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ケアする人のケアも大切である。『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』東畑開人
無関心以上、カウンセリング未満
「雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら」東畑開人を読みました。
ケアを必要とする人との接し方や考え方をわかりやすくまとめた本です。
本書におけるケアとは、臨床心理士が治療として取り組むカウンセリングのような堅苦しさはあまり感じず、素人が実践できる、良い意味でラフなハウツーにあふれています。
こころのケアははじめるものではなくて、はじまってしまうものである。
つまり、自主的に、計画的に、よく考えて契約書にサインしてから開始するものではなく、受け身的に、期せずして、否が応でも巻き込まれてしまうものです。
よく晴れた休日に散歩に出かけたら、突然大雨が降ってくるようなものです。
そういうとき、僕らは当初の予定を変更して、とにもかくにも雨宿りをできる場所を探したり、傘を買ったりしなければいけなくなります。
同じように、ある日突然、身近な人の具合が悪くなる。
子どもが学校に行けなくなる。パートナーが夜眠れなくなる。老いた親が離婚すると言い出す。部下が会社に来なくなる。あるいは、友人から「もう死んでしまいたい」と連絡が来る。
突如として、暗雲が立ち込める。
どうしてそうなったのか、なにをすればいいのか、これからどうなるのか、全然わからない。
でも、雨が降っていて、彼らのこころがびしょ濡れになっていることだけはわかります。
そのとき、あなたは急遽予定を変更せざるをえません。とにもかくにも、なんらかのこころのケアをはじめなくちゃいけなくなる。
傍にいるのがあなただったからです。その人があなたの大事な人であったからです。
ある日突然、あなたは身近な人に巻き込まれて、雨の中を一緒に歩むことになってしまう。
こういうことがどんな人の身の上にも起こります。
人生には、こころのケアがはじまってしまうときがある。
ですから、突然の雨に降られている方々に向けて、あるいは長雨の中で日々を過ごしておられる方々のために、心理学の授業をしてみようと思います。
雨が降ったら、傘を差すように、こころのケアがはじまったら、心理学が役に立つと思うからです。
ケアする人のケアも大切である。
どう心と向き合うか。さながら、傷ついた心の取扱説明書ですが、特に印象に残ったのは、ケアする人のケアについて触れていること。
ケアは人を相手とした行為であり、ケアする側が消耗することもある。
持続的なケアのためには、ケアする人のケアも大切になってくる。
ケアする人は、ケアすることが当たり前に思われがちなので、新たな視点を得られた部分でした。
まずは自分をケアするところから。
一番身近な人間は、自分自身だと思います。
人に優しくするのも、体調が悪かったり余裕がないと難しいこともある。
ケアの精神を、まずは自分自身に向けてみるところからはじめていきたいと思いました。
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