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20回目のセ・パ交流戦、見所満載

 球界再編から20年ということは、すなわち交流戦も20回目ということだ。毎年青葉美しき季節に、セ・パの両雄が対決するのはおなじみになった。今回は、そんな交流戦の見どころを独断で選定したので、是非皆様と共有させて頂きたく思う。

【Bs-S】奥川恭伸、涙の5回79球

 奥川という男のプロデビューは鮮烈だった。北陸の古豪・星稜高の天才エースがドラフト1位で鳴り物入りの入団しそのまま9勝を挙げる活躍。特に巨人戦にはめっぽう強く、日本シリーズ進出を競ったクライマックスシリーズでは巨人打線の息の根を止める完封勝利を果たした。この頃の彼を見た誰もが、ヤクルトのエース襲名を信じて疑わなかったのだ。しかしながら、その翌年の初登板で肘を故障して以降、彼の名前を聞くことはなくなってしまっていたのだ。

 その中で迎えた3年ぶりの登板。度重なる故障のせいか力強い速球は見られなかったが、まるで野球盤のように磁石で動かしているかのようなスライダーが冴え渡った。5回79球。体力のある彼にしては物足りないが、確かにマウンドに這い上がって見せた。この1勝はただの数字ではなく、ヤクルトでリハビリをしている多くの故障者達に勇気を与えただろう。これで高津臣吾監督も少しは楽になったのではないか。

【F-D】中日、全員野球でエスコン初勝利

 星野仙一と野村克也、2人の名将の愛弟子対決となったこのカード、初戦は立浪和義監督の中日が勝利を収めた。日ハム戦は実に3年ぶりの勝利であった。

 これは「野球あるある」だが、投手は初めてのマウンドに弱いもの。また野手は初めての投手に弱いもの。そういった意味では日ハムが随分と有利に思えたが、それを覆したのが中日期待の髙橋宏斗だ。彼は地方球場だろうが、MLBの本拠地球場だろうが関係なくナゴヤドームと同じクオリティの投球をすることが出来るのが最大の長所なのだ。

 また、野手もかなり頑張った。意外性のカリステがエスコンフィールド初本塁打を放てば、伏兵の加藤匠馬は適時打、同じく伏兵・田中幹也は左翼観覧席に大本塁打を叩き込んだ。守備でも岡林勇希が強権発動で同点の走者を殺し、まさに全員野球で勝つことが出来たのだ。「髙橋を勝たせよう」という先輩野手たちの男意気を感じるナイスゲームであった。

【L】中日以外に全て負け越し…代行監督も呆気なし

 この交流戦、悪い意味で話題となったのが西武だ。とにかく弱い。交流戦から指揮を執る渡辺久信代行監督もかなり悩んでいるのではないか。

 スタメンには1割打者がズラリと並び、エースの高橋光成は白星無しの7敗。松井稼頭央監督が責任を取って休養したが、過ぎた試合は戻ってこない。今季は若手を使って、来季からまた出直す以外再建の手立てはないのではないか。

宗教?不協和音?パ応援団は個性派集団

 普段セ・リーグしか見ていない僕にとって、交流戦の楽しみはフィールドの中だけではない。スタンドの熱狂的応援団を見るのもまた一興である。

 面白いと思ったのは、オリックスの応援団。これは昨季の日本シリーズでもあっと驚いたのだが、とにかく野球の応援とは思えないような一体感がある。セ・リーグのように、「パン、パン、パパパン」という一定のリズムとはまるでかけ離れているのだが、どこかの合唱団かと思うようなものがある。少数精鋭とはまさにこの事だろう。

 続いて楽天の応援団。ここはとにかくトランペット隊の音色が素晴らしい。手前味噌ではあるが、僕は吹奏楽部が全国区の名電高を出ているのでトランペットマーチを聞く耳には肥えているはずだ。ただ、楽天のトランペット隊は名電に決して劣らない綺麗さ、さらに言うと聞きやすさがある。そんな中で敢えて不協和音を出しているように聞こえるのがチャンスのテーマだ。入る前のファンファーレがそれにあたるのだが、とにかくラッパだけで演奏されていること次第に驚きを感じるかのような音色である。

 最後はお馴染み、ロッテの応援団。ここはサッカーのサポーターのような熱意を持ったファンが多いことで有名だが、今季横浜より移籍したソトの応援はまるで宗教だ。礼拝をしているようなポーズをとり、「バーモネフタリ」とひたすらに言う。これには驚いた。こうして毎年、応援でも驚かせてくれるのがパ・リーグである。人気のパ、実力のパとなるのも近いだらう。

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