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宛先は、よくわからないけれど。noteで毎日手紙を書いている。

「あぁ、こんなところにあったんだ」

つい、失くしてしまったと思ったのにって、それを見て心の中で
ちっちゃく、叫んだ!

かつては、持っていたのに今は捨てたり失くしてしまったものと同じものを
雑誌のページでみかけたりすると、じわっと近づきたくなる。

古い「暮らしの手帖」12月号にゴブラン織りみたいな青い刺繍がほどこされた、スタンド付きの楕円の鏡が掲載されていた。

(☝もう捨ててしまったので、イメージに合う色目を探してみたらこんな感じに似ていました!これが手鏡の裏側に貼ってある感じです)

小さい頃から、住んでいた家にはそれと同じものがいつもあった。

化粧台で化粧しない母が化粧するときには、必ず愛用していたものだ。

今見ているそれは、誰の所有物かというと。

文章とたたずまいが大好きな写真家で作家の島尾伸三さんの自宅の居間にあった。

たくさんの異国の切手に消印付きの手紙がつめこまれた、カゴの前にななめにちょこんと。

初めて見る島尾伸三さんのお宅の空間にかつて馴染んでいた、愛用品が、
ひとつあるだけなのに。

なぜかこっちの時間が後戻りしてしまう。

小さい頃から暮らしていた大阪の実家には、島尾伸三さんのお父さんでいらっしゃる、島尾敏雄『死の刺』が、家族共有の本棚の中にあった。

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黒い布地の装丁に、金のタイトル。

いつの間にか本棚にそれはあったのに、誰かがそれを読んでいる気配はなかった。

ま、家族の中で誰かがふりんのような行為をやらかすと、そこに集っていたはずのものたちが、どれほど狂ったりしてしまうのかの、半ば実験小説のようなものだと、わたしは、おとなになってから『死の刺』を読んでみてそう認識していた。

そしてそのご子息であった家族の当事者という位置にいらっしゃる島尾伸三さんのことを、わたしは半ば仲間というか、同じ痛みを知ったもの同士というか、ユアサイド的というか勝手に同じ境遇の人だと、心の中で懐いていた時期があった。

子供だったわたしは、その黒い本だけには手を伸ばしてはいけないような雰囲気が、大人達から放たれていたので、ずっと触れずにいた。

でも、なんど本の整理をしてみても、その本だけは誰も捨てることなく、我が家の本棚のガラス戸の向こう側に、いつもひっそりとそこにいた。

そして今は、むかし家族で暮らしていた実家の本棚から遠く離れた、わたしの部屋のちいさな本棚におさまっている。

(☝これは、実家にあったものとは違う文庫版です。現在の黒表紙の実物を写真に収めるのがなんかこわいので🙇)

そして、鏡。

島尾伸三さんのお宅にあったのと同じ鏡。

それに関しては、鏡って、いろいろな思いがつまっているから捨ててしまいましょうと、引っ越しの時捨てた。

その時捨てた鏡と同じ鏡が、島尾伸三さんのお宅にもあり。

なぜだか、『死の刺』は、今もって失くすことなくこの部屋にある不思議。

その古い「暮らしの手帖」の中で島尾伸三さんが、おっしゃっている言葉。

心にためずに、心のなかをぜんぶ、書く。

そんなふうに、彼はいろいろな方にお手紙を差し上げているので、毎日が手紙日和なんですよって。

こうやって、島尾さんの言葉をいまタイピングしながらも、わたしの心の中には、なにかがたまっていっている感じがする。

でも、やっぱりぜんぶは書けてません。それでいいと思うけれど。

島尾さんも、島尾さんのスタイルでそれでいいんだなって思うし。

こういう時、なんかいい言葉はないのかな? 偉そうに言ってるみたいでちょっと、腰がひけてきた。

つまり、なんでかっていうと。

もしぜんぶはきだしてしまったら、なんか空っぽになりそうで。

貧乏性のわたしは、思いとかに対してとってもけち臭いのかもしれない。

映画もドラマも一気見できないし。

映画もドラマも、ちょっとおかしいかもしれないけれど。誰かの台詞を聞き逃してしまった時は、巻き戻し◀◀してしまう。

決して、覚えておこうとかではないけれど。

ぜんぶ、聞いたよあなたの言葉って感じで安心する。

そしてこの「暮らしの手帖12号」は、ずっと捨てないでいようと、心のはしっこでおもっていた。

今日はほんとうは、フォロワーさんのことをすごく書きたかったけれど。

なんかもうちょっと寝かして置こうっておもってしまって。

でも、今日のこのことを書いていたら、わたしはnoteでずっと誰かに手紙を書いているようなそんな気がして来た。

宛先はよくわからないけれど、過去の自分でもあるし。
今のじぶんを作ってくれた人達へのありがとうでもあるし、そしてわたしの人生で新しくともだちのように遊んでくれるフォロワーさん宛てでもあるような気がしている。

冒頭の言葉を少しだけアレンジすると。

「あぁ、こんなところにいたんだ」

最近仲良くしていただいたいるフォロワーさんのことを、今そんなふうに思っています。

今日も、長いひとりごとにお付き合いいただきありがとうございました!

今日の一曲。

#聞きながら書いてみた

九州男&hirokoさんの手紙です♬では、どうぞお聞きくださいませ♬

       南国の 切手の刻み ひとつ欠けてる
       月光の ましたは白い あしたを呼ぶよ



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ゼロの紙 糸で綴る言葉のお店うわの空さんと始めました。
いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊

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