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夜と朝のあいだのサービスエリア
この作品は、生活に寄り添った物語をとどける文芸誌『文活』2022年1月号に寄稿されています。定期購読マガジンをご購読いただくと、この作品を含め、文活のすべての小説を全文お読みいただけます。
一月十日、午後六時。高速道路を走る暗い車内のなか、ちらほらとフロントガラスに白い粒が吹き付けてくるのが目に入った。雪だ。初雪は年末だったが、これからはどっと積もってもおかしくない日々が続く。大型トラックの運転だけに、慎重に慎重を重ねないといけない季節が来た。
俺の仕事は、食材輸送ドライバーだ。岩手にある乳業工場から、大阪の配送センターまで、冷却機付き配送車で牛乳や乳製品を運んでいる。
目的地に向かう運転席のオーディオからは、大きめの音でラジオ番組が聞こえてくる。長距離の運転中、俺は音楽にはとんと詳しくないから、人の声がなにかしら聞こえているほうが好きだ。
天気予報をやってくんねえかな、と思いはするが、ラジオのパーソナリティはのんきに笑い声を立てるばかりで、ニュースになる気配はいっこうにない。しょうがないか、と思って俺は、ふたたび粉雪が舞う外に目を向けた。
気を付けつつもぼうっと力を抜いて運転していたら、しぜんと記憶が去年の冬を呼び起こしてきた。
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