日本の4つの産地の職人たちをつないで、素材と技術で使いたくなるマスクを作りました。
コロナ自粛でマスクの製造が各地で始まり、SNSに次々とされてくるマスク、マスク、マスク、、、でも僕が身に着けたいなと思うマスクが中々出てこない。でふと目にしたディオールのマスクのデザインを見て、やっぱりデザインをしたマスクにしたいと思いました。
そのうち手作りで取り急ぎ作るマスク達も沢山出てきました。
皆さんからすでに始めている、急場で縫製した手作りのマスクも沢山ある中で、あえて僕がマスクを作るならどんなマスクが良いのだろうかを暇になった3月ずっと考えてました。お安く貢献するっていうのも違うだろうし、マスクで稼ぐぞ!ってのも違う気がしてました。
各地で出会った職人達が僕の脳味噌を構成しているわけで作るなら彼らと続けていけるマスクにしたい、そして各地の技術の凄さも伝えられる技術や想いが結集したマスクにしたい。と考えました。そこで販売されている手作りマスクを調べてみて下記を設計の課題としました。
・鼻や頬に最小限に接触密着できること。
・着用時に口元や鼻先に空間があること。
・未使用時に口元部分が外と接触しない。
・汚れ防止紙を中に挟んでも落ちにくい。
・不安を感じる染技術や素材を使わない。
・着物などの日本の様装にも合うマスク。
世にあるマスクの殆どが布素材にも関わらず、手作り感が強くて良いデザインが少ないなと。もし買って頂く物として出すならプロの技術できっちり作りこんで出すべきという僕の思いがありました。ニューノーマル時代にギフトとしても贈ることができるマスク。この市場は機能系市場から魅力系市場へ広がると思うので今売るだけではなくてこれからも売っていけるマスク。だからこそ、ただ簡単な縫製をして出すのは僕の中ではやりたい企画ではない。時間がかかってもきちんと自分たちが納得した物を考えて出したい。
で、、、やっぱりデザイン会社が産むならデザインしたモノでないと!(笑)
色々な方々が手作りマスクを出すのを見ていて今こそデザイナーと職人の力を出し切るものにしようと。
4つの産地の職人たちと技術の交配
先ずは形をどうするかを考えていたのですが、ウチはプロダクトもデザインしているしデザイナーも知り合いも多いのですが、今回は「布」という2次元素材が顔へフィットする「立体形状」へ構築する企画にふさわしい人と構造は進めたほうが良いものができるのではないかなと思い、布を美しい建築のように設計してくれる人を探しました。バッグなどの雑貨のデザイナーではなく、人の身体を包む設計をできる方に。
1つめの産地は京都の元コムデギャルソンのパタンナーさん
そこで思い出したのは、以前京都で僕の開発ゼミに参加されていた元コムデギャルソンのパタンナーさん。この人なら面白いマスクになるはず!と相談したのが3月末。僕がお願いしたのはこれまでの手作りマスクを圧倒できる手作りマスク。先に見ていたディオールのマスクのような佇まいや他のブランドから発表されていた手作りマスクを調べて構造のアイデアを練りました。
自粛中なのでお会いするわけにも行かず、オンラインでディスカッションしながらパタンナーさんと意見交換して数日後ファーストサンプルが上がった時に見ておおお!と。
プリーツのように布を重ねた形状で
鼻から顎にかけて隙間なく密着するのですが、顔への接触面積を最小限にし、マスク内での口元や鼻先に空間ができる様に計算しているので付けたままでも話しやすい。
会話時に気になるマスクとの接点と女性が口紅などの移り防止で挟みたい紙が落ちないようにキチンと解決。
そして皆さんおっしゃる外した時の収納。ケースに入れなくても外したら口元が中に折り込まれ汚れがつかないようたためる形状に。
(これが裏側)
コンパクトさ。カッティングとパターンで生まれた造形にサンプルなのに完成度が高い凄技に驚きました。
2つ目の産地は静岡県駿河雛人形の職人さん
次にこの縫製関連全体をまとめるメインの製造工場をどこにするか。このプリーツ形状を見た時に既に決めていた「重ね」の部分を作ることを得意としている職人。
重ねの技術を用いた静岡の伝統工芸「駿河雛人形」の職人に協業のお願いすることに。普段から正絹や不織布の細かな縫製や扱いが得意だったことが決め手でした。
駿河雛人形の担い手、株式会社左京の望月さん。
3つ目の産地は石川県かほく市の製紐工場の職人さん
そして次は手に入り難かった「ゴム」そもそもサージカルマスクの殆どが中国製。日本ではマスク用の材料は手に入らない。ゴムを作っているところは無くて手作りマスクは市販の手芸ゴムを使っていたので耳が痛い問題が気になってました。
で、昨年石川県で信金さんからおもろい会社を紹介して頂いたかほく市の製紐の工場さんをこれまた思い出し、相談したところ丁度マスク用のゴム紐を生産し始めていたところだったので快諾頂きました。(この時期他産地にも同じゴム課題を抱えてた方にも繋いで行きました)
石川県のかほく市の株式会社二口製紐の二口社長ありがとうございました!
4つ目の産地は新潟県五泉市の絹素材織りの職人さんに
そして、今度は口が接触するデリケート部の素材。これもせっかくなら丁寧な作り込みをしている方にお願いしたいなと、生糸から紡いでいる産地にお願いすることに。新潟で生糸から美しい絹素材を織る絹の匠兄弟の工場さんに普段小分けはされないのですが、企画の趣旨を伝えたら上質な絹を少量づつ分けていただけることになりました!
新潟県五泉市の株式会社横正機業場の
横野恒明さん、弘征さんブラザーズのお二人ありがとうございました!
オンラインで産地を跨ぐモノづくりは大変(笑
で、コロナでスケジュールが飛んでしまったので起業以来1人でモノづくりをディレクションしておりました。この間ずっーとオンラインのみでの会議。僕はっしっていてもお互いはじめましてな状況でモノづくりをするのは思ってた以上に大変です(笑)連休中も技術的なことや縫製のことなど細かな打ち合わせを重ねておりました。
そして最終型の試作が上がってきまして。
最大の特徴は
このマスクの最大の特徴は
畳んだ時に口元部分が内包されるので直接汚れがつかない!ってこと。そして間に何かを挟んでも使用時にも未使用時も落ちません。一緒に収納できます。
ここまできたらもう名前もロゴも作り込もうと。マスクの名前は雛人形の職人が考えました。
雛人形の世界観から名前を考えました。
衣被(きぬかつぎ)という平安時代の顔を覆う布の名前からとった「きぬか」
そして4人の技術を繋いでできたマスクということでロゴも4産地が重なり合ってつながって生まれたことを感じるロゴマークに。
新潟、石川、京都、静岡の日本の次世代の技術者を結集して作った満足いく仕上がりになりました。
パッケージも実はこだわりが
こうなったらパッケージにも普通のPP袋に入れたくない!
左京さんの社内で贈答用に印刷していたのし紙をベースに職人さんでも
折りやすくて密閉できる形状に。
和紙を印刷して着物のように畳んで封入します(最終試作)
あとは価格。
(ここまで読んでくださってありがとうございます(笑)
手作りマスクは安いんですよね・・・・安い仕事をしてもらうのは嫌だ。
職人の工賃もキチンと取れる価格設定を悩みましたが、ぶっちゃけ日本で作れば縫製工賃だけでも500〜700円近くはかかります、で、他の材料の正絹、ゴム、パッケージ。直販するしか価格が合わない。(他の店舗に卸すなら掛け率が合わない…)ですので
試験販売が終わりまして、職人の工賃とマスクの仕様も見直して大人のマスクは2,500円、お子様マスクは2,000円で一般販売開始いたします。
着物のスタイルにも合わせて欲しいマスクです。
そう、僕が欲しかったマスク完成です(笑)
ちょっとしたギフトでお使い頂いているお客様もいらっしゃるようです。ありがとうございます。
材料全て日本の次世代の職人たちの手によるもの。コロナで暇になった時間で企てたらこれまでの商品企画で最短の3ヶ月で完成致しました(笑)
未使用時に汚れが付着しないマスクの型と機能で実用新案も出願いたしました。もしこのパターンを使用されたい工場さんいらっしゃいましたらご連絡くださいませ。
お子様向けはカラフルに。
お子様には6色いこう!と、生産が大変なのに大変なことお願いしてしまいました。ちなみに塗っている職人さんの達のほとんどがお母さん。休業を余儀なくされると収入にも響きます。雛人形の業界は5月から10月の間は次の仕込みで仕入れが増大し売上は無い状況。
少しでも工芸の現場を助けられたらと思ってどれだけの足しになるかはわかりませんが僕らができることで製造業を少しでも盛り立てたいです。
ようやく一般販売になります!ぜひよろしくおねがいいたします。まだまだ続くコロナの影響下で勤務シフトが平常時とは変わって発送がいつもより遅延する場合もございます。できる限り早々に対応してまいりますので何卒ご理解頂きますようよろしくお願いします。
あれから色々なマスクを試してみましたが自分たちの作ったマスクがメガネが曇りづらいこともわかりメガネな人たちにオススメしてます。
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