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📚📖35【定食屋「雑」】手作りコロッケ食べた〜っい‼︎ 844

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定食屋「雑」

原田ひ香(1970年神奈川県生まれ、NHK創作ラジオドラマ大賞•すばる文学賞受賞、著書に『三千円の使い方』など)

双葉社 300頁
2024/3/23初版(2021/1小説推理に初出)

コロッケなんか大嫌いだ‼︎
絶対に家で作ってなんかやるものか、ものか、ものか、ものか……(エコー後フェイドアウト)


みさえは、定食屋「雑」の女主人。
通称「ぞうさん」。
沙也加は、離婚届を置いて家を出て行った夫が「雑」で飲食するのが楽しみと言っていたことから、夫の意中の女性がいると思い込み「雑」でアルバイトを始める。
想像したような女性はおらず、夫が離婚したい理由もわからないまま別居生活は続く。


ぞうさんは、「雑」を手伝う女性のことを『カワイコちゃん』と呼ぶ。
以前、店で働いていた親戚の女性との間でトラブルがあって以来「うまくいかなかったときや、女性がいなくなったときに悲しい想いをするから」と名前で呼ばない。


食事中にアルコールを飲まない沙也加の味付けは、薄味で健康的。
「雑」の料理の大半は(普通の)醤油と出来合いのめんつゆ(三倍希釈用)•すき焼きのたれで味付けをする。
煮魚なんかすき焼きのたれで煮るだけ。
簡単だ。
当初は馴染めなかった「雑」の味付けに理解を示し、良い調味料を購入し自宅で作ったすき焼きのたれをぞうさんに使ってもらう。


ぞうさんが作る「雑」の料理は、雑なようでいてツボを押さえている。
スパゲティサラダの隠し味にアレとアレを入れたり、自家製の糠漬けを仕込んだり。


年齢も、育った環境も、置かれている状況も、全く異なるぞうさんと沙也加。
ぞうさんは沙也加を認め、名前で呼ぶようになる。
料理や常連客を通して徐々に距離を縮めて行く。
ぞうさんの心は柔らかく綻び、沙也加は離婚に踏み出す。


新型コロナウイルスの影響は、「雑」やぞうさんや沙也加や常連客の人生を変えてしまう。
漸く一段落した今、「雑」にもぞうさんにも沙也加にも新しい日々が訪れようとしている。


料理名が付いた章立て。
ぞうさんの来し方、沙也加や夫の育ちや実家、常連客の高津さんの家庭状況などが少しずつ顕になる。


もうね、お料理が美味しそうなの。
すんごいご馳走は出てこない。
味付けは前出の通り、すき焼きのたれドボドボで絶句するほど甘いらしいけどね。


から揚げは衣に一工夫しておく。
この衣がカリカリガリガリの元。
トンカツは衣をつけてスタンバイさせておくし、ハムカツは冷凍食品を使ってる。
でもから揚げだけは、揚げる直前に特製衣を付ける。
くぅ〜、ガリガリしたから揚げを食べてみたい。


普段は業務スーパーで買ってきた冷凍コロッケを、ラードを入れた揚げ油で揚げる。
でもね、月に1回だけのぞうさん手作りコロッケの日は、じゃがいもを茹でる•ひき肉と玉ねぎを炒めるところから始める。


料理をする人なら解るでしょ?
コロッケの工程の多さと面倒くささ。
茹でる→刻む→炒める→剥く→潰す→混ぜる→冷ます→形作る→小麦粉を付ける→卵を付ける→パン粉を付ける→揚げる→揚げ油の処理……
そしてこれだけの手間の割りにご馳走感のないこと‼︎
報われなさ過ぎる……
ああ、ぞうさんの手作りコロッケを食べてみたいものよのぅ。


とっても読みやすくてお腹が空く。
希望が持てる読後感に、心がホコホコっと温かくなる。
コロッケみたいにね。



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