【5冊紹介】休職前後で出会うべくして出会った本。ひとりぼっちじゃない。
ふらっと入った本屋さんで衝動買いした本、楽天ブックスから届いたまま未開封の本、家の本棚には読んでいない本がまだまだあるし、買っていないけど気になる本もたくさんある。
この命が続く限り、読みたい本が尽きないというのは贅沢な悩みのようで、ある種の絶望すら感じる。時間もお金もすべて費やしたとしても、この世のすべての本を読み切ることはできない。
だからこそ、惹かれる本との出会いを蔑ろにしたくない。なんとなく気になってブックマークしたり、スクショしたり、書店で写真を撮ったり、でもそのまま読まずに(買わないまま)数年経った本がどれだけあることか。
「ビビビッ…!!」ときた瞬間に、通りすがりの一目惚れで終わることなく、自分の“もの”にしなきゃいけない。自分の“もの”にしたら、放置でもいいと思うの(よくない)。本棚じゃなくて枕元に置いておくから許して?私の“もの”に変わりないもんね?積読の言い訳に独占欲を持ち出す茶番にお付き合いいただき、ありがとうございます(笑)。
前段はここまでにして、休職に入るちょっと前と、入った後に読んだ5冊の本を紹介します!このタイミングで出会えて、ちゃんと最後まで読むことができて、よかった作品です。
死ぬまで生きる日記
紹介する5冊のうち唯一、休職前に読んだ本。「死ぬまで生きる」という当たり前のようで当たり前じゃない、「死」を意識したことのある人間にしか伝わらない感覚のタイトルに一目惚れした。装丁も可愛いくて好き。
読後感として強く残ったのは、「ひとりぼっちじゃない」感覚だった。「わかる」なんて、たった3文字の言葉で容易く共感するのはとても烏滸がましい行為なのかもしれない。でも、最初から最後まで土門蘭さんが紡ぐ“なま”の言葉がとても心地よくて、浸透力の高い栄養ドリンクみたいだった。心の奥まで沁み渡る感覚があった。
感情のゆらぎ、感じ取ること、思考の巡り方など、目には見えない抽象的なものをとても丁寧に言葉にしてくださっていて、読みながら内省しているような感じで、過去の自分も救われた気がした。その場しのぎの肯定の言葉じゃなくて、同じような感性を持った人の生き様が知りたかったのかもしれない。本書にも出てくるように、私自身の「お守り」にもなったし、生き続けるためのひだまりのような温かさを感じた。
各章の終わりに紹介されている本も、読んでみたい。
鬱の本
大型書店の中でも新宿のブックファーストが好きで、上京してからずっとお世話になっている。直感を頼りに本を選びたいときは大型書店を重宝していて、おばあちゃんのように両手を腰あたりで組んで、本棚の端から端までをただひたすらに眺める。偶然の出会いが楽しくて、ジャケ(装丁)書いもあるし、書店員さん直筆のポップの言葉に惹かれることもある。
気になった本のすべてをその日に買うわけじゃないけど、『鬱の本』だけはどうしてもいま読むべきだと思った。装丁に描かれている様々な「かたち」のクッキーで作られた顔みたいな絵に、目を奪われた。帯にあるように、84人それぞれの人生を物語っているみたい。
鬱病の話だけではなく、人それぞれに感じる「憂鬱」な気持ちが綴られている。本の紹介も一緒にしてくれる。84人の自身の物語と、84人が紹介する本がぎゅっと詰め込まれている。贅沢すぎない?味わったことのある感情が呼び起されて、追体験をしているような、寄り添ってくれるような。
見開きページで一人ずつのエピソードが完結しているから、必ずしも最初から読む必要はないし、ランダムにめくる読み方も楽しそう。これから先も何度も読みたくなるような大切な一冊に出会えた。
エッセイストのように生きる
今年の3月に描いたキャリアマップに、「追体験を届けるエッセイスト」という言葉を書いた。肩書きとしてしっくりきていないものの、(職業ではなく)「エッセイスト」という言葉を選び、感情や感覚を忘れたくないと願う私にとって、本書との出会いは必然だったように思う。
職業ではなく「生き方」として、エッセイストをおすすめしてくださるところがポイント。「感覚的に」生きていることを肯定されたような気持ちになった。自分が感じたことにもっと素直になりたい。
無意識に取り入れていたこともある一方で、生き方全般を見つめ直すにはいい機会になったし、実践できることも増やしていきたい。(職業的な観点は置いておいたとして)ここnoteの場では、自分なりにエッセイを書き続けたいとも思った。
自分とか、ないから。
SNSで見かけて気になっていた本。休職中でただただ時間はある一方で、答えのない悩みをぐるぐる考え続けている。そういう人間にとって、確実に救いになる本だった。しんめいPさんの文体のテンションも好きで、とても読みやすい。
ブッダが最初の章に登場するんだけど、そういえば高校生か大学生の頃に、『超訳 ブッダの言葉』を買って読んだ記憶がある。ニーチェもそうだけど、当時この分厚い本のシリーズにハマっていた(さすがに読了しているはずだけど、あまり覚えていない)。余談でした。
本書で初めて知った龍樹の「空(くう)」の哲学が、個人的には好みだった。「この世界はことばの虚構から生じている」という部分がグサグサに心に刺さった。言葉ありきでモノの見方が変わるということ。数多の言葉に救われてきた一方で、言葉の持つ力に振り回されているのも否めない。必死に言語化しているいま、皮肉な話なのだけれども(笑)。
「空っぽ」という言葉も登場して、そのタイミングで考えていた「空白」について書いたnoteも貼っておきます👇キャリブレイク中じゃなかったらピンと来なかったかもしれない。
悲しみの秘義
直接お話した方に、おすすめしていただいた一冊。自分では辿り着かなかったと思うから、本当にありがたい。楽天ブックスで爆買いしたほかの本と一緒に3月末には届いていたのに、なかなか読むことができなかった。「悲しみ」に触れる心持ちではなかったんだと思う。
休職してしばらく経って、すでに紹介した4冊の本も読み進めたり、読み終わったりしていて、次に読み始める本を選んでいるときにふと目に留まった。帯には「もう死にたいと思った時に読む本」と書かれていた。決して強烈な希死念慮ではなかったが、鬱々とした靄がうっすらと覆っていて、手探り状態だった。
「ちょうど三十歳になったころだった」から始まる“はじめに”が、数ヵ月後に30歳を迎える私をより一層引き寄せた。「かなしみ」が、「哀しみ」だけでなく、「愛しみ」や「美しみ」も内包していく様から、一言では表しきれない温もりを感じることができた。一方通行の肯定というより、全方位からまるっと包み込んでくれるような。様々な本や詩集などから引用される言葉も、人間の本質に触れていたように思う。
私は、エッセイが好きだ(大声)
ああ、やっぱりエッセイが好きだなと思った。この前のツイートがすべてかもしれない👇
エッセイに救われているからこそ、私も「ひとりごと」だとしてもnoteを書いていきたいのかも。こんな人間がいるって、ひとりぼっちじゃないって思ってもらえる可能性があるのなら、幸せなことだ。
最後に
5冊とも出会うべくして出会った本だった。読むべきタイミングだった。いまの私にとって、大事な言葉がたくさん書かれていた。
元々の読書スタイルは、最後まで一気読みだったんだけど、エッセイは併読でも読めることがわかった。長編小説は没頭したまま、その世界に浸りたいんだけどね。最近は、枕元に複数の本を置いていて、起きた後も寝る前もごろごろしながら読んでいる。
実は、紹介した5冊以外にも本は読んでいて、その中の1冊、大好きなカツセさんの新作『ブルーマリッジ』の読書感想文も書いたので、ぜひ読んでみてください!「無自覚の加害」について解像度高く描かれた作品で、全人類に読んでほしい一冊です。必然的に自分の過去を顧みる機会になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!