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月刊文芸誌『文活』 | 生活には物語がみちている。

noteの小説家たちで、毎月小説を持ち寄ってつくる文芸誌です。生活のなかの一幕を小説にして、おとどけします。▼価格は390円。コーヒー1杯ぶんの値段でおたのしみいただけます。▼詳…
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2022年1月の記事一覧

【文活1月号ライナーノーツ】シェアハウス・comma 白洲 彩絢 編 / 左頬にほくろ

こんにちは。 寒くて寒くて週5で鍋、左頬にほくろです。 一周年を迎えパワーアップしリニューアルした文活、皆様にお楽しみいただけていますでしょうか。 毎月定められたテーマのもと様々な角度から生み出された作品をお届けしていた従来のスタイルに加え、今月より新企画として『リレー小説』をメンバーで8ヶ月かけてじっくりと育て、紡ぐ運びとなりました。 作秋に刊行した文芸誌の群像劇『猫が消えた日』の中でも登場した【とびが丘】という或る街に佇むシェアハウス・comma(コンマ)。前回と

12月32日、ゆき【短編小説】

 二両きりの電車のホームで待ち合わせた里見さんは、長身を黒いロングコートに包み、ひらひらとわたしに向かって手を振っていた。  ”天ノ里の神社へ行きませんか”  里見さんから初詣の誘いが入ったのはついさっき、年の瀬迫る12月31日の夜のことだ。店の電話にかかってきた、唐突かつ素朴な誘いに、わたしの心は大きく跳ねた。  ごぉぉぉぉん、と遠くから除夜の鐘が聞こえる。ちら、と携帯の画面に目を走らせると、今年も残すところあと数十分。 「こんばんは、聡美さん」 「こんばんは、里見さ

大宮スーパーマーケット

この作品は、生活に寄り添った物語をとどける文芸誌『文活』2022年1月号に寄稿されています。定期購読マガジンをご購読いただくと、この作品を含め、文活のすべての小説を全文お読みいただけます。 もう少しだけゆっくりと過ぎてほしいと思うほど、時間は速度を上げ、熱を持ち、汗をかき、快活に笑い、満足気に泣き、立派に怒り、見えなくなっていく。時間が見えなくなる寸前で、その背中に向かっておい、と叫ぶと、時間は片手を上げて、結局振り返りもせずに見えなくなる。 ハルオの背中に降ってきた雪が

シェアハウス・comma 「白洲 彩絢 編」

この作品は、生活に寄り添った物語をとどける文芸誌『文活』1月号の無料公開作品です。定期運営マガジンをご購読いただくと、ほかの小説をすべてお読みいただけます。  人生が、終わった。  5桁の番号が大量に並ぶ掲示板を見て、何度も見て、穴が開くほど見て、焦点が合わなくなるほど見て、それでもあたしの見たいものだけがそこになかった。“膝から崩れ落ちる”という表現はこういう時の為にある言葉なんだ。そう冷静に思いながら直立している自分を今すぐ誰かに褒めて欲しかったけれど、その誰かが全く

【文活2022年1月号】今月から新体制でおとどけ|リレー小説「シェアハウスcomma」を開始|読み切りテーマ「雪の日のぬくもり」

あけましておめでとうございます!! 昨年末にnoteでおとどけしたとおり、2022年からノベルメディア「文活」は新体制に移行。企画もパワーアップしておとどけします!! なお、新体制への移行に際して、文活の仕組みを以下のように変更させていただきました。 1, 小説の購読をマガジン内限定に変更 2, 小説の投稿ペースを月に一度の一斉公開から、週に一度の定期投稿に変更 1,は、今まで無料で読めていた文活小説が有料になるため、大きな変更となります。こちらの変更理由につきましては

夜と朝のあいだのサービスエリア

一月十日、午後六時。高速道路を走る暗い車内のなか、ちらほらとフロントガラスに白い粒が吹き付けてくるのが目に入った。雪だ。初雪は年末だったが、これからはどっと積もってもおかしくない日々が続く。大型トラックの運転だけに、慎重に慎重を重ねないといけない季節が来た。 俺の仕事は、食材輸送ドライバーだ。岩手にある乳業工場から、大阪の配送センターまで、冷却機付き配送車で牛乳や乳製品を運んでいる。 目的地に向かう運転席のオーディオからは、大きめの音でラジオ番組が聞こえてくる。長距離の運