橙色
昨日の出勤途中。歩く道沿いの古い家の庭に柿の木があって、こぼれ落ちそうな沢山の橙色が視界に入る。柿、いいな、分けてくれないかな私に全く見ず知らずの私に、くれるわけないだろが、ならぽろんとこっちに一個くらい落っこちてこないかな道に落ちたの拾って貰うぶんには犯罪にはならんよね柿泥棒にはならんよねと、心の中でしょーもない事をブツブツブツブツ言いながら歩く。
だって柿って甘くって美味しいからさぁ、
好きなんだよねぇ、子供の頃には全然好きでもなかったけど。寧ろ苦手。歳をとると嫌いが好きになるのねー、おおかたの事がそうよねーとまだブツブツ心の中で。
と、前方から橙色の丸いものを握って歩いてくる老人男性。あれは、あれはもしや、柿ではないか?拾ったのか?取ったのか?やってやったのか?すごいタイミング。
と思ったら、橙色はタオルだった丸めた。しっかりと握りしめ。正確にリズムを刻む呼吸音。足取りは力強く。キャップを被りサングラス。長めの白髪を後ろでキュッと束ね。つまり、健康な老人の朝のウォーキングだった。
ごめんなさい間違えちゃって、私の心が柿を欲するあまり、あの完熟したトロトロの柿を欲するあまり、朝の出勤時にブツブツと人を柿泥棒呼ばわりしました。
大丈夫、今度は蜜柑の季節。
何が大丈夫かは知らんけど、次は蜜柑の季節。
ああ、次も橙なんだ。
太陽の色。