駆け回る兎が柵を越えたとき
緑色の世界が私にとって初めての色でした。ごぼごぼと空気が漏れるのを、眺めていたのです。ガラスの向こうに、濁った眼を見つけました。
なにを患っているか、のちのち伺ったのです
けれどもその医者はなにも答えませんでした。
向こう側を見られない爪が透明な色に変わっても、もうだれもいなかったのです。けれどもそれに対してなにも思いませんでした。もともと誰のためにも生きようとは、思えなかったのですよ。
わたしは自分のために尽くすこともしませんでした
けれどそれも嘘つきになってしまうことが、(たまらなく悔しいのです)
わたしの生きる理由はやっぱりないままでした。あの頃探していたものは、見つかりませんでした。小さな白い手が求めた腕は最初からなにもなくて、認識がはっきりと、できたなら、たぶん、こんなに忘れることに執着することもなかったのかって、薬剤を見つめるんだよ。
だれが正しいの、どれを落としたの、どうして分かっていることを分からないふりしてずっと同じことをしているの。
馬鹿ですねーーーそれだけが取り柄なのです
(それがいちばん純粋が察せると存じます。)
傷ついた顔を見るのがあまり得意ではなかったのです、ひととひとの繋がりが赤色だけではないと気付いたとき、誰かと繋げようと思うことができなくなってしまいました。
そのうち分からなくなるのです。大切なのはなんでしたっけと大人に問いても、大層な答えなんて出てきませんでした。その様子を見た大人がすべてを利用したとき、醜さの世界を知ってしまうのです。
不思議なことがたくさんあることを嘘つきだって言うのなら、そんなつまらない人間に肯定されたくないと心に決めたのです。
だけれども先生、お饅頭を喉に詰まらせて死にたかったよ。突拍子もない歯車の欠けに頭を入れて、なにもないまま潰れたかった。灰になることは苦しいことではないって、知ったんだ。それは点滴が外された、車いすから離れた、あの寒い冬のころのことだよ。
時計のつけ方かも言葉の仕方も、0から学ぶことは苦しかったですが吐き気をこらえてやってみたのです。あながちへたくそではなかったですが、混じりけのない人はとても汚かったのだけ最後に分かりました。
お手紙をこうやって書けるようになったのです、いろんなお洋服を着てきたけれどやっぱり白いお洋服になってしまいます。けど無菌室の息苦しさは、なんだかもうおぼろげになってしまいました。
そういえば最近ひな鳥を育てています。産毛のいろが私と似ております、やっぱり何もないというのは良かったのでしょうか。それは私が決めることではありませんでした、大罪という単語があるのですが、当てはまらないことを責め続ける罪の名前は記されてませんでした。
見て見ぬふりはどうやったら、どうやってひとのためにするの、かならず汚れなきゃいけないの、どうやって恐れる感情を潰せばいいの、それを選ぶ時間の作り方は、蔑ろにしない方法を、見つめている眼差しの証明の仕方を、折れた背骨で考えることに責任が、意志のもち方を。
覆う雲の晴らし方は、わたしではなく知らないようなやつの、それを笑われない方法はみんな知っているのか、誰のために生きているの、相手がいないのは恥ずかしいことなの、靴の色は左右対称だといけない理由は、髪のいろを統一しなければならい、それで得られる価値が、
うまい具合に潰せないと怒られる理由を、無理やりお風呂に入らないと外に出てはいけない空気が、人権と権利の中身のお話も、小難しい教科書に落書きが許されない境界線は誰が決めるの、伝える理由も策略だとしった絶望はどこに埋めればいいの、
喉を変えられている子を見た、彼女はそれを自分の声だと笑って唄う
(本当のことを言うと医者が僕を睨むから)
(言えないんだよ。それはぼくの弱さだったのかなぁ)
(そんな僕に医者が偽善者という診断をつけたんだよ)
「腕を切った理由なんて、これっぽちも自分のためではない」
けれどそれを作品にしたら、誰かが見てくれるのかって、小汚い小屋の中で思うんだ。カチカチと電球が点滅するとね、天の声が聞こえます。今日も世界は平和ですよと云うものだから、嘘だと知っていてありがとうと頭を下げて眠ります。
血液の消費は誰もがやっていることだと思いました。質や量ではなくて、数字がただの記号になるまで、させるために、たぶん命を削ることが彼らの意地だったら、目を瞑って頭を下げることにいたしました。敬意の払い方が、身についてない僕ですから、と言い訳が出てくるのです。
足りない頭を僕は動かすだけなのです。自由の色は、僕が決めつけたものでよかったのですか。初めから間違えたことがないのなら、だれも考えることなんてしなくてよかったのです。
とおい図書室で分厚い本を見つけました。
気味が悪いという不釣り合いの本を、隠れて読んだものです。
ドキドキしてそういえばあの内緒の話をしている時が、僕は一番人間らしかったんだよ。
(魂を売ってる時が一番美しいと感じてしまいます)
もうなにも売るものなどないですが、恋煩いの能力がむせ返りの臭いがあのそらに届いたら、まるに収まらない場所に飛べるのだろうか。
脚が無いのは駄目なのですか、目玉が取れてたらつまはじきにされるのですか、穴だらけの皮膚の中で蛆を飼っているのはおかしいのですか、実験のあとのケロイドを隠さなければいけない理由は、硝子の人形を守ることは馬鹿なのですか、どうして、
地下街のルールに文句を言うことは、どうしてか札束にさらに値段をつける理由は、餓死の子を拾い上げる意味を、それが正しいのかはその子しか分からないよ、。
なにを患っているか、もう知っているのです
(あまりにも綺麗でした)
けれどもあなたのためになにも答えませんでした。
(僕だけの貴女が、どうか)
強く生きてくれていますように。
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