【現代アート④】マルセル・デュシャンを知らずして、現代アートは語れない
しがないアートファンの端くれである僕が、
現代アートの神様を語っていいものなのだろうか。
そのレベルの超大物アーティスト マルセル・デュシャンを紹介する。
デュシャンを語るなんて恐れ多くてガクぶるだけど、
読者の方が少しでも現代アートを身近に楽しめるように、
簡単に解説していこうと思う。
デュシャンといえば、現代アートを理解する上で、
最も重要なキーマンと言っても過言ではない。
僕の好きな現代アーティストの山口真人さんも、
デュシャンについて、このように語っていた。
デュシャンって言うと、神ですね。ひとことで言うと。
あの山口さんでさえ、語彙力が小6男子になってしまうほど、
デュシャンというのは、ものすごい人だということ。
では、一体デュシャンの何がすごいのか?
❶アート自体の価値を問う「無芸術」
デュシャンのスタイルを簡潔に言うなれば、
「無芸術」
だと思う。
それまでのアートといえば、肖像画や風景画など、
どれも美しいもので、
その美しさや緻密さなどに芸術としての価値があった。
つまり、これまでの芸術は視覚的に楽しむものだった。
でも、デュシャンは視覚的に楽しむ従来のアートを否定して、
「コンセプト」や「観念」「概念」など、
目に見えないものそれ自体をアートとして取り上げた、ってこと。
できる限り、アートとしての価値を「無」に近づけていった。
そんなことに生涯をかけてストイックに向き合ったのが、
神様と呼ばれる所以なのかもしれない。
こうしたコンセプチュアルアート的な考え方は、
その後の現代アートシーンへと引き継がれるんだけど、
詳しくは、こちらの「【現代アート入門②】時系列でまとめる現代アートの流れ」で、
復習してもらえると大変嬉しい。
どうでもいいけど最近、自分の書いた記事を読んでもらうことに、
至高の喜びを感じるようになった。(過去にエッセイも書いてるから読んでね♪)
ちなみに、デュシャンの掲げた「無芸術」は、
ダダイズムが掲げていた「反芸術」とは少しニュアンスが違うと思うので注意してほしい。
❷『泉』で有名なレディメイド
ここで僕の淡い恋の妄想を覗いてほしい。
彼女と初めての美術館デート。
手を繋いでいるのに、ドキドキとワクワクで手汗がもうやばい。
そんな状態でアートを見に行ったらこれが出てきて、
2人とも神妙な面持ちでこの便器を眺める羽目に…。
そしたら彼女が、
「…これ、素敵だね…、うん、曲線的なフォルムが美しい」
なんて言ってきたら、もはやカオスでしかない。
つまり何が言いたいかというと、
こんなものを出されても多くの人は反応に困ってしまうのが普通ということ。
昔の僕も戸惑った記憶がある。
「ふざけてるのかな?美術を諦めた人なのかな?」
なんて当時は本気で思ってたのも懐かしい笑
では、この『泉』というレディメイド作品は、
一体どういうことなのか?
●レディメイドの特徴
・大量生産された既製品の中から、
人々の無関心に最も近いものをオブジェとして展示した
・元々は既製品を意味する言葉だが、
マルセル・デュシャンは作品の「カテゴリー的な概念」として位置付けた
・非芸術的なものを「芸術」の領域に持ち込んだ(そのこと自体がすごい革命的)
デュシャンは、長い年月をかけて視覚的に限りなく無関心なものを探し続けた、
というある種の矛盾したことを探究し続けたアーティストなんじゃないかとも思う。
つまり、このデュシャンの『泉』というレディメイド作品を見た後に、
「便器のフォルムが美しいですな〜」とか美的判断を下す自体、
全くのナンセンスと言えるのかもしれない。
詳しくは、「【現代アート入門①】現代アートとは何か」でも書いているから、
まだの人はぜひ見てほしい。
❸他とつるまないストイックさ
デュシャンは、他の芸術的な派閥に帰属することなく、
自身の哲学を突き詰めていった偉大なアーティストでもある。
では、彼はどのような芸術哲学を持っていたのだろうか。
いかがデュシャンの本質をついた言葉である。
何かを選んだら、もうその瞬間にそこにあるいろいろな芸術的な断片やら、芸術的な本質やらに価値を認めている。
つまり、何らかのアートを制作する際に、
「これ綺麗だな」「これは見栄えが良くないな」「これは美しい」
このように何かを選別をしている時点で、そこには芸術的な価値が宿ってしまう。
そうなってくると、残念ながら「無芸術」にはなり得ない。
つまり、先ほどの『泉』というレディメイド作品は、
工業的に生産されたもの(すなわち無個性的なもの)であり、
究極的に人々が無関心なものだから、デュシャンの作品として成り立っているのである。
こうしてデュシャンはストイックに、とにかく無関心なものを探し続け、
一生かけても10個のレディメイド作品を発表した。
皆さんはもう彼の性格がなんとなく想像できてると思う。
自分の道を信じ、派閥と連まず、自身の芸術哲学を頑なに主張し続けた男。
そんな男の顔を最後に拝んでおこう。
最後に参考にした文献と動画のリンクを載せておく。
気になった方はこちらで詳しく勉強してみるのもいいかもしれない。
・【美術解説】マルセル・デュシャン「観念の芸術」
・デュシャンが現代アートの始祖と言われる理由
最後まで読んでくれて本当にありがとう。
猫背に苦しみながら、パソコンをガタガタ言わせた甲斐があるものです。
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