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読み切り恋愛短編集【れれこい】 4.フォール 775

読み切り恋愛短編集【れれこい】


第4話 フォール

 私への関心が恋ではないことなど、最初から判り切っていたのに。


 好きになったのは私の勝手。
まさか恋におちるとは思ってもいなかった。
今頃、あの人はこの「誤算」を悔いているかもしれない。
 後悔。


 共通点なんかまるで無いのに、不思議と気になる存在だった。
調子の良いときには応援したくなる。
落ち込んでいるときには
「そんなに自分を責めないで」
と慰めたくなる。
「私はいつでも味方です」
とつい伝えたくなる。
いつまでも味方でいたいと、本当に思っていた筈なのに。
 fall。

 私に対して恋心を抱く可能性が1%でもあるのなら、そんなことまで話さなかったと思う。
「話ならいくらでも聴くよ」
「ハグくらいならするよ」
調子に乗ってしまった。
 私が。

 私への関心が恋ではないことなど、最初から判り切っていたのに。


 私の望みは、いつまでも味方として側で見守り続けることではなかったか。
その立ち位置に末永く居続けることではなかったか。
 あの人は何も悪くない。


 メールがLINEになり、電話で話すようになった。
声を聞くことができて嬉しい。
でも、私からはかけない。
側に誰がいるか判らないから。
「今はちょっと」
と切られるのが悲しいから。
 消沈。


 私からの質問には電話で返事が返ってくるような気がする。
LINEだと文字に残ってしまうから?
声だと残らないから?
残っていないと、後からシラを切れるから?
 疑心暗鬼。


 私への関心が恋ではないことなど、最初から判り切っていたのに。


 時系列に沿ってLINEの文字を読み直してみる。
「絶対にまた会いましょう」
「今度また会いましょうね」
「いつか会いましょうね」
「いつか会えたらいいですね」
この変遷は無意識なの?
それともやっぱり……
 本音?


 微熱が続いている。
喉の奥に痒みを感じたから、アレルギー反応なんだと思う。
今頃、何がアレルゲンなんだろう?
喉に腫れや痛みはない。
解熱剤を服むほどでも寝込むほどでもない。
頭がぼうっとして体がふわふわする。
「(恋という)熱病に浮かされるってこんな状態?」
と、会えない私は寂しく思う。
 今日も36.9℃。


 私の時間の殆どが、物想いに費やされていく。
「考えるのをやめよう」
と、また考えてしまう。
あの人には仕事があるし、想い人がいるし、想われ人がいる。
私のことを考えるには、時間が足りない。
足りていたとしても想ってもらえないのは辛いから、足りなくて良かったと思う。
 24時間。


 私への関心が恋ではないことなど、最初から判り切っていたのに。


 側に居続けることができるなら、都合のいい女になりたいと思う。
会うことが叶うなら、都合のいいときに呼び出してほしいと思う。
私に「自分」が「無い」のではなくて、私の本心がそう望んでいるのだから。
 願望。


 LINEが来ると嬉しい。
電話がかかってくると嬉しい。
重荷にはなりたくないと思うあまり、すっかり受け身になっている私。
自分でも
「らしくない」
と思う。
解っている。
でも手放したくないから、守りに入っている。
 執着。


 「会えなくなってしまったとしても、仕方がないのかなぁ?」
と時々思う。
本当にそれでいいの?
「繋がりを失ってしまうよりは、まだいいのかなぁ?」
と時々思う。
本当に会えなくてもいいの?
 sometimes。


 私への関心が恋ではないことなど、最初から判り切っていたのに。


 私からは言えないから(何故?)
「会おう」
と言ってほしい。
「会いたい」
なら更にいいのに。
自分から言えばいいのに。
 一日千秋。


 私はただ……
会いたい……
 切望。

 私への関心が恋ではないことなど、最初から判り切っていたのに。


 そう諦めがつくくらいなら、初めから恋に落ちてなんかいない。
 確信。



れれ子(仮)



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※創作です

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