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わたしが書いたお話

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わたしがこれまでに書いた小説をまとめています。
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#小説

短編小説『心が踊ればダンスだろ』の脚注

短編小説『心が踊ればダンスだろ』の脚注

こんにちは両目洞窟人間です。
先日、短編小説『心が踊ればダンスだろ』を公開しました。

劇中、たくさんの音楽や固有名詞が出てきます。
それを知らなくても読めるとは思うのですが、知っていればなお楽しくなる(といいなあ…)と思ったので、それぞれの脚注を書いていこうと思います。
ロロって劇団がいて、めっちゃ固有名詞が出てくる舞台をやったあとに、その舞台の脚注を終わってから配るってのをやってたんですね。

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短編小説『心が踊ればダンスだろ』

短編小説『心が踊ればダンスだろ』

「心が踊ればダンスだろ」って誰の言葉だったっけ?
 急に頭に過ぎったのだ。
 心が踊ればダンスだろ。
 えー、誰の言葉だったっけ。
 私は目の前にいる、大学時代からの友人ほんちゃんにそれを聞こうとすると、ほんちゃんは「きみちゃんさー今度、フェス行かへん?」と言う。
「えー私ら、もうアラサーやから、そんなんフェスとかしんどいんちゃうの」って私は言う。
「でも、今が残りの人生で一番若いときなんだよー。

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両目洞窟人間自選小説集(2024年版)

両目洞窟人間自選小説集(2024年版)

こんにちは、両目洞窟人間です。
2017年から小説を趣味で書いています。
なんだかんだで70作品くらい書きました。
良いのもあれば悪いのもありますけども、70作品ある中からそれを見つけてもらうのは難しいので、自選小説集を書きたいと思います。
自選集は2021年にも書いていますが、その最新版ということで、2021年~2024年に書いたものから選んでおります。
基本的には短編なので、どれもさくっと読め

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短編小説『リヨン25を飛べ』(加筆修正版)

短編小説『リヨン25を飛べ』(加筆修正版)

『リヨン25を飛べ』
 
*この物語は事実を元にしたフィクションである。
 
 アーロン・ホモキは深呼吸をした。そして途切れた道の先を見据えた。それは長さ6.7メートル、高さ4.49メートルの25段の階段。リヨン25。フランスのリヨンにあるスケートボード界で最も伝説的な階段。アーロンはリヨン25をスケートボードで飛ぼうとしていた。
 
 リヨン25をオーリー(ボードと一緒にジャンプをする技)で飛ぶ

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『夕焼けパラレル団地城』試し読み

『夕焼けパラレル団地城』試し読み

こんにちは。両目洞窟人間です。
文学フリマ大阪12で発表し、現在boothの両目洞窟人間ページにて販売中の中編小説『夕焼けパラレル団地城』ってのがあるんですけど「買ってくれ買ってくれ読んでくれ読んでくれ」って言う割には、試し読みのページを作ってなかったことに気が付きまして、この度、「第一章 たまたまニュータウン」から「第二章 ミス・パラレルワールド」の中盤まで公開することにしました。(ちょっと前ま

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YEAHHHHH!!!!!!

YEAHHHHH!!!!!!

 デデッ!!!と爆音のギターが鳴り響きました。二本足で立ち、喋ることができる白ねこのまち子さんは「ブンブンサテライツの『キック・イット・アウト』だにゃ~」と思いました。それは外から聞こえてきました。まち子さんはベランダに出て、団地9棟5階の高さから視界いっぱいに立ち並ぶ団地を眺め、それがどこから聞こえてくるのか、耳をすましました。
 デデッ!!!
 わかりました。団地の公園近くにある集会所からでし

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短編小説『すなぎもちゃん・スマッシュ・ヒッツ』 

短編小説『すなぎもちゃん・スマッシュ・ヒッツ』 

『すなぎもちゃん・スマッシュ・ヒッツ』

 僕はすなぎもちゃんと暮らしていた。
 すなぎもちゃんは白ねこで、当たり前のように喋って、二足歩行で歩き、僕の家、廣井家で家族のように暮らしていた。
 すなぎもちゃんを飼った覚えはない。
 ある日、すなぎもちゃんは突然やってきて、いつからか当たり前のように居候していたのだ。
「パパさん、お仕事お疲れ様ですにゃ。ママさん、ご飯美味しいですにゃ」すなぎもちゃん

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短編小説『ねこのまち子さん、フレンチクルーラーを食べる!!』

短編小説『ねこのまち子さん、フレンチクルーラーを食べる!!』

「今日はよろしく頼むにゃ」
 自由猫猫党(じゆうにゃんにゃんとう)の元党首は我々取材陣と握手をしながらそう言った。
 元党首の笑顔と肉球の柔らかさが印象的であった。
 元党首が一人がけのソファーに座る。
 スタッフが照明を元党首に向けると、元党首は「眩しいもんだにゃ。いくらやってもこういうテレビの取材には驚いてしまうにゃ」と静かに言った。
 私の手には元党首に聞きたいメモが握られていた。
 自由猫

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短編小説『ちゃん呪』

短編小説『ちゃん呪』

『ちゃん呪』

「じんちゃ~ん!この駅でぇ~写真撮るとぉー、幽霊がうつりこむって話にゃよ~!!」と酔った友達でねこのきいちゃんが呂律回らずにそう言うので、私はうへうへ笑いながら「じゃあ、撮ってみようよ~!」ってiPhoneのインカメラできいちゃんと「いえーい!」って言ってたらきいちゃんが「あ、動画だったにゃー!」って言って「動画かーい!」って突っ込んでいたら、そんな私たちの背後に叫ぶ顔をしたような

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短編小説『ねこ太郎、現代の鬼と戦う』

短編小説『ねこ太郎、現代の鬼と戦う』

 最近、最近。京都は三条、鴨川河川敷で私が本を読んでいると、川上から大きめのギターケースが、どんぶらこどんぶらこと流れてきました。
「ギターケース流れてるやん」って思っていると、パカっとケースが開き、中からずぶ濡れのねこが出てきて「助けてにゃ〜助けてにゃ〜」と叫ぶのでした。
 私は「待ってろー今助けるぞー」と叫び、慌てて鴨川に突入しました。
 すると運のいいことに、ここ最近の日照りで水かさは低く、

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短編小説『デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ』

短編小説『デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ』

 バンドをやめた。
 正確には顧問と喧嘩してやめさせられた。
 軽音楽部の大会に出るためのバンドに入らされた私は嫌々コブクロばかり弾いて、あるとき、我慢の限界が到来して「私はバンドがやりたかったから軽音楽部に入ったんであって、軽音楽部の大会とか知らないですし、コブクロとかやりたくないんすけど」って言ったら「やる気の無いやつはいらないよ」って「あ、そうですか。」でやめた。
 そしたら軽音楽部での居場

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短編小説『終末のランチ~複眼豚のカツ丼編~』

短編小説『終末のランチ~複眼豚のカツ丼編~』

 ぐわんぐわんごうん。ぐわんぐわんごうん。
 月曜日から金曜日まで、朝から晩にかけて、巨大迷路型コンピューターで仕事をするのはとても大変なことでした。
 背骨さんは中央<システム>の末端職員なため、地図を片手に巨大迷路型コンピューターを文字通り右往左往し、バルブを締め、また右往左往し、バルブを緩め、そんな仕事をし続ける日々にすっかり疲れ果てていました。
 ぐわんぐわんごうん。ぐわんぐわんごうん。

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短編小説『心霊ビデオ』

短編小説『心霊ビデオ』

『心霊ビデオ』

 心霊ビデオってあるじゃないですか。ちゃんと見たことなくても夏の怖いテレビ番組で流れる映像とか、あと『ほんのろ』とか。
 あ、『ほんのろ』って『ほんとにあった!呪いのビデオ』の略のことなんですけども、あのタイトルで禍々しいジャケットでTSUTAYAやGEOの邦画ホラーのコーナーに並んでいるのを見たことはあると思います。多分、結構大勢いると思う。私も、結構、昔は映画を借りに行っては

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短編小説『失われたタンゴが聞こえてきたので』

短編小説『失われたタンゴが聞こえてきたので』

『失われたタンゴが聞こえてきたので』

 失われたタンゴが聞こえてきたので、私は通りを右に曲がった。
 軒先でレコードを七輪で炙っている女性がいた。レコードがはぜる音が失われたタンゴのメロディを奏でていた。
 女性は団扇を扇ぐと、七輪の火は強くなった。
 レコードはますます焼かれ、失われたタンゴは失った音色を取り戻していった。
「すいません。なんのレコードを焼いているのですか?」と私は言った。

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