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夏の夢
打ち上げ花火の一瞬の光が、彼の横顔を照らし出す。
銀色の前髪。見慣れたはずの横顔は、やけに白く、知らない空気を纏ってまた闇に消えていく。
赤い隈取りの施された目元に、長い鼻梁と薄い唇が、まるでさっき屋台の隅で見かけた狐面のようで、私は闇の中で瞬きを繰り返した。
再び、乾いた音と共に空高く打ち上げられた花火が、私達を照らし出す。
黒い髪、紺の浴衣に光沢のあるグレーの帯。
「どうしたの?」
瞬きを繰り返す私を、その唇が気遣う。
こちらを振り返った彼の顔はいつもの、愛想のない地味な顔立ちの青年のものだった。
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![かのこ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15837717/profile_1d44fd99f0a21f566fa27e9ddd0a3614.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)