マガジンのカバー画像

せいかつ

46
生活の中からこんにちは。
運営しているクリエイター

記事一覧

顔を覚えたの

顔を覚えたの

朝起きてチラリと外を見ればアパートの前の道路が濡れてる感じ。太陽は光の色。
「雨が降ったの?」と先に起きてる夫に尋ねたら「うーん、降ってないと思うけどぉー」と。
いつも天気の晴れや雨、温度湿度風の強さや気圧の高低まで、お天気博士のように聞いてもいないのに告げてくる夫のくせに珍しくあやふや。

夫が出勤しそしてさっき。
スマホを手に取ると防災通知が届いてた様子。
見てみれば。ほーらほら、早朝に豪雨予

もっとみる
メモ

メモ

『僕が殺したひとことを
君はあっさり生き返らせ
僕にはなんの意味もない
意味なんてあるわけない
僕に意味が
あるわけない
価値はあるけどね』

スマホのメモを繰っていたらこんな事が書いてあった。全く覚えてないけれどたった一年前のもの。

これはいったい何?
私が残したの?
最後がいいねぇ。
スパンッとして。

橙色

橙色

昨日の出勤途中。歩く道沿いの古い家の庭に柿の木があって、こぼれ落ちそうな沢山の橙色が視界に入る。柿、いいな、分けてくれないかな私に全く見ず知らずの私に、くれるわけないだろが、ならぽろんとこっちに一個くらい落っこちてこないかな道に落ちたの拾って貰うぶんには犯罪にはならんよね柿泥棒にはならんよねと、心の中でしょーもない事をブツブツブツブツ言いながら歩く。

だって柿って甘くって美味しいからさぁ、
好き

もっとみる
蝙蝠か燕か

蝙蝠か燕か

読了。
そもそも読書から年々遠ざかり、一年に一冊もまともに読めなかった私が久し振りに読み終える事が出来たのがこれだった。

読み始めて直ぐに胸が苦しくせつないような気持ちになったのはこの人が昨年亡くなったばかりだからか、想像よりはるかに愚かではるかに純粋ではるかに、それしか術の無かった生き方に刺されたのか。
ただの破天荒ではない。不幸自慢や悪さのアピールではない。
そうとしか命を使えなかっただろう

もっとみる
おはぎ。

おはぎ。

ご存知の通り(知らん)YUKIが大好きな私(齢53歳)ですが、このYUKIもまぁー本当にめちゃくちゃ可愛いのなんのって。
何年前ですかねこれは、何度このミュージックビデオを見た事か。きゃわゆいのだとても。

この中でこのポーズでこう歌うんですこの人は。

「交わした約束 危うくて
未来は誰も解らないなら
火照った指で 探りあてて
体に印を 刻もうよ」

ここ。ここに私は惚れて惚れて。
くーっと

もっとみる
さよならの向う側

さよならの向う側

夕食後、ポカンと口を開けながらYouTubeで山口百恵の夜ヒットラストステージを見た。
素晴らしいね、ちょっと涙出たし。
周りの歌い手達も全員プロ。本物。歌手。
和田アキ子とか高田みづえとか西城秀樹とかアンルイスとか桜田淳子とかその他諸々プロしかいない。
そんな人達がメドレーで山口百恵のヒット曲を順番に歌う。百恵の肩を抱きながら、百恵の頭を包み込みながら、百恵も泣き、プロの仲間達も泣く。俺も泣く。

もっとみる
窓から見えるもの

窓から見えるもの

夕飯後の食器を洗い終えると
茶の間から聞こえる高速の手拍子
何事かと尋ねると
「十二拍子の練習」
なんのために?
「フラメンコが十二拍子だから」

ふーん、面白いね君は本当に

世界は沈黙と喧騒でぐるぐる回り
アタシは一層くるくる働く
クリスマスやお正月

その部屋が暖かいという理由だけで
生きていてもいいのだ
それのみ

ところで
明かりの正体に理由や罪はなく
ただ綺麗だねと動く心
それのみ

踏めない

踏めない

落ち葉が踏めない。
子供の頃や若い頃、なんならほんの数年前までは寧ろ好んでカサカサジャクジャクあの音や感触を味わいたくて踏みに行っていたが。

今年になって踏めなくなった。
それは「落ち葉が可哀想」という優しく乙女な少女の心持ちを含んでそうで大きく違い。

「蜘蛛を殺したら悪い事が起きそう」と同じ類いの「落ち葉を踏んだら悪い事が起きそう」な心持ち。踏まれたら痛いと訴える生き物のように見えるのだ。職

もっとみる
世界

世界

河童色のシャツをゆるっと身につけジーパンは右膝と右尻に小さな穴。数年前に古着屋で買った重宝しまくりぬくぬくボロボロカーディガンを羽織り頭は寝癖、の私がキッチンのシンクに寄りかかりハッピーターンを齧っていると夫が震える声で
「カッコいい。。。」

私はカッコいい。
夫もカッコいい。
お互いだけがそう思う世界。
狭い世界。
狭くて、もしかしたら、広いそれ。

かわいいね。

かわいいね。

今日の夕飯のおかずとお味噌汁、同じ具でもいい?と聞いたら
いいよと頷き
「かわいいねー」とクスッと笑った夫。

私五十二歳、夫五十四歳。

私は可愛い。
夫も可愛い。

ボール

ボール

髪を数日置きにチョキチョキ切っている。
セルフカットと言うとお洒落だけども、普通のハサミとすきバサミを交互に持ち替えデカいゴミ箱の前に頭を突き出し適当に切ってるだけの事。
最近は夫に切ってもらうよりも先に、待ちきれずに自分でチョキチョキ。ああ簡単。
しかし、だけれども、今回のはいつにも増して適当だし切り過ぎだし、明日の朝には完全にボール。
鏡の中には弾むボールのようなヘアーがぽわんと映っている事で

もっとみる
ムーンライト

ムーンライト

今日は夫が歯医者で歯を一本抜いて来た。
抜歯。
帰宅後段々と痛みがやって来てそれはまるで刃物か何かでザクザク歯茎を刺されてるような痛みだと言う。
痛み止めを飲んだけれど効かず、その後はただ黙って静かに耐える人が4時間ソファに居る図。これが私なら痛い痛いと転げ回っての大騒ぎだ、痛みに弱過ぎるので。

けれど夫は違う。
本当にただただ静かに顔を歪め目をつむり、じっと居る。
いつもそう。
何が起きても愚

もっとみる
身体使い

身体使い

夫の平熱がここ2年くらい健康的な36.5度を保っている。聞けば高校の頃からずっといつだって35.5度くらいだったと言う。寒い身体。
ここ2年、それは夫が前職を辞めハローワークの職業訓練でパソコンを学びそして今の職についてからの事。今の職、基本は身体を使う自然相手。
なるほど、健康にもなるだろう。とてもいい事。私も嬉しい。

けれど、2年?ここ2年で健康に?
私と結婚して一緒に暮らし始めたのはそれよ

もっとみる
夏の、はじまりのような終わりのような

夏の、はじまりのような終わりのような

夫が死なないで帰って来る事を願う日々だ。
大袈裟でなく真面目なはなし。
部屋の神棚に居る神様に毎日手を合わせている。

夫の仕事は高校の用務(殆どが屋外の修繕や草刈り)と、その後は副業で農園の草刈り。
暑い、暑いのだ。とにかく死ぬほど暑いのだ。死ぬほどという事は死ぬかもしれないのだ。

夕方になっても熱風が吹くこの季節、炎天下。身体中の水分が持っていかれその先には脱水が待ち受ける。これだけ毎日バッ

もっとみる