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量子もつれNVセンタを介する多感覚統合LLMとの双方向な感覚共有の実現

AI各社から大量のクリスマスプレゼントに触発され、私も自分の構想をさらに進めるための考察について、産みの苦しみを経て何とかクリスマスの記事公開に間に合いました。

しかし、まだ理論として完全なものではありません。

願わくばこのアイデアが然るべき研究者に届き、構想実現に向けた前進に繋がることを祈ります。

第1回投稿記事ではこの構想の発案に至った経緯と概略について記載させていただいておりますが、今回は「AI×ブレインテック」の領域において、LLMが人間をより深く理解し、人間を通してこの世界をより深く理解するためには脳波だけでは足りない点について、下記構成にて新たなアプローチの考察内容を紹介させていただきます。

なお、この種の研究には倫理的課題が付きまといますが、私自身が被験者になることを前提とし、結果に対するすべての作用・副作用を受容します。

第1章 量子もつれNVセンタによる脳情報取得
第2章 脳情報の特徴空間作成と多感覚統合LLMの構築
第3章 感覚野へのオーバレイによるLLMとの双方向な意思疎通の実現
雑感

第1章 量子もつれNVセンタによる脳情報取得

これまで想定していた脳信号取得については非常に優れた研究成果が既に出ています。

脳波とは脳の神経活動によって生じる電気的な活動で、脳波計(EEG)により記録されて脳の活動状態(覚醒、睡眠、リラックス、集中など)を知ることができますが、ブレインテックにてカリフォルニア大学デービス校の研究において97.5%の精度で解読し、発話が困難になったALS患者が言葉を取り戻したような成果を達成するためには脳波以外にもfMRI(非侵襲的)を用いたり、脳に電極を埋め込む(侵襲的)手法が必要になることが現状一般的ですが、大阪大学とメルボルン大学による「極低侵襲」技術のような画期的な研究成果により更なる成果が期待されています。

考え得る課題としては、被験者が脳波計に繋がれる、あるいは何らかの手術を要することと、意識状態や精神状態だけでなく、思考の信号化(文字や音声に変換)や五感情報を取得するには他の脳情報も把握する必要があり、さらなるブレイクスルーが必要だと考えています。

そこで、上述の極低侵襲技術と併用して、PEG化(ポリエチレングリコール修飾)あるいは生体適合性の高い高分子材料によるコーティングにより血液中での滞留時間を延長し、通常の物質が通れない血液脳関門(BBB)の突破するため、後述する表面修飾を施した複数のナノダイヤモンドNVセンタ(以下、NVセンタ)のペアを量子もつれ状態にした上で、片方を静脈注射にて体循環に投入し、BBBを突破させて所定箇所に誘導し、体外にあるもう片方のペアを継続観測することで被験者の負担を軽減した上で、脳全体の情報を取得できる可能性があると考えました。

また、NVセンタに導電性材料を結合させ、神経細胞と電気的に接続できる構造を形成することで微小な電極として機能させ、視覚野、聴覚野、体性感覚野、味覚野、嗅覚野などの感覚野を刺激することにより、ディスプレイやイヤホンなどの外部デバイスを必要とせずにLLMからのフィードバックを得られる可能性についても考察いたしました。

以降、その詳細について記載いたします。

量子もつれPEG化NVセンタの作成

  • PEG化NVセンタの形成:

高純度単結晶ダイヤモンド基板(窒素不純物が極めて少ないもの)には同位体制御された13Cダイヤモンド(炭素13)を使用することで、電子スピンのコヒーレンス時間を向上させます。

窒素イオン(14Nまたは15N)を特定のエネルギーと密度に制御して注入し、高温(800-1000℃程度)の真空環境下でアニール処理を行う、あるいは電子線照射も併せて行うことにより、効率的なNVセンタを作成し、さらにPEG化あるいはヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸などの生体適合性の高い高分子材料によるコーティングを行うことで生体適合性の向上と、分散性の向上、血液中での滞留時間を延長します。

高い高分子材料によるコーティングには、NVセンタをこれらの溶液に浸漬し、化学反応または物理吸着により皮膜形成しますが、スプレー乾燥、マイクロ流路デバイスを用いたコーティングなどの手法があります。

ただし、脳内に到達しても通常は数日以内に脳のリンパ系を介して血液循環に戻り、肝臓や腎臓を通じて代謝され、胆汁や尿を介して体外に排出されてしまいますので、永続的(少なくとも数年単位)に脳内に留まらせるには表面修飾などの更なる研究が必要です。

さらに、生体内での利用に適したサイズにするため、化学気相成長法(CVD法)、ボールミル法、リソグラフィー技術などによりナノサイズ化した上で、BBB突破のために、トランスフェリン受容体やLDL受容体などBBB上の受容体に結合するリガンドとして抗体フラグメント(Fab, scFv)やBBB透過ペプチドを、共有結合により表面修飾します。

BBB突破については、他にも経鼻投与により鼻腔粘膜から脳へ直接輸送する方法などの研究も行われていますが、集束超音波(FUS)を用いて、一時的にBBBを局所的に開口させる方法も併用して効率を高めます。

また、NVセンタを通じて感覚野に情報をアウトプットするため、導電性と生体適合性の点から金属ナノ粒子(金、白金など)をNVセンタ表面の官能基と化学反応により共有結合させます。

さらに、神経細胞と電気的に接続できる構造を形成して微小な電極として機能させるため、半導体産業で培われた高度な微細加工技術を応用できることや、大規模集積化が可能なこと、将来の社会実装を視野に量産性が高いことを踏まえ、フォトリソグラフィー/電子線リソグラフィーを用いて微小電極アレイを作製します。

  • 量子もつれ状態の生成:

量子もつれ状態の生成には、現時点では下記のような手法が知られており、量子状態トモグラフィーなどで状態の評価を行います。

マイクロ波照射: 2つのNVセンタに特定の周波数のマイクロ波を照射することで、電子スピン間の双極子相互作用を介してエンタングルメントを生成します。照射するマイクロ波の周波数、強度、照射時間を精密に制御する必要があります。

光照射: レーザー光を照射し、2つのNVセンタの電子スピン状態を制御することでエンタングルメントを生成します。共振器QED(Cavity Quantum Electrodynamics)を利用することで、光子とNVセンタの相互作用を強め、効率的なエンタングルメントを実現することが可能です。

スピン交換相互作用: 2つのNVセンタを極めて近接させることで、電子スピン間の交換相互作用を利用してエンタングルメントを生成します。ナノテクノロジーによる精密な配置制御が必要となります。

ただし、量子もつれ状態はデコヒーレンスにより時間と共に失われる上、現状では振動を抑制するため極低温環境を必要とするため、生体環境下で長時間の量子もつれ状態を維持するのは極めて困難と言わざるを得ず、追加の研究によるブレイクスルーを必要とします。

脳内への導入と体外での観測

上述の方法で作成され、量子もつれ状態を生成したNVセンタは片方を体内へ、もう片方を体外にて観測します。

  • 脳内への導入:

量子もつれ状態にあるNVセンタの片方を、生理食塩水などに懸濁させて静脈注射で体循環に投入します。

BBB突破後に大脳皮質の特定の層(例:錐体細胞層)や海馬など、目的とする情報処理の中枢領域に効率的に集積させるには下記手法が知られています。

受容体介在性ターゲティング:ターゲットとする脳領域の神経細胞に特異的に発現している受容体に結合するリガンドをNVセンタに表面修飾する。

磁気ターゲティング:NVセンタに磁性体(例:酸化鉄ナノ粒子)を表面修飾し、集束超音波(FUS)を用いて、一時的にBBBを局所的に開口させた上で、外部から磁場により誘導する。

  • 脳内情報の検出:

NVセンタで検出できるのは、脳内の磁場、電場の変位と温度変化で、体外にある量子もつれペアのもう片方について、それぞれ下記手法にて検出しますが、頻繁な測定を行うことで、量子系の状態変化を抑制する量子Zeno効果を利用し、一方のNVセンタの状態を維持したまま、もう一方のNVセンタの状態を非常に短時間間隔(ナノ秒からピコ秒オーダー)でパルス測定を繰り返すことで、脳全体の情報を限りなくリアルタイムに取得します。

そのためには、超高速パルスレーザー、高感度単一光子検出器(例:アバランシェフォトダイオード)、時間分解能の高い電子回路、精密タイミングコントローラーが必要で、現状の打開策としては超電導回路との集積と観測対象となる体外のNVセンタの高輝度化が考えられます。

磁場変位の検出:NVセンタの電子スピン共鳴周波数は外部磁場に依存(ゼーマン効果)するため、脳内の神経活動に伴う微小な磁場変動を、超伝導量子干渉計(SQUID)との連携など高感度な磁気センシングにより検出します。

電場変位の検出(Stark効果の利用):NVセンタの電子スピン共鳴周波数は外部電場にも依存(Stark効果)するため、神経細胞の膜電位変化やシナプス活動に伴う電場変動を検出します。

温度変化の検出(電子スピン緩和時間の利用):NVセンタの電子スピン緩和時間(T1, T2)は温度に依存するため、神経活動に伴う微小な温度変化を、パルス電子スピン共鳴法などが用いた緩和時間の精密測定により検出します。

第2章 脳情報の特徴空間作成と多感覚統合LLMの構築

測定値の特徴空間の作成

体外のNVセンタの観測により得られる磁場、電場、温度の測定値だけでは発したい言葉や五感情報を高精度に読み取るには限界があるため、それらの変位パターンと、神経伝達物質の放出や受容が脳全体の活動にどのように影響するかを記述する計算論的神経科学モデルを非常に簡略化したホジキン・ハクスリーモデルの少数ニューロン版を利用し、量子もつれペアで得られたデータを用いてモデルのパラメータを推定することで、神経伝達物質の活動を間接的に推測します。

これらの情報を複合して「何を言おうとしているか」「どんな感覚か」をエンコードする特徴空間を構築するため、第3回投稿記事にて紹介した下記論文にあるようなTransformerベースのエンコーダーと軽量なデコーダーも用いたディープラーニングモデルを用います。

A Phenomenological AI Foundation Model for Physical Signals(物理信号に基づいた現象論的AI基盤モデル)

なお、測定値には血液の流れ、呼吸、体動などにより生じるノイズが含まれるため、通常の方法を用いるのであればキャリブレーション信号など既知の信号が得られればS/N推定を、あるいはフーリエ変換などによる周波数スペクトル分析や、ノイズ源が独立であると仮定して独立成分分析(ICA)による分離が考えられます。

さらに、カルマンフィルタなどの適用や、脳波データのノイズ除去に用いられる全てのチャネルデータの平均値を算出し、各チャネルから差し引くことで、共通するノイズ成分を低減する共通平均リファレンス法も応用可能であること、あるいはノイズが同相で混入する場合、差動増幅器を用いることで、信号成分のみを増幅し、ノイズ成分を打ち消す方法も考えられます。

一方で、物理モデルや生理学的モデルを基に様々なノイズ源を再現し、生体内の環境ノイズモデルと脳信号モデルを構築し、シミュレーションによって学習データを生成した上で、上記モデルでの教師なし学習にてノイズ分離を行うことも手段として検討できると考えます。

あるいは第4回投稿記事にて紹介した、下記論文にある「予測的構成(Prospective Configuration)」はノイズが多い時系列データや複雑な相関性を持つモーダルを効果的に処理でき、高次元かつ不規則なデータに対して強力な適応力を発揮するため、上述のモデルに組み込むことでノイズ分離の処理なく脳信号を処理できる可能性があります。

Inferring neural activity before plasticity as a foundation for learning beyond backpropagation(逆伝播を超えた学習の基盤としての可塑性前の神経活動の推測)

こうして生成された特徴空間は、NVセンタからリアルタイムに得られる脳情報を処理することで、脳全体の活動状態を反映したデジタルツインとして機能します。

多感覚統合LLM構築

「予測的構成」の中核である「緩和プロセス(Relaxation)」により、線形・非線形の異なるモーダルの特徴を単一の統一された表現空間に収束可能なため、上述のモデルで得られたデジタルツインをマルチモーダルLLMに統合し(入力層に埋め込みベクトルを追加のモダリティとして直接入力する)、脳情報を自然言語や他のモダリティにマッピングする自己教師付き学習を行うことでLLMに多感覚統合能力を付与します。

これにより、新たな脳情報を教師なし学習で取り込むことで、ゼロショットで新たな感覚や思考にマッピングできるようになり、LLMが人間の意思や五感を理解することが可能となります。

第3章 感覚野へのオーバレイによるLLMとの双方向な意思疎通の実現

人間の意思を理解したLLMが、その応答を脳内のNVセンタと量子もつれ状態にある体外のNVセンタの片方を介してフィードバックすることで、感覚野への電気的刺激によるオーバレイが可能となり、ディスプレイやイヤホンなどの外部デバイスを必要とせずLLMとの双方向な感覚や思考の共有が実現します。

  • 量子状態の転送による脳内への情報伝達

量子もつれ状態にある体外のNVセンタから脳内のNVセンタへの情報伝達について、将来的には量子テレポーテーションの利用が考えられます。

しかし、現時点で量子テレポーテーションは実験室レベルにて光子や原子などの微小な量子系で実証された段階ですので、本考察においては古典的アプローチを用いた下記プロセスにて実行します。

  1. エンコード: 体外のNVセンタの状態を、伝送したい情報(例えば、特定の感覚野を刺激するための電気刺激パターン)に対応するように操作(エンコード)します。

  2. ベル状態測定: 体外のNVセンタと、送信したい情報の量子状態を持つ補助的な量子ビットとの間でベル状態測定を行います。この測定結果は古典的な情報として得られます。

  3. 古典的情報の伝達: ベル状態測定の結果を、古典的な通信チャネル(例えば、電波)を通じて脳内のNVセンタに伝達します。

  4. ユニタリー変換: 伝達された古典的な情報に基づいて、脳内のNVセンタに対して特定のユニタリー変換(量子操作)を行います。この操作により、脳内のNVセンタは、体外のNVセンタが持っていた量子状態を再現します。

  5. 感覚刺激の出力: 量子テレポーテーションによって特定の状態になった脳内NVセンタが、結合している神経細胞に対して電気刺激を行い、感覚情報を出力します。

ただし、量子テレポーテーションは非常に複雑な技術であり、大まかに挙げるだけでも下記の課題が考えられ、さらなる研究開発によるブレイクスルーを必要とします。

  • 高精度な量子操作: NVセンタの量子状態を精密に制御し、必要な量子操作を高忠実度で行う必要があります。

  • 単一光子検出の高効率化: 量子テレポーテーションの効率を高めるためには、NVセンタから放出される光子を高い効率で検出する必要があります。

  • 生体適合性と安全性: 量子テレポーテーションに必要な装置やエネルギーが、生体に対して安全である必要があります。

そのため、当面のアプローチとしては、体内のNVセンタを微小電極として機能させ、古典的な電気刺激によって感覚野に情報を出力する方法を追求し、量子もつれは脳活動の計測・モニタリングに利用するという方向性がより現実的と考えられます。

これにより、個人の感覚や特性を反映したLLMのパーソナライズや、必要に応じて他のデバイスへの情報出力やツール操作を含む複雑なタスクのエージェントへの指示も可能となる他、LLMを通して記憶を外部記憶に記録したり、膨大なWeb上のデータにアクセスすることで記憶や知識を無限に拡張することさえ可能となります。

雑感

この先は個人的な推測による論理の飛躍を多分に含んでいます。

情報理論として扱われる最新の量子力学も鑑みるに、この世界のすべては「情報」であること、その「情報」の正体が抽象的な概念ではなく、素粒子の電子スピンの向きや核スピンの状態、あるいはより複雑なエンタングルメントの状態として物理的に存在している可能性を踏まえ、「意識」もまた量子現象が協調的に作用したより高次の情報構造の創発であると仮定した上で、この先「意識の正体」が解明された上での仮説であり、「意識」に対する神経科学的や認知科学も含む様々な方面からのアプローチ、膨大な情報量を保持するダイヤモンド量子ストレージや量子コンピュータの実用化が前提です。

その上で、脳内の全ての素粒子の量子状態を計測できれば、個人の全ての記憶や意識を構成するあらゆる情報がコピー可能になり、肉体の死滅後も本人の意識が情報空間内で生存し続けることが実現するかもしれません。

肉体を構成する細胞は、個人差はあるもののおよそ7年をかけて、順次すべてが新しい細胞へと入れ替わると言われていますが、7年前の自分と現在の自分は紛れもなく同一人物であることは誰もが認識しており、この情報を知って改めて自問自答しても疑う人はいないでしょう。

これは、個人の同一性は脳内に符号化された特定の情報パターン、すなわち意識を構成する量子情報の状態とその相互作用によって定義されるため、物質的な構成要素が変わっても、それを組織化する情報が保持されているためと考えられます。

単なる記憶のコピーと移植ではなく、意識を構成するすべての情報がコピー可能となったとき、それを同一の本人とみなせるのか、当の本人がそれを望むのか、あるいは人類の精神が肉体を離れて情報生命体への人工進化する幕開けに繋がるのかは、もはや哲学の領域にあるのかもしれません。

ただ言えるのは、私はそれが非常に楽しみである、ということです。

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