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彰子の出産と土御門での波風/大河ドラマ『光る君へ』第36回

それやったらアカン。アカンよ、道長くん。

前回「倫子にバレるバレる詐欺」なんて言ったけれど、今回ばかりはマズイのでは。あの漢詩に関連付けるところまではいかなくとも(時間の問題だが)、公の場であんなに見せつけられては倫子の表情がかたまるのも無理はない。ラストの赤染衛門の詰問に、まひろはどう答えるのか。次回までドキドキである。

彰子の産んだ敦成あつひら親王誕生から50日目の「五十日いかの儀」でのできごとだった。「今夜は無礼講だ」と集まった者たちに言いはなった道長だが、自分が無礼講状態に。きっかけは、公任が藤式部(まひろ)に絡んだこと。遠くからそれを見ていた道長くん、もしや公任に嫉妬でもしたのだろうか。

「俺の自慢のオンナだぞ」という顔で、藤式部(まひろ)を呼ぶ道長。ふたりの仲を噂する者たちがいることを知ってか知らずか、それともただ気がゆるんだのか。みんなの前で特別扱いしたのはマズかった。まひろに祝いの歌を詠ませるまではまだよいとして、見事に歌を返して阿吽の呼吸を見せつけるのは必要あった?

呼ばれたときから困惑していたまひろの表情、歌を返した道長を見て一気に顔つきが変わり、席を立った倫子。それに気づいた赤染衛門。もともと女房たちの間では浮いた存在で、その上彰子の信頼まで得ることになったまひろにとって、赤染衛門は唯一フラットに接してくれる人なのに。

そう思う一方で、元カレの屋敷で住み込みで働き、時折元カレが部屋にやってきて一緒に月を眺めるってどんな気持ちなのだろうか、などと考える。「傷こそ、その人たらしめるもの」と彰子に説いたまひろ。何者にもなれず、つらい別れも不実なことも経験してきた彼女だから言えることばである。そんなまひろが、すぐ近くで三郎(道長)を感じながら物語を書くという、この上ない幸せな日々を送っている。秘密が多いぶん、感じる幸せは濃厚だ。ふたりとも油断し過ぎではないか。若い頃の、ちょっと空気を読めないまひろを思い出す。

倫子は倫子で、控えめ過ぎる彰子が何を考えているか分からず、母親として何もしてやれない悔しさがあっただろう。それをまひろは軽々と飛び越えた。倫子は彼女に感謝しつつも、気づかぬうちに嫉妬心が芽生えているのかもしれない。そこへきてこの展開。道長には、自分が詠んだ歌に返してほしかっただろうに。そういえば、倫子は一度も道長と文のやり取りをせぬまま夫婦になったのではなかったか。

どう収めるのか。男女の仲は仕方ないにしても、賢子の件がバレたらと思うと震えが止まらない。ホラーだよ。以前よりもむしろ闘争心がパワーアップしている明子もいるんだよ……。そう、怖いのは倫子より、明子。

ホラーと言えば、彰子の出産シーン。ひどく粘着質な物の怪がとりついていた。誰?道隆? それとも、伊周の懲りない呪詛のせいか。目が爛々としているときの三浦翔平くんは輝いている(笑)。君がどんなにもがいても、今の彰子に影響を及ぼすことは難しいと、誰か伊周に教えてあげてほしい。出産後の彰子は好きな空色を身に纏い、自信に満ちている。彼女ならきっと大丈夫だ。

今回、久しぶりに清少納言が登場。伊周が定子にした仕打ちを知っているのに、なぜ彼女は伊周と交流を続けるのだろう。ほかに悲しみを分かち合える人間がいないからなのか。彼女の『源氏物語』の感想が気になるところ。

劇中、花山院が御隠れになったとナレーションで知らされる。本郷奏多くんの花山院、隆家のひゃっほー顔とセットで思い出される。お疲れさまでした。次回は、政治にもまひろとの関係にも波紋が広がる気配。どうする、道長。また成長した賢子が登場する。彰子の心を掴んだまひろが、自分の娘となるとうまくいかない。為時に溺愛されて育った賢子とのやり取りに、ヒリヒリしそうだ。


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