認知症の母の浪費対策 守られない“約束“2
(「認知症の母の浪費対策 守られない“約束”1」の続きです)
2019年の夏に浪費の原因である洋服の購入はもうしないと約束しましたが、すぐに忘れ、洋服の購入を繰り返しました。洋服の購入は認知症の症状が出る前からのことで、クレジットカードを使うようになってからタガがはずれたようです。
必要のない物でもお店のスタッフの営業トークにまんまとのせられ、買う時の“快感”を得るために購入していたようで、買物依存症だと私は思っています。
介護認定の面談や認知症初期支援チームのスタッフとの会話では
スタッフ:「何か運動はなさっているんですか。」
母:「よく出かけて、歩いてます。」
私:「運動じゃなくて買い物です。バスでデパートやスーパーに出かけてま
す。運動ではないです。」
母:「お出かけして、ちゃんと歩いているわよ!」
私:「往復バスか友人の車です。目的は買い物。ウォーキングではないで
す。」
こういうやりとりがよくありました。母の言葉どおり、しょっちゅうお出かけをして、買物をしていたようです。
母は見栄っ張りで、プライドの高い人。認知症になってから、こじつけともとれる自己肯定を話すことしばしばで、そういうところの頭の回転は早いのね…と何度も呆れました。
昔から自分の欠点を指摘されると「私はパパやあんた(私)の面倒をみてやっているのに、なんで責めるの!」と逆ギレしました。そういう気持ちで家族の世話をしているんだ、と悲しくなり、自分はこんなことを言う母親にはならないようにしよう、自分が悪かった時は家族にも「ごめんなさい」を言い、きちんと反省できる人間になろう、と思いました。母はわたしにとって反面教師でした。
母の預金通帳を預かることができず、カードも停止できない中で、私ができることは、母に何度も繰り返し、浪費をしないように注意する、購入直後であれば返品する、ことだけでした。
何にお金を使っているのか、わからないままでは、注意もできません。母からカードの登録情報をなんとか聞き出し、1社はネットで利用状況が確認できるようにしました。これで効果的に母に注意ができるようになりました。買い物すれば翌日にはどこでいくらの買い物をしたかわかります。当時は翌日であればまだ買い物の記憶に残っていることも多かったので、早速電話します。「返品してきて」と言うと、母は「できない」「嫌だ」と言います。もう洋服は買わない、カードは使わないと約束したよね、今度からは守ってね、と念押しします。
口頭ではすぐに忘れるので、時間があるときはFAXで送りました。
自宅に行く度に①洋服は買わない、②カードは使わない、のルールを書き出し、母と確認し、壁に貼りました。壁に貼らないで、と言う時もありましたが、洋服を買わなくなったら剥がします、と心を鬼にして貼りました。私が家を出た直後に破り捨てていたと思いますが、母には何度も繰り返して意識してもらうしかありません。
督促状が届く状態、急な病気の入院費用や葬式費用が全く無い状態をなんとかしなければなりませんでした。
状況が改善しないので、母と毎月ランチをしている一回り年下(といっても70代後半)の友達Iさんに、母の状況を正直に伝え、相談をしました。デパートのカードを得だからと15年以上前にすすめたのは自分、申し訳ない、おっしゃり、店員にすすめられるとすぐに物を購入してしまうので注意したことがあった、と教えてくれました。
ランチの度に①年寄りは(お金の管理が難しいから)カードを使ってはダメ、現金払いが一番、②店員は売るために、似合うだの何だのと気分をのせて買わせる、のせられて洋服を買ってはダメ、と母に言ってくださることを快諾。この月1回の、友達からのアドバイスは効果がありました。食事中のアドバイスだけでなく、一緒にランチをした後、いつもの調子で服を買おうとするのをたしなめたり、カードを使おうとするのをやめさせたり、現場で直接指導もしてくださったので、記憶にも残ったようです。
とは言っても買い物が無くなったわけではありません。回数は減りましたが、柄違いのコートを2週連続で購入する等、服の購入は続きました。家計の赤字状態からは脱出したものの、思うように貯金ができず、相変わらず私は頭を抱えてました。
そんな中、世の中に想定外の事態が起こります。コロナ禍…、2020年の春は外出自粛、営業自粛となり、母が頻繁に訪れていたデパートも休業しました。お出かけが激減し、お買い物の出費も減りました。
コロナ禍がなかったら、母の貯金は今も0円のままだったかもしれません。
母との浪費バトル、この後もさらに続く…。
(「認知症の母の浪費対策 コロナ禍で通販にシフト、蟹も届く」に続く)