厳しい稽古
私から見たそこには、何かがすっぽ抜けたまま。
私は下手(したて)を取り続けながら、
叩きに行くほどでもない上手(うわて)を前に、
どうしてよいのかわからず、何もできない、
という取り組みが何度かあった。
相手によっては、抑圧し過ぎたまま立っている相手、
拒絶だけで立ち続ける相手、完全に停止してる相手、
それを前にして、何も求めていない事が感じられ、
指摘する気もなくなった時が何度もある。
稽古に来ていながら何も言わないでくれ、というのだ。
私から意見するような事はどんどん減っていった。
剣を持ち、進んでいく。
見たまま、振り下ろす。
いや、振り下ろす、が起こっている。
相手が顔をそむければ、そむけたその隙間に剣が入っていく。
そのうち、剣を振り上げること自体が馬鹿らしくなってきた。
でも持ってはいるのでそのままにして、
振るよりも早く動ける身体で入っていく。
勝手に剣は相手の喉元を突く。突く。
何やってんの、と、剣が勝手に喉元を突き刺していく。
稽古は、とても厳しいと思う。
でも厳しくなかったら、稽古じゃないとも思う。
2018/2/12 久保 真礼