灯台の光が、ふいに心にともされたような。
もこもこのマフラーと手袋の温かさを頼りに
駅の改札を抜けて、階段を足早に駆け上がる。
はじめて降り立った駅、東京、神楽坂。
すれ違う人達が華やいでいた。
1月11日、成人式の日。
わたしは灯台の写真展を観に行くために。
彼らの晴れ着の合間をすり抜けるように急いでいた。
隠れ家のようなギャラリーの中を外の風が不意に
駆け抜ける。
ちいさな無人島にゆったりと建つ水の子島灯台。
明治37年に点灯されてから、ずっと光を放ち続けて
いる。
まっすぐに伸びてゆくそのからだの何処かには、
みな、戦争の傷跡も一緒にまとって。
すっくと、傷跡をみせながら、しゃがまずに
立っている。
わたしの何かが、灯台の景色の中へと傾いてゆく。
切なくて、温かくて、何事もなかったかのように
飄々とした風情を醸し出している灯台の光。
ギャラリーをでると雨催いの空の下。
海を照らす光が一瞬心に灯されたような。
そして、色節の時を迎えた成人式の彼らにも
降り注がれたような。
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