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午前7時25分発の車窓から、ふたり富士山を見ていた。

4年前の冬のある日。

仕事に行くのもすごく嫌で。

それでも、行かなきゃって思って乗った小田急線。

座ってしまうとなにか、そのままくずおれそうな

気分だったから、立っていた。

まだわたし、

あなたがいなくなった、余白に慣れてなかった。

下向いて、マスクの中で溜め息をして。

あれは善行駅あたりだったかな。

朝の光がただ眩しくて、車窓に視線注ぐと富士山がいた。

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富士山っていつもいる。

いなくならないから、あなたよりすごい。

雪化粧した富士山が稜線くっきりと

朝の光を全身に浴びて。

上手く言えないけれど。

上手く言えない日々だけど。

その瞬間、富士山をひとりで見ているような気がしなくて、

誰かの視線を感じながら見ている。

そんな不思議な感じがした。

それってあなただった。

あなたとふたり神奈川から富士山をみていた。

周りの人の気配も声も聞こえないぐらい

濃密な静寂だけを感じて。

あれって、

ふたりはじめてこしらえた

寧静だったのかもしれないね。


 


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