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ことばに頼りすぎていること

今日の帰り道。
家の近所にある消防署でサイレンが鳴る。
ちょうど出動要請がかかったようだ。

せかせかとランニングから戻ってくる隊員たち。
消防服に身を包んで消防車に乗り込む隊員たち。

自分が渡る交差点を2台,サイレンを鳴らしながらかけていった。
そんな様子をボーッと眺めながら,
ふと今週の土曜日の午後がフラッシュバックする。

…土曜日の午後。
よく晴れてはいるものの,爽やかな風がそよぐ過ごしやすい午後。
近所のスーパーに家族で買い物に来た。

妻は店内へ。
自分は息子と店内の座席コーナーへ。
もちろんソーシャルディスタンス。それでも何人かは過ごしていた。
ふと,店の外に視線をやると,そこにはオープンテラスが。
…誰もいない。
よし,過ごしやすいし,ソーシャルディ…だし,外で待とう。

息子を抱え,オープンテラスへ。
普段より使用が減っているであろう椅子やテーブルでも,
手入れが行き届いていて,清潔感がある。
申し分なく座れそうだ。
本日息子は抱っこ紐。
息子を膝の上に乗せる形で,椅子に深く腰掛ける。

…案の定,風が心地よい。


しばらく座り心地と風心地に浸りながら,息子にあれこれと話しかける。

先日読了した
『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』
かなりの刺激を受けた。
我が子へもっと豊かなことばを培うために。
親の言語環境をもっとひらいていこう。


国道から一本入った店の前の道は,駅に続く道路でもあり,
結構な数の車が通る。
車の絵本はつい先日読んだばかりだ。

息子の視線の先を確認しながら,
(前出の書籍で大事にされている3つのTのTUNE IN)
「赤い自動車ぶーぶーぶー」
「大きなトラックぶおーぶおーぶおー」

…いやいや,待てよ。もっと耳をすませ。
車の音って“ぶー”?
トラックの音って“ぶおー”?

今日もマスク越しの子どものことばを何度も聞き落とした老耳のせい…?
いや,そんなことはない。
だって,今や静音はエコカーの売りだから。

うるさいのは排気をいじっているバイクだけで,
静かに町を走り抜ける車の多いこと。

「ねえねえ息子ー車の音って何かなー?」とか言いながら,
息子そっちのけで頭の中はこれまでに蓄積されてきた
オノマトペ に占領されていた。


ん?やっぱり擬音語になっていないオノマトペ って多くないか?


ことばにする過程で溢れ落ちてしまっていることって多くないか?


ことばにしてしまったことで思考停止になってしまってない?


頭の中にたくさんの文字と問いが溢れてくる。
そして,今の私には,車の音は表現できない。
なぜなら,平仮名の文字と文字の隙間の音に聞こえるから。
それを表そうと口を開いても,喉から欲する音が出てこないから。

ついことばにすることで安心し切ってしまうけれど,
ことばにしたことで見えなくしてしまっていることを反省する話。

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