育児日記。風と子どもたちのこと。
子どもはその愛くるしさをもって3歳までに一生分の親孝行をすると聞く。
ならばうちの長男はもう一生分の親孝行を終えて超過分の上乗せ中。
次男は目下、親孝行中。
厄介なことも、怒りたくなることも、切なくて胸が締め付けられることも、疲れ果ててしまうこともあるけど、なんだかんだで子どもはかわいいものである。(親バカ)
今日は次男と保育園から帰る時、風が強かった。
ビューン、と吹いてくる風にびっくりしたちびすけは、「きゃー」と悲鳴をあげた。
「風だよ、風が吹いてるね」
と教えると「かぜー」「こわいー」
と言った。
そして、また風が吹くと今度は思いっきり頭を押さえたのである。
「きゃー、こわいー」と言いながら頭を押さえて立ち尽くす次男。
え?カツラ?
髪がびゅんびゅん吹く風に煽られて立ち上がっているので、髪が抜けてしまう、飛ばされてしまうと思ったのかもしれない。
立って頭を押さえている姿がまたかわいくて面白くて笑ってしまった。おいでおいでをしても来なくて、かわりに「だっこだっこ」と催促までしてくるので抱っこしに行った。
抱っこすると安心してムギュっとしがみついてきた。
調子にのった私は「ギュッってして」とちびすけひ言うと彼は「ぎゅー」と口で言って、その短いすべすべの腕で強くしがみついてきた。
また明日も強風が吹けばいいのに、と思ってしまう。
今日をカツラ記念日と認定しよう。
ひとつ、別の風の思い出が脳裏に蘇った。
上の子が年少さんの頃、まだ下の子がいなくて保育園の行き帰りに2人でおしゃべりしながら歩いた道がある。年少から保育園が変わったから最初の頃は歩いて道を覚えたのだろうか、朧げな記憶だけど途中からはチャリで送迎をすることが増えたような気がする。
家が見えそうな位置まで来てふと息子を見ると口を開けていた。と思ったら閉じた。
「何してるの?」
私が聞くと、いつもは反応が遅くて返事も返ってくるんだか来ないんだか怪しい息子がニコニコしながら言った。
「風を食べてるんだよ」
何をパクパクしてるのかと思ったら風を食べていたのか。
まさに一風変わった息子の独特なセンスにまた「一本取られた」気分になった。
その日私は息子の風パクがとても気に入って、夫にも興奮気味に報告して翌日の保育園の連絡帳にも書いた。更に、雑誌「母の友」の冒頭にある子どものおもしろ表現のコーナーに投稿しようかとも思ったが、日常に忙殺されていたからか、やめてしまった。
けれど、この風パク事件はいつ思い出してもおかしくて、息子にも「大好きなエピソード」としてしつこく語り続けた。
ちなみに息子が口をパクパクして風を食べたのはその日その時限りだった。
いつか、子どもたちが巣立って、ひとり歩いている時にでも強い風が吹いたら、心地よい風が吹いたら、私はまたカツラ記念日や風パク事件を思い出すのだろうか?
ひとりで、かわいい子どもたちを思い出すのだろうな、と思う。
そういえば、独身の頃、よく晴れた昼下がりに桜並木をひとり歩いていたとき、風が吹いた思い出がある。視界いっぱい桜の花びらが埋め尽くして、その隙間にきらめくが太陽まぶしかった。
子どもたちの心の中にも、風や太陽や花の思い出がいっぱいできるといいな、と思う。
そして、そのどこかにひとつでも私との思い出が宿ってほしいと思ってしまう。