かのこ
ただの日記。もしくはエッセイ的な何か。曖昧な日常。
オリジナルの短編〜中編小説を集めておく場所。
1話につき5分以下の連載小説。 60話で完結。 高校生男子:大河と、三十路OL:響子の、日常を切り取って繋ぐ想い。 多分。この出会いは、偶然でも運命でもない。
体育館に設置された狭いコートの中を、2対2、計4台の自転車がボールを追いかけて行ったり来たりを繰り返す。前輪を持ち上げてボールを弾き、自転車の上で両手を広げたキーパーがそれを受け止める。全ての動作は足を床につかず自転車の上でくり広げられる。 それが、サイクルサッカーというスポーツだ。 これは、運動音痴アラフォー主婦が、どういうわけかサイクルサッカーを始めてしまった、ただそれだけの記録である。
青い傘公式ラジオ【略して青ラジ】の舞台裏、ラジオ内で紹介した記事などをまとめたマガジンです。
「愛に重さがあるとして、そうね、それはこれくらいだと思う。」 と、彼女は手元にあった生卵をひとつ、俺の手に乗せた。 キッチンカウンターにはカゴに積まれた卵と、空のボウルがひとつ。まな板の上に刻まれたトマトが行儀良く並んでいる。火にかけたフライパンの底には刻んだベーコン、バターと冷凍のミックスベジタブルがじわじわと溶け出して、ジュワジュワと小さく音を立てる。 「……これだけ?」 「軽いと思う?じゃあ、こっちも持って。これは、私。」 もうひとつ。俺の手に卵を乗せて。彼女
恋愛小説の様なものばかり書いているわりに、私は、恋に疎いと思う。 誰かを好きになることはあっても、それは人間として好きな(なんなら、嫌いな部分も当然ある)わけで、恋をするわけでは無い。 だから、相手の好意に触れたときに、自分と同じように《人間として好き》というカテゴリで解釈してスルーしてしまう。 はっきりと言葉で伝えてくれた場合は、はっきりと言葉で返すけど。 いわゆる《空気》は読めない。 読めないので、私にとって好意を向けてくれる人間は、皆、親しい距離の友人として分類さ
片付けをしていたら、ノートに挟んだプリントの束から一枚のルーズリーフが落ちてきた。拾い上げてなかを開く。「ああ、懐かしいな」と、思わず声に出して、それを眺めた。 散々悩んだ挙句、結局、本人に渡すことのなかった手紙だ。とはいえ、授業の課題で書いたものだから、当然のように教師やクラスメイトの目には触れたのだけど。 《誰に宛ててもいいので、伝えたい思いを句に詠んでみましょう。》 国語の授業で、確か、そんな感じの課題だった気がする。 誰かに宛てて、と言われてもすぐに思い付く筈もなく
高校三年の大河と三十路OLの響子。二人の接点は、通勤・通学の電車だけ。 駅のホームで街角で、二人が繰り広げるのは、なんでもない日常の数分間。 少しずつ変化していく季節に、それぞれの想いが重なっていく。 ―― 多分。この出会いは、偶然でも運命でもない。 1.彼女の日常 日も暮れたばかりの駅を出て早足で歩く。改札を抜けるために取り出した定期券を鞄にしまい、持ち手を肩に掛ける。持ち手のベルトと肩の間で長い髪が引っ張られるのを不快に思いながら、鞄を少し持ち上げて反対の手で髪を搔き上
例えば。 朝起きて、部屋に独りで、外が雨だったとしても。 例えば。 浴室から聴こえる、キミの歌う変な歌も。 私は、其を、その時間を、愛しく思うのだろう。 愛しく、大切に。 何処かに仕舞い込んだりはせずに。 何の躊躇いもなく。
10年前の日記が出てきたので、読んでいたら、今日の日付のところにこんなことが書いてあった。 3年前の日記が出てきたので、読んでいたら、今日の日付のところにこんなことが書いてあった。 恋はするものではなく、堕ちるもの。 そう、江國香織がいっていた。 まったくその通りだと思う。 人生には、沢山の落とし穴があって、 そこに墜ちてしまった私は、穴の底で途方に暮れて空を見上げている。 空は遠く、とても良く晴れている。 でも、残念ながら、今の私のいる穴は恋などではなく、
某清水くんと話していて、そう思ったんですよ。(某って…) 彼は天才の類に数えられる人だと思うんです。 エモーショナルな脚本を書く天才。 そして、エモーショナルな芝居をする天才。 でもね、天才だから何でも出来るわけじゃない。むしろ、才がない部分は常人よりも出来ない部分が多い……と、思う。 例えば、日常生活とか。 例えば、何かを理論的に説明するだとか。 良いプレイヤーが良い監督になるとは限らないのは、なにもスポーツに限った話ではなくて演劇にも言えることだと思います。私は。 つ
サイクル・サッカー・クラブ!です!! たちかわサイクルサッカークラブのInstagramとTwitterのアカウントを作りました。 https://twitter.com/tachikawa_csc https://www.instagram.com/tachikawa_csc/ こちらは動画盛り沢山で、ゆるっゆるな感じでやって行こうと思います。フォローお願いします! ところで、いらすとやにサイクルサッカーのイラストがあったのが衝撃だったんですが、どこ需要なんですか
さて、のそのそゆるゆるとしたペースでの更新になっておりますが、私は元気です。いや、元気じゃないです。気持ちは割と元気なのですが、椎間板がヘルニアってしまっておりまして、ぜんぜん元気じゃないです。 普段、痛みに強いタイプの私が、鎮痛剤を飲んでも痛みで眠れないくらいなのだから、これはよっぽどなんだろうと思います。 さて、表題の尻を叩く話。 ケツドラムの方じゃなくて、いわゆる、急かすとか追い立てるとか発破をかけるとか、そういう方。 やりたいことがたくさんあるんですよ。やらねば、と
狭い休憩所で相席をしただけの見知らぬ婦人に、ねちりと嫌味を言われ、私は言葉を返すことも出来ずに目を閉じた。 他人からしたら、私たちは随分とアンバランスな恋人同士のように見えているのだろうということも、私が彼には不釣り合いだということも、わざわざ誰かに言われなくてもわかっている。 これは完全に私のひとり相撲だし、私はまだ、彼の真意を確認したわけではない。今だって、ただ、なんとなく、彼が時々醸し出す恋慕の含まれた優しさを都合よく受け取って、友人以上の親しさで寄り添っているだ
冷静になって考えると、私は何の為に文章を書いていたのか分からなくなる。 それはそれとして、今までにnoteに投稿した記事を、一本一本全て読み返してみた。 自分が書いた文章なんだから当然なのだけど、 「ああ、面白いな。」と、そう思った。 万人受けなんてしないけど、やっぱりじんわりと面白い。面白いというか、興味深いというか。 ただいま。 ただいま、戻りました。 今、「青い魚」「赤い口紅」のつづきというかスピンオフというか、別視点のお話を書いています。これは、他の投稿サイトに
打ち上げ花火の一瞬の光が、彼の横顔を照らし出す。 銀色の前髪。見慣れたはずの横顔は、やけに白く、知らない空気を纏ってまた闇に消えていく。 赤い隈取りの施された目元に、長い鼻梁と薄い唇が、まるでさっき屋台の隅で見かけた狐面のようで、私は闇の中で瞬きを繰り返した。 再び、乾いた音と共に空高く打ち上げられた花火が、私達を照らし出す。 黒い髪、紺の浴衣に光沢のあるグレーの帯。 「どうしたの?」 瞬きを繰り返す私を、その唇が気遣う。 こちらを振り返った彼の顔はいつもの、愛想のない地味な
「星くんは悩みとかなさそうでいいよね……」 パウチの袋に入ったバニラアイスを咥えたまま、蜜は器用に喋る。蜜の視線の先で、誰も居ないブランコが静かに揺れていた。 星は、何か気になることでもあるのか、公園の向かいのコンビニエンスストアの入り口をずっと眺めている。 僕は手元のフローズンヨーグルトを掻き回しながら、空を見上げる。 青い空、掴めそうなくらい滑らかに丸く浮かぶ白い雲、ブワブワとビルに反響して降り注ぐ蝉の音。 ハードなトレーニングとダンスレッスンが終わったところで、氷風呂が
更新は止まっておりますが、私はそこそこ元気です。 私事ですが、先日、引越しをしまして。 引越し前は、明け方というか朝6時頃まで起きていて午前中に寝る生活だったのが、引越し後は、深夜12〜1時頃に寝て朝7時には目が覚める生活になりました。 食事も1食+おやつ…みたいな感じだったのが、3食きちんと食べています。どういうわけか台所にも立つ気になって、逆に旦那さんに心配されています。 日当たりも間取りも築年数も、そう大きくは変わらないのだけど、人間と土地との相性ってあるのでしょうか?
桃の季節になると思い出すことがある。 その頃はまだ、旦那さんとは冬場のイベントで見かけるととりあえず挨拶をする顔見知り程度の関係だった。 ある夏の昼下がり。 その日は良く晴れた暑い日で、どういうわけか私達はお互いの素性も良く知らないまま、東京の街の中を並んで歩いていた。 ただ、ただひたすらに。 人の多い銀座の交差点に差し掛かる。 信号待ちで隣に並んだお婆さんが、突然「お若い人。そう、あんた達、お似合いだねぇ」とニコニコしながら話掛けてきた。 いえ…そういう関係では…と、顔を