田辺聖子の解説に唸る 〜 有夫恋
時実新子さんについては ↑ この記事でも書いた事がある
今回、再読したのは こちら
新子の言葉には 嘘がない
有夫恋は 新子の川柳を集めた 一冊である
幾つかのウタを紹介しよう
○ 嫁ぎ来て十年 恋はまだ知らず
○困らせて 泣かせてみたい それも愛
○あの人を思い この人を見ています
○美しい眼だよ 悪事を知りつくし
○こちら あなたの夫と死ねる女です
○みんな 善人で 銃殺刑である
○心 奪われ阿呆のような日が流れ
○永遠の愛 誓わせて 何になる
○心欲しがる女は海に捨つるべし
○妻をころして ゆらりゆらりと訪ね来よ
○入ってます 入ってます この世です
○誰も知らぬ こんな私がここに居る
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どうだろう?
天衣無縫と言われた 武田百合子とは また違う、正直で
剥き出しの裸の心
悪女なのか、もはや 純粋な女なのか
新子の放つ 言葉を超越した何かに戦慄さえ感じてしまう
ヒリヒリと 鋭い短剣を翳されたような
真っ白な 水仙の花が咲き乱れる
気高いオベリスクの元に立たされたような
その印象は おそらく 読み手によって
多分に異なるだろう
解説の 田辺聖子の言葉にも
また 唸らされる
『 人生を生きることは 人を傷つけること、といってもいい
私たちは 有形無形に人を泣かせているかもしれない 』
好き嫌いがわかれる 句集かも知れない
だが、わたしは 新子の言葉を 追いかけてしまう
他にも読んだので
順次 紹介していきたい
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