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詩集

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2024年5月の記事一覧

蛍の詩

蛍の詩

飛びなれて

忘れたくないものも

なくなってしまってる

草で切れた中指に

露を垂らそうとしても

風に拭われて

オオカミの遠吠えだけが

この谷に響いて

青く光るこの花の名前も

忘れてしまったみたい

覚えていても

心地良さなんてなくて

あれば狂ってしまうのに

今の今まで

そうしてまで

見たかったもの

この谷の守り人も

絶えてしまったというのに

美しく残ったまま

変わ

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月読の詩

月読の詩

薄いからだに

光を廻らして

きみのいのちの在り処を説く

自然が生まれたようにしていれば

きっとぼくらは死ぬのだろう

だからいつまでも

自然を殺さねばならないのだろう

摂理というのは

近い未来じゃなくて

遠くの宇宙をいつもみている

それをぼくらに知らせずに

されるがままに死んでいく

それかぼくらが気づけていないのか

なすがままに殺していく

まったくそれは

簡潔な気持ち

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花葬乙女

花葬乙女

海辺の会食には

白いワンピースで

リボンをほどいて

生贄になれないのが

苦しいの

数奇な運命に

指を刺されながら

ギラギラ光る

無数の単眼を

とめどなく浴びて

死んでしまいたい

支配されてもいい

血しぶきを丁寧に

舐めあげてゆく

うっとりするような

殺気に慄いたら

どうかここへ

おいでください

身体の奥が

あつくなるような

わたしはあなたを

心待ちにしてい

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痛いの痛いの

痛いの痛いの

痛いの痛いの

とんでいけ

絡まった針金を

ぐるぐるって

メリーゴーランドにしたら

逆夢のはじまり

こんどの夜は

指を切って

愉しかったら

裂いてあげよう

面白いの見たさに

見失って

ピエロになったのは

どっち?

深い淵に

はまってしまって

もがいてるのは

どっち?

痛いの痛いの

とんでいけ

見えないフリしてる

あいつに

トンデイケ

茶埜子尋子

航海薄明

航海薄明

青と赤が

はじめて繋がる時間に

ひんやりしたおでこを

きみの頬にくっつけてみる

この朝とおなじように

少しだけかなしい

この気持ちはきみのもの?

ちょっぴりも動かないで

心だけを繋いで

紫になる

艶めいた肌に

痕をつけたら

終わってしまうんだ

薄暗いままで

陽の光も見えないままで

だから声はきこえない

きみとぼくの

この世界への代償

だから世界は美しい

きみの

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ユラユラの詩

ユラユラの詩

ちぎれた糸を

雲の切れ間に

紡いでゆくような

そんな生命になりたい

ユラユラ

とっくに解けている腕に

繋がれたくて

星を眺めた

淡くひかる

小さな星は

きみの喘ぎを孕んで

ユラユラ

何も奪うことはなかったのに

大きな力に

解き放たれて

震えている

ふたつの星は

雨の温もりをふくんで

ぼくらこれから

こんなことに

慣れていかなくちゃいけないのかな

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夜窓の詩

夜窓の詩

元いた場所に

帰ろう

虚宿行きの列車に乗ろう

窓を開けて

ぼくに身を任せて

瞳をとじれば

満天の星々が迎えにきているよ

ようやく君に見せることができる

銀河へつづく夜を

車掌さんも

お客さんも

いないんだ

ぼくときみだけ

風と星だけ

それだけで宇宙はできる

ポッペンを割ったような

弾ける音がぼくらを包みながら

遠い遠い夜へ

元いた場所に帰ろう

あたりまえだった

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朝霧の詩

朝霧の詩

本当にきみは

きれいな色でできている

髪も 瞳も

なにもかも

だから今もこうやって

ぼくに夢を見させつづけているんだろう

ひんやりした世界で

やさしく囲って

夢のような

現実のなかで

夢をみている

残酷なきみ

美しいきみ

ぼくの好きなきみ

茶埜子尋子

玉響の詩

玉響の詩

殺しにくる

見境のない

仕草で

見とれている

直刃のような

眼差し

重ねられた羽衣

屍は山河ですすいで

手折られた精霊

流れ星のような美しさで

首元で揺れる

銀色の勾玉

しんと森へ響いて

青く光る

蟲らの声よ

茶埜子尋子

トビウオの詩

トビウオの詩

目の前を

飛び交ってゆくのは

気高く有りつづけた

先人の火の玉

パシャン

パシャン

幾千の意志が

海にはじけて

空に散る

手を振って

サヨナラ告げた日

手を握って

愛を伝えた日

手を震わせて

まだ見ぬ未来へ手紙を書いた日

重ねた日々の端くれを

繋ぎ合わせて

日ノ本の旗になる

歪んだ空へ

虹色の鱗を散りばめて

太陽は昇るよ

新しい国に

茶埜子尋子