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「学びに向かう力」の育成と評価 #2学びに向かう力の概念検討。クラックストンを手がかりに。
はじめに。本稿の目的と結論。
平成29年に改訂された「新学習指導要領」では,育成を目指す資質・能力の1つとして,「学びに向かう力・人間性」が提示された。
ところが,この点について,新学習指導要領は具体的な何かを指し示してくれているわけではない。新学習指導要領が指し示す目標は,「主体的な態度を養う」としか書いていないが,「態度」=「学びに向かう力」とは,あまりにも大雑把じゃないだろうか。
この点について,CiNiiで何か実践例はないだろうかと物色していると,おもしろそうな論文を見つけた。
岩野清美,2018,「〈学びに向かう力〉の育成と評価に関する研究――中学校社会科公民的分野「私たちと政治」単元を事例として」『和歌山大学教育学部共同研究事業成果報告書(2018)』: 48-51.
上記論文では,「学びに向かう力」の理論的枠組みとして,ガイ・クラックストンのラーニングパワー理論を取り上げていた。
本稿では,ガイ・クラックストンのラーニングパワー理論を簡単に紹介し,来年度からできる簡単な取り組みを考えてみたので,それを紹介していく。
結論としては,
・クラックストンのラーニングパワー理論が「学びに向かう力」を評価する上で理論的な枠組みとなること。
・これを育成し評価するためには,日々の授業で生徒の活動を評価するだけではなく,振り返りシートやシラバス的なものを活用し,生徒自身が自分の学習を見通し,振り返ることができる方法が必要だということ。
それでは,具体的な中身に入っていく。
岩野(2018)の成果
ガイ・クラックストンはイングランドの「学び方の学習」に影響を与えてきた人物である。彼によれば、学びに向かう力は4つの性質として整理されている。
岩野(2018)は、上記のクラックストンのラーニングパワーの性質のうち、機知に富むこと省察性の要素を評価基準として、授業後の生徒の感想を評価している。
その結果、「学びに向かう力」があると評価された生徒は、単元の目標到達度が高く、学びに向かう力がないと評価された生徒は、単元の目標到達度が低かった。このことから、単元の目標達成と「学びに向かう力」に強い関係があることが指摘されている。つまり、学びに向かう力を育成することが、学習の到達度に繋がっていくことが改めて確認されたのだ。
一見当たり前のように思えるが、改めてラーニングパワー理論の評価基準を検討してみると、意外と大事なポイントがあると思う。
改めて評価基準だが、岩野が作成した「学びに向かう力」の評価指標という表(2018)を見てみよう。
私はこの評価基準のうち、「機知に富むこと」では、1問いをつくる、3想像するといった力をぜひ子供たちに育んでもらいたい。これが学びの入り口だと思うからだ。
また「省察性」では、7抽出という能力も重要だと思う。この時間で何を学んだのか、ここ4時間で何を学んだのか。すくなくともどこが重要だと思ったのかを、生徒自身が自分なりにつかんでいるのと、そうでないのとでは8メタ学習の点で大きく差が出ると思う。
「学びに向かう力」の育成は、そのまま生徒の「わかった」、「なるほど」、「じゃあこれってどうなの?」という声につながるだろう。
岩野(2018)から参考になるもの
それでは、岩野(2018)から何を学び、何を導入していけばいいのか。
私なりに岩野の研究のおもしろポイントをまとめてみた。
① 「学びに向かう力」という抽象的な概念を、クラックストンの理論を援用することで、実際の授業の評価基準として使えることを示したこと。
② 「学びに向かう力」を評価するには、振り返りシートのようなものが有効であること。
この2つである。
中教審答申についてまとめた前回の記事でも書いたが、ICTの活用案としてスタディログ(学習履歴)などがあげられている。自分の学習を見通し、振り返るという行為は、必須となるだろうし、それを教師側は評価していかなければならない。
ただし、岩野はクラックストンのラーニングパワー理論で示された4つの性質のうち、2つしか評価基準として採用していない。
なぜ「機知に富むこと」と「省察性」を評価基準として選んだのかの説明がほしい所だが、それは私の方で今一度調べてみる必要がある。
しかし、いずれにせよ、クラックストンのラーニングパワー理論を援用した振り返りシートの活用は興味深い。生徒の実態に合わせ、援用する評価基準をカリキュラムマネジメントとうまく組み合わせながら、使っていくことは面白い。
簡単ではあるが、さっそく振り返りシートを作成してみた。
下の部分は適当に考えただけだが、共感していただける方はぜひ授業で使うだけではなく、改善案などをコメントしてほしい。