【エッセイ】物語の予感。私が育った街についてのおぼえがき。
私を育てた街へ。
迷路のような街で
子どもの頃から、何かと空想をするのが好きだった。テレビに映しだされる異国の風景も、絵本に描かれる架空の世界も、すべて自分のものだった。目の前にある現実の世界より、頭の中にある空想の世界こそ、私にとってのリアルだった。
そんな内向的で夢見がち、とにかく引っ込み思案の私は、県内有数のとある住宅街で育った。県の中心部のベッドタウンとして発展したこの街は、かつては豊かな自然に囲まれたのどかな場所であったというが、私が生まれた時jはそこら中に画一