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『ぼくたちの哲学教室』【言葉を手繰り寄せるために】

『ぼくたちの哲学教室』を見に行く。 ドキュメンタリー映画で、哲学対話をしている北アイルランドの男子小学校が舞台だ。 かつての宗教対立の痕が、生々しく残る地域であり、映像にも頻繁に登場する。 歴史的背景に詳しくなくとも、その深刻さ、悲惨さが伝わってくる。 撮影中にも、校門に爆発物が置かれたり、親の教えが「やられたらやり返せ」であったり、今もなおその影響は続いている。 プレスリー好きでユーモアに溢れる校長が本作の中心人物であり、哲学教室のジェネレーターである。 哲学対話の手

    • 原動力は言動である

      つい先日,前任校の子どもたちに会う機会があった。 と言っても担任した子どもたちは全員卒業しており, 互いに「おっ」とはなるものの「誰やったっけ…?」 ちょうど一年ぶりの再会, 休校から丸一年,本当に一年ぶりで, 離任式もなく,会わずじまいで異動した私は, 忘却の彼方だったのだろう。 旧知の間柄の先生方に挨拶しては, 子どもたちの疑いの眼差し(誰やったっけ…?) を浴びる時間だった。 もちろんそこに不満があるわけではない。 子どもはいつだって今を生きる存在で, 過去の何

      • 卒業を控えた君へ

        卒業する貴方も。 卒業する人に関わる貴方も。 独断と偏見で選んだ卒業ソングプレイリストをどうぞ。 #1「プライマル。」THE YELLOW MONKEY #2「セピア」jackson vibe ※動画見つかりませんでした #3「青春と一瞬」マカロニえんぴつ #4「ありがとう、そしてさよなら」コアラモード。 #5「3月7日、月曜日」タオルズ #6「3月9日」レミオロメン #7「センス・オブ・ワンダー」sumika #8「青春」坂口有望 #9「サラバ青春」チ

        • 『点子ちゃんとアントン』エーリヒ・ケストナー(2000)岩波書店

          『いまこの国で大人になるということ』苅谷剛彦編(2006)紀伊國屋書店 を読了する。少し古いが,著名な学者それぞれが論じる視角が面白く,読後感が心地よい。 特にジェンダーについて論じた章は,今の東京オリンピック関連の話題に相まって,自分の見識の甘さを感じた。男女の差をふれないようにしていることが既に,ジェンダーに囚われているという視点。今の私には消化不良だが,咀嚼を続け自信をもって語れるように読書を継続し,自分の読み取りを記録に残していきたい。 さて,タイトルの書籍である。

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        • 読書記録
          5本

        記事

          ごんぎつねは理不尽なお話?【国語科・4年・ごんぎつね】

          国語の教材読解の視点の流れとして, ①作家論 ②読者論 ③テクスト論 の3つがあります。 国語だから感じ方は,人それぞれだから〜 って言っているのは②の立場をとっている人になります。 かつては,作者の意図は?などと問う発問や試験問題が多数あったように思います。 (私の国語の授業イメージもそうです,作者の気持ちなんて作者しかわかんねーよ!と思っていました) 実際,このような問題に原作者が直面すると,原作者本人もわからなかったり,そんなこと思ってねーよ!ということがあった

          ごんぎつねは理不尽なお話?【国語科・4年・ごんぎつね】

          『未来の学校のつくりかた』税所篤快(2020)教育開発研究所

          本書の副題は, “僕が5つの教育現場を訪ねて考えたこと”となっています。 筆者が訪れた5つの教育現場とは, ①大阪市立大空小学校 ②杉並区 ③N高 ④侍学園 ⑤大槌町 です。 公立の学校現場から教育行政, NPO法人から話題の通信制高校まで, 未来の学校という視点で全国各地の教育現場を捉え直しています。 内容はもちろん, 我々の固定観念を揺さぶる学校現場の状況を 軽やかにえがく文体にも大変好感がもてます。 著者が1989年生まれという同世代であることも大変刺激になり

          『未来の学校のつくりかた』税所篤快(2020)教育開発研究所

          竹田青嗣『21世紀を読み解く 竹田教授の哲学講義21講』(2011)みやび出版②「中庸 アリストテレス」

          哲学史をざっくりと見通したい。 私の今の立ち位置に,ぴったりの書籍でした。 哲学は,先人の流れや時代背景に則してその思いを汲み取ることで, より本質にたどり着けるということがよくわかる良書です。 本書は,学生と竹田教授の対話形式で進んでいくため, 初学者にとっても読みやすく感じます。 (哲学的内容は一度読んだだけでは?の語句も多々ありますが…) もう少し入門書を読み漁ってから原典にあたりたいと思います。 印象的なフレーズを抜粋します。 まず「中庸」から始めると、これは

          竹田青嗣『21世紀を読み解く 竹田教授の哲学講義21講』(2011)みやび出版②「中庸 アリストテレス」

          竹田青嗣『21世紀を読み解く 竹田教授の哲学講義21講』(2011)みやび出版①「イデア プラトン」

          哲学史をざっくりと見通したい。 私の今の立ち位置に,ぴったりの書籍でした。 哲学は,先人の流れや時代背景に則してその思いを汲み取ることで, より本質にたどり着けるということがよくわかる良書です。 本書は,学生と竹田教授の対話形式で進んでいくため, 初学者にとっても読みやすく感じます。 (哲学的内容は一度読んだだけでは?の語句も多々ありますが…) もう少し入門書を読み漁ってから原典にあたりたいと思います。 印象的なフレーズを抜粋します。 プラトンでは、一番偉いのが「善の

          竹田青嗣『21世紀を読み解く 竹田教授の哲学講義21講』(2011)みやび出版①「イデア プラトン」

          授業研を終えて

          「授業記録を全部とる」ことの大切さを感じました。 なぜなら,「無意識を意識化」することができるからです。 これまでの私の授業記録と言えば, 自分が印象に残った場面,発問や子どもの発言でした。 しかし,それらはあくまで自分の主観でしかありません。 「全部とる」ということは, 主観を排し,客観的に物事を捉えることになります。 (すべてをメモできるわけではないので, メモ自体にも無意識の取捨選択が含まれてしまうのですが…) そうすることで,自分がこれまで無意識下であった部分を

          授業研を終えて

          教職と哲学

          今,哲学について学び直す。 その理由は主に3つある。 1つ目は,苫野一徳の論の根拠を知りたくなったこと。 2つ目は,学び続ける教師の姿勢が,ノンバーバルで子どもに影響を与えること。 3つ目は,教師の仕事観や指導観の根底には, 哲学の思索とのつながりがあるのではないかと感じたことである。 1つ目については,この休校期間中に, 『本当の道徳』(トランスビュー) 『はじめての哲学的思考』(ちくまプリマー新書) を読破した。 これまでにも, 『「学校」をつくり直す』(河出新書)

          教職と哲学

          学校再開後,早1カ月。

          今年度はこれまでと同じが通用する年度ではない。 一つは,もちろん長い休校期間に加え, 「新しい生活様式」に代表される様々な制約の入った学校生活になること。 もう一つは,自分自身が学校を異動して新しい学校文化での挑戦になること。 特に,三校目となる今回は,より俯瞰して学校を捉えられる立場になる。 理想と現実をふまえながら,1カ月間の実践での取り組みをふり返る。 まず,子どもについて。 3年生は2年間担任によりみっちり鍛えられてきた学年である。 新しく学習する教科が増え,子ど

          学校再開後,早1カ月。

          ことばに頼りすぎていること

          今日の帰り道。 家の近所にある消防署でサイレンが鳴る。 ちょうど出動要請がかかったようだ。 せかせかとランニングから戻ってくる隊員たち。 消防服に身を包んで消防車に乗り込む隊員たち。 自分が渡る交差点を2台,サイレンを鳴らしながらかけていった。 そんな様子をボーッと眺めながら, ふと今週の土曜日の午後がフラッシュバックする。 …土曜日の午後。 よく晴れてはいるものの,爽やかな風がそよぐ過ごしやすい午後。 近所のスーパーに家族で買い物に来た。 妻は店内へ。 自分は息子と

          ことばに頼りすぎていること

          自分のかかわる子どもたちへ

          自分のかかわる子どもたちのことを笑顔で語る人がいい。 そこには愛が溢れている。 愛おしいという訓をあててもいいのかもしれない。 愛しむという訓をあててもいいのかもしれない。 おそらく,かかわる子どもたちにもその笑顔は向けられている。 そして,その愛を子どもたちも感じている。 言葉はなくとも,身体はいとおしまれていること,いつくしまれていることを感じているはずだ。 一方, この方法論を使えば,子どもたちは話を聞く。 脅して威して嚇していけば,子どもたちは素直に話を聞く。

          自分のかかわる子どもたちへ

          逆上がり

          逆上がりは子どもたちにとって何なのでしょうか。 逆上がりは教員にとって何なのでしょうか。 大人になってから何人ものできない人達に出会ってきましたが, 特に社会生活で困っている様子は見受けられませんでした。 でも, 何処か寂しそうだったり, 恥ずかしそうだったり, 苦々しそうだったり… 「逆上がりができないこと」に対して, ちょっとした自己嫌悪や劣等感を覚えているようでした。 一方逆上がりができる人たちは, 「逆上がりも出来へんの?!」と一方的にマウントをとりにかかりま

          Day8

          この生活にも慣れてきた。…のか? 教師の目線より,子どもの目線で考えてみたい。 ○朝の行動がルーティン化してきた。 →いわゆる「いい子」たちは朝提出物を出す習慣が位置づいている。 →一方意識が一方向に保てない子,レッテルを貼られやすい子たちは,  忘れたり(本当にボーッとしている)サボったりしてきている。 総論:疲れているよね。当たり前だよね。自分も昨日9時間半寝たし。    逆に,いい子すぎる子たちの行動原理は何だろう。    親や教師に叱られないことが第一になってい

          分散登校の1週間

          午前3時間、午後3時間。みっちり。 学級をAとBに解体して行う分散登校week1が終わる。 (あともう1week) 週半ばで,勤務校の誰しもが, 「まだ水曜日?!」と嘆息していたが, 心の底から同意。久しぶりの金曜の開放感が心地よい。 来週は専科の授業も入ってくるため, 今週ほどの強烈さはないだろうが, 逆に専科が入ってくるからこそ, 子どもたちの姿を丁寧に見るチャンスであると言える。 休校中の課題の丸つけも急務だが, 他の授業者の授業スタイル, そして,授業中の学級の雰

          分散登校の1週間