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武田龍雄『物語スウェーデン史』読んだ
積読解消シリーズ。
10年以上積まれていた、、、
積みっぱなしだったが、ロシアやウクライナの歴史を学ぶならば、スウェーデンのこともある程度はわかってないとダメだなあと思って、本棚から取り出したのであった。
本書は、まずグスタフ・ヴァーサによるデンマークの独立から始まる。そしてその子供たちの継承争いとかあって、今も国民に最も愛される国王グスタフ・アドルフが登場する。
30年戦争の英雄とされるが、1632年に戦死している。ウエストファリアまであと16年、つまり30年戦争の半分も終わっていない時期に亡くなっている。その後の外交において上手く立ち回ったのが、アクセル・オクセンシェーナら忠臣たちであった。オクセンシェーナはストックホルムのアドルフの銅像に跪いている。
本書はたくさんの国王を取り上げるので、最も人気のあるグスタフ・アドルフですら扱いはあっさりとしている。
オクセンシェーナが次に仕えたのが、デカルトをストックホルムに招いて病死させたことで有名なクリスチーナ女王である。彼女は勝手にカトリックに改宗して、生涯独身宣言して、退位してイタリアに去ってしまった。。。
こういう感じでキャラの濃い王様達が紹介されていく。
最も重要なのは北方大戦争のカール12世だろうか。ピョートル大帝のもと急速に力をつけてきたロシアとの戦いである。1709年のポルタヴァの戦いの決定的な敗戦のイメージが強いが、ポーランドあたりでの緒戦は順調だった模様。そして勢いに乗って現在のウクライナのほうまで攻め込んだら、寒くて大変だったという、、、どこかで聞いたような話である。
カール12世とウクライナコサックの首長マゼッパの関係性についても軽く言及されている。いつか時間ができたら調べてみたい。
北方大戦争、ポルタヴァの戦いは、今やよく知られているように、ロシア・ウクライナの歴史に決定的な影響を残した。もちろんスウェーデンにとっても、バルト海の覇権、ひいては欧州列強の夢を諦める契機となった重要なイベントである。
このあとの半世紀ほどは自由の時代と呼ばれて、リンネとかスウェーデンボリとか、学芸が栄えた時代でもあった。
しかしその後の、フランスかぶれのグスタフ三世の時代は危機の連続であった。ロシアやプロイセンがポーランド分割したさいには蚊帳の外で、知らないところでスウェーデン分割を画策される始末であった。
なおこのフランスかぶれの王様に仕えたのが『ベルサイユのばら』で有名なアクセル・フォン・フェルゼンである。マリー・アントワネットとフェルゼンの大人の関係についてはいちおうスウェーデンの歴史家は否定的だが、著者は、それはフランスに対する配慮であって、あんがい本当だったのではないかと邪推している。
グスタフ三世は外交的手腕で危機を乗り切ったが、内患を一掃するには至らず、不名誉にも仮面舞踏会で暗殺されている。
なおフェルゼンもルイ16世夫妻に劣らないくらい悲惨な死に方をしているのは知らなかった。
この間にフィンランドをロシアに奪われたり、ナポレオン戦争が始まったりなどした。
フェルゼンは皇位継承にまつわる陰謀に巻き込まれて撲殺されたのだが、結局、ナポレオン麾下のベルナドット将軍が皇太子に迎えられることになる。
ベルナドットはカール・ヨハンと改名し、プロテスタントに改宗した。ナポレオンがロシア遠征に失敗したのち、反ナポレオン同盟軍を率いて、スウェーデン最後の戦争を指揮したのであった。
ナポレオン戦争を最後に、かつてのバルト大国の栄光を捨て、スウェーデンは現在まで永世中立国であり続けている。
また時代の流れとともに王権は衰退していくが、ベルナドットの王朝はいまも存在感を示している。
19世紀のスウェーデンは貧しく、北米に多くの移民を出している。しかし、他の西欧諸国よりは遅れてだが、しかし日本やロシアよりは早く、林業や鉱業を中心に産業革命をなしとげる。
19世紀後半はアルフレッド・ノーベルを筆頭に、エリクソン、オングストローム、といった優れた科学者やエンジニアを輩出した。
個人的にはスウェーデンといえばイングマール・ベルイマンである。まあ息子のダニエルの『日曜日のピュ』が一番好きなスウェーデンの映画なのだが。
あとは卓球かな。ここ40年ほどで、ワルドナー、パーソン、アペルグレンのころのスウェーデン以外に、まともに中国と戦えた国はない。
永世中立国のスウェーデンだが、ウクライナ戦争のこともありNATOに加盟する流れですね。第二次大戦すらやり過ごしたスウェーデン、今後どうなるんでしょうね。
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