日経文庫:OJTの実際(第2版)読了
ちょいと他所の街の図書館でリサイクル図書を頂いてきたので読むことにしました。
リサイクル図書は情報として古すぎて、使えないものもあるかもしれませんが、時代が変わっても使えるものもあります。OJTに関することというのは時代が変わっても使えるものではないかと考えたため、いただいて読むことにしたわけです。
OJT。On the Job Trainingの略称であるOJTは、コールセンターの経験をしたことがある人なら、一度は聴いたことがある単語です。
コールセンターでは最初に座学研修をやり、ロープレ研修を経て、最後に現場で着座して実際の電話を取るOJT研修をクリアすることで、実際の業務に入ります。実はサポセンやってると、ここまでで1~2割くらい脱落していくんですが、そこから新人扱いが終わる4ヶ月目までに、結構人が辞めていく感じですね。
そこからシステム運用の仕事に入って驚いたのが、研修が全く無かったことです。OJTはおろか、座学すらないまま業務に入りましたんで、まぁ衝撃は大きかったです。というより、コールセンターみたいにちゃんと研修やる仕事のが寧ろ珍しいか・・・。
そんな職業生活を歩んできたんで、改めてOJTについて語った本は読んでみるのも良いなと考えました。
📖僕は本当のOJTを知らない…
まず書籍を読んだ第一感想としては、私はまだ本当のOJTというのを知らないってことですね。
OJTは業務に就きながら鍛錬を積むということになるのですが、新卒社員教育やコールセンターみたいな研修方式がOJT的なモノと誤解していたわけです。コールセンターのOJTは先輩トレーナーの監視(苦笑)の元で実際の電話を取り、研修を卒業したら「あとは勝手にしろ」って感じになるのが基本ですね。と言ってもコールセンターの場合、SVやQT(クオリティコントローラー)がいたりするんで、合間合間で指導を受けることはあります。その意味では、コールセンターはOJTらしきことはやってるのです。
ただ、コールセンターの仕事ってゴールってものが無いので、本来の意味でOJTらしきことをやるのも難しい気がします。
そもそもコールセンターの業務は人月商売だから、キャリア開発なんて会社側から見ると馬鹿げてるし、適度に賃金奴隷として働いてくれる人員が確保できればそれでいいというのが、悲しい実態なんですけどね。
🏢OJTは日常業務の中で行うもの
この本を読んで自分は本当のOJTを知らないと実感したのは、OJT自体が特別なイベント(研修等)で行うものではなく、日常業務の中に組み込むものであるという点です。
これは義務化が施行された小学生向けのプログラミング教育と関係性は似ていますね。プログラミング教育もプログラミングという独立した科目を設けるのではなく、数学や理科などの授業に組み込んで行う前提になってます。
言うなれば、今まで私がOJTと思っていたのは「OJTという独立した研修項目」だと考えていたので、キチンとした意味でのOJTは体感してないんですよね。
尤も、そのOJTをするための上司にしたって、なんだかんだで短い期間で異動が発生したりして、酷い時には上司とのアイスブレイクすらできないまま対立だけ発生したりとか、そんなこともよくあります。
📚会社にいて学ぶことが少ない
これは個人的に置いた環境があまり良くなかったのかもしれませんが、会社にいて学ぶことが何もなかったんですよね・・・。
あくまで私個人が置いた(選んだ)会社が悪いのか、それとも良くあるパターンかはわかりませんが、会社というのは非常に学校社会と似ています。ベンチャーならいざ知らず、大企業型になればなるほど学校的な一面性を持つようになる。それも大学のようなものではなく、中学・高校の環境と非常に似てるのです。
また、この本が出された第2版は小泉・竹中改革の最中の2005年。この時代から企業のOJTは進化したのやら。うーん、どちらかというと退化したような気もします。
業務のアウトソーシング化が更に進み、雇用の階層(階級)化も進んで貧困率も増えた今、そもそもOJTなんてやってない職場も多いんじゃないかしら?
キャリア開発というのも「お前自身が勝手にしろ」なんて前提で出来上がってる気がしてなりません。業務の中には「正解がない」なんてことも少なくて、明らかに「正解が存在している」んです。存在する正解を黙々と繰り返すことが求められ、ある意味で生産性なんてモンも向上するはずがなく、進歩がない。正規雇用者すらキチンとOJTを受けているのか怪しいです。
前社なんか振り返ってみても、正規雇用者の業績評価は相対評価で、中学校の通知表と考え方が同じなのです。
環境が環境だったので、個人的にも会社から学ぶことが何もなく、学びの場は専らIT勉強会やカンファレンスに参加して獲得するしかなかったんですよね。
🏢思い切って人事異動をやめてはどうか…
ホワイトカラーあるあるな気がしますが、人事異動の頻度が多いんですよ。それは平社員どころか役職者さえそうで、なんだかんだで課に一番長くいるのが契約社員だったりもします。
こうなると上司が部下のことを何も知らず、部下も上司のことを知らないって感じで、OJTどころじゃないんじゃないかなという気がします。
一つの課に長くいて、自身の知見や最新の動向、部下の特性を鑑みながら適切な指導を行える上司が少ない気がするのです。非正規は生産性の低い仕事しかしませんが、前社では「正社員も契約社員も変わらないよ」とは正社員がよく言っていました。
逆を言うと「契約社員と同程度の生産性しかない正社員」って、それダメな会社の典型なんですけどね(そんな会社が日本にたくさん集まれば日本がダメになるのも当然です)。
やはり個人の能力開発や会社の生産性を高める上では、この本に書かれてるようなOJTの在り方は必須になるとは思うのですが、少なくとも前社や現社の客先での環境を見ると、そもそもOJTすらが碌に行われていない現実があり、ある意味で日本企業の時間は15年以上進んでないんじゃないかと思えてなりませんね。