったのだと考えると、心の底から間に合わせてよかったと思う。
この調子でいけば、もっとたくさん自分の小説が売れる瞬間に立ち会えるかもしれない。
その後、自分の冊子が売れることはなかった。
ほとんどの時間を、人が横に流れていくのを眺めて過ごすことになった。
たまにろくまる社のブースで足を止めてくれるお客さんもいたが、自分の冊子に手にとってもらうどころか、目を止めてくれる人さえ、1人もいなかった。
視線すらもらえないのか。
そのことが
悔しくて悔しくて仕方がなかった。
しかし、視線すらもらえないのであれば、「それ自分の恋愛私小説なんですよ!」と声をかけることすらできない。
同じく売り子をしていた子は「なんだか釣りをしているみたいな時間だった!」
と言っていたが、自分はそんなにあっさり受け入れることができなかった。
良くも悪くも「売る側」の景色を味わうことができた1時間を過ごしてシフトを終えることになった。
16:00
全ブース 制覇!
シフトを終えた後、ひたすら第一展示場を回り続け、終了1時間前にして全て回り切ることができた。
第二展示場での反省を活かし、節約の意識を持って回ったが、そもそものブース数が第一展示場の方が多いため、結果として鞄から本が溢れそうになるまで買い込んでしまった。
第一展示場でひとつ、面白い出会いがあった。
大失恋した彼氏への想いを書き連ね続けた「失恋日記」なるものを販売している出展者の女性がいたのだ。
自分の失恋を創作として扱っている人が同じ会場にいる!
勝手に親近感のようなものを覚え、思わず話しかけてしまった。
「自分も大学での失恋をテーマに私小説を書いて販売してるんですよ!」
今思い返せば、嬉々として語る内容では全くないかもしれない。
「え!どこのブースで売ってますか?」
まさか興味を持ってくれるとは。
ブースの名前と番号を伝えると、真剣な顔つきで紙にメモをとってくれた。
創作者同士のコミュニティはこうして築かれるのだなぁと、しみじみ感じた。
余力があれば創作用の名刺でも作るべきだったと後悔。
17:00
ろくまる社のブースに一度帰ったり、外で購入した冊子を読むなどしていると、あっという間に17時になった。
図書館の閉館を思わせるかのようなクラシック音楽が流れ続けていた会場内が、突然文フリスタッフのアナウンスに切り替わる。
今回の来場者数の速報などが発表された後、
「これにて文学フリマ東京37は終了となります!」
声高らかに閉幕の宣言がされた。
次の瞬間、あたりは拍手と歓声に包まれた。
出店者も来場者も関係なしに、その場に居た物が等しく「文学フリマ」というイベントの完遂を祝福する。
皆で作り上げたんだ。
当たり前のことを改めて実感し、胸が心地のよい高揚感に包まれた。
↑結局、来場者数は13,000人に迫るほどだったらしい。
〜18:00
ここで終わらないのが文フリである。
閉幕宣言後、文フリの係員から呼びかけがあった。
「お手隙の方は、係員に従ってテーブルと椅子を片付けてくれると非常に助かります!」
出店者は当然、自分たちのブースの後片付けをするわけだが、持参した冊子やPOPなどをしまい込んで、使用したテーブルを畳むところまでが暗黙の了解として行われる。
しかし、その後は?
大量に撤収用のスタッフが居るわけではなく、ヘルメットを被った流通センターの係員と文フリの係員数名のみが残されている。
出店者たちがそのまま帰ってしまえば、2000以上あるブースに使われていたテーブルと椅子を撤収するという地獄を、運営側に背負わせてしまうことになるのだ。
それはあまりにも忍びない。
隣のブースで出店していた我々の大学の教員が「私達も手伝いましょう!」と号令をかけたこともあり、ろくまる社は総出で後片付けに回った。
残った他のブースの方々も含め、数十名ほどで撤収に励んだ。
あれだけ人と冊子とがひしめき合っていた場所があっという間に片付いていく。
シンプルな空間が元の姿を取り戻すにつれ、会場の熱気が薄れていくのを少しだけ寂しく思った。
吟味と#
帰宅後、今回購入した冊子をすべて並べてみた。
計20冊……
お金の減りが早いわけだ。
だが、後悔は微塵もない。
↑自分の小説から引用できる日が来ようとは……笑
ちなみに文フリには「#文学フリマで買った本」というハッシュタグで
自分が文フリで購入した冊子を紹介する文化もある。
冊子の中にXのアカウントIDが掲載されていた場合、下記のように紐づけて作者に知らせることも可能だ。
@多すぎだろ(笑)
ともあれ、終了後もSNS上でイベントの余韻を楽しむことができるのも文フリの醍醐味の一つだ。
冊子を購入した方はぜひとも投稿を!
(自分も引用かつ感想をいただけたので、嬉しかったです!!)
気づいたら年が明けてしまいました、、
今年こそ様々な恋愛や創作のコンテンツを更新頻度高めでお届けるよう執筆していきたいと考えておりますので、2024年も何卒よろしくお願いいたします🙇🙇🙇
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