「町の書店を増やしたい」を考える 4-1. 本:本を読む必要はあるの?
前回までのお話・・・
1.増やしたいのか、減らなければいいのか
既存の書店と新しい書店(既存タイプも新しいタイプの書店どちらも)について考察しつつ、どちらも増えたらいいなというお話
2.増やしたいのは「誰?」「何のため?」
国や地域など社会全体のことを考えている人、出版業界で働く人、書店好き・本好きの消費者、の3つの視点に分けて考えました。ここから先は
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「国や地域など社会全体のことを考えている人」が
「国力や国民の幸福度を上げるために、文化の向上を図るため」
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という部分について話を進めます。
3.「書店は地域の文化拠点であるから守りたい」を段階的に考えていく
地域の文化拠点としての「書店」で、多くの人々が生活の一部として「本」を通じて知識や教養を高め人として成長することで、最終的には文化自体のさらなる向上と、成熟した幸せな社会が醸成されること が期待されている。
また、文化についてはBを中心に、必要に応じてAと切り分けながら考えを進めます。
A. 「学問・文学」、娯楽(狭義での文化)
B. 本という形で世代を通じて伝承していく人々の生活全て(広義での文化)
※このページは、思考を整理するための自分なりのノートです。勉強不足の部分や考察を別途深めたい部分も多いので、随時書き加えたりする予定です。このノートが、書店を増やすための具体的な活動を考えている人の参考になれば幸いです。
4-1.本:本を読む必要はあるの?
国や地域など社会全体のことを考える視点から
成熟した幸せな社会が醸成されることを最終目的に
↑
文化の向上を図る
↑
地域の文化拠点としての「書店」で、多くの人々が生活の一部として
「本」を通じて知識や教養を高め、人として成長する
↑
そのために書店を減らしてはならない。
それでは、誰がどんな本をどんな風に読めばいいのでしょうか?
(1)そもそも本を読む必要はあるのか?
知識や教養を高め、人として成長するために読書は必要でしょうか?
実は必要ないかもしれませんね?その可能性も考えてみましょう。
「知識や教養を高め、人として成長すること」は、様々な実体験や様々な人との交流からもできます。むしろ読書からだけでは得られない成長もあります。また、より知識や教養の取得にフォーカスした、内省的で個人的な方法としては、インターネットやラジオ・テレビ・レッスンやセミナーといった本以外の媒体もあります。
では、読書でなくては得られないものは、いったい何なのでしょうか。
「読書から得られる効果・メリット」と検索するとたくさん出てきます。
以下のサイトを参考にしました。
https://gakkenonair.gakken.jp/column/reading-book-effect/#
読書とは何か?メリット・効果や読書法について徹底解説 - 株式会社アマノート (amanaut.co.jp)
読書で得られる8つの効果とは?読書効果を最大限に引き出すコツを伝授 | 株式会社 瞬読 (syundoku.jp)
本を読むといいことだらけ!驚くべき、読書のメリットと効果9選 - ブックオフオンラインコラム (bookoffonline.co.jp)
メリットだらけ! 読書による14の効果 (flierinc.com)
読書にはどんな効果がある? メリットや効果的な読み方・習慣化させる方法 | Domani (shogakukan.co.jp)
【読書の効果とメリット】知識の増加からストレス軽減まで | 読書のいろは (book-iroha.com)
私なりにまとめますと以下のようになります。
知識や教養が身につき、語彙力が豊かになる。
読書を通じて情報収集が行われ、視野が広がる。
想像力が豊かになり、創造力が養われる。
アイデアを得ることができ、多様な話題に対応できる。
会話力や文章力が向上し、コミュニケーション能力も高まる。
仕事力向上につながり、成功の確率を高める可能性もある。
ストレスが解消され、リラックス効果がある。
老化防止や病気の予防、読書療法(ビブリオセラピー)を期待できる。
「知識や教養を高め、人として成長すること」
という観点から見ても、読書は必要。少なくても重要な役割を果たしているようです。(ちなみに、1~3は自己研鑽、4~6は社会との交流、7~8は心身の健康に関すること)
もちろん、書店で本を選んで購入する一連の流れや、手元に置いておくこと自体も幸せであり、文化的活動という側面もあると思いますが、「知識や教養を高め、人として成長すること」という観点からは、なるべく読んだ方が良さそうです。
追記:読書自体が幸福につながるについて、先行研究があるようです。
(2)良書じゃなきゃだめ?
どんな本でも知識や教養が高まり、文化が向上するのか?
高尚な本でないと読む価値はないのか?
世の中には、下世話な本、低俗な本、眉唾な本、倫理的道徳的に悪そうな本もたくさんあります。他にも、内容が薄っぺらすぎるとか、思想が偏り過ぎている、間違った情報が入っているなど色々考えられます。
確かに玉石混合なのです。
総務省統計局のデータを見てもここ4年の平均書籍新刊点数は7万点弱/年。
1カ月で約5800点もの新刊が出ています。
統計局ホームページ/日本の統計 2024-第26章 文化 (stat.go.jp)
インターネットの情報に比べれば、複数の人のチェックを受けて出版されるため、一定の質を確保している可能性が高いわけですが、それでも玉石混合であることは間違いないでしょう。
出版のハードルが高いのか低いのか。もしかしたらもう少し篩に掛けた方がいいのか。そこらへんの話も、海外の出版システムと絡めながら別途考察していきたいところですが、ひとまず話を先に進めます。
この玉石混合の中で、自分にとっての良書を選び抜く力、取捨選択する力を養うこと。読んだうえで色々な価値観、考え方、切り口に触れ、多様性を認め、自分の考え方を持っていくこと。それこそが「本」を通じて知識や教養を高め人として成長するということのひとつなのかもしれません。
もちろん質の良い本も、読んだ方がいいのでしょう。
古典や名作、誰かの太鼓判になっている本と言われる本や話題になっている本。でも、そうでない本を読んだとしても、それはちゃんと人として成長する糧になっているように思います。
たまに、「名作を読んでないなんて大したことないやつだ」「話題のあの本も読んでないなんて」「くだらない本ばかり読んでる」など人の読書を自分の物差しで勝手に見下している発言を見かけることがあります。
でも、それは読書を通じて多様性を認めることを学びきれていないことを自ら露呈しているだけなので、気にしてはいけません。人の読書を笑うな、です。
ちなみに、どうやって良書に出会えるのか。
良書の定義も色々と考えられますが、良書と出会う方法としては、結局人の評価・オススメによるところが大きいように思います。
名作と言われて現在にも残っている本は、これまでの時代の中でたくさんの人たちが評価して残ってきた可能性が高い本です。
また、高名な人や尊敬している人が評価している本も良い本の可能性が高いです。自分のことをよく知っている人がお勧めしてくれた本も良書の可能性が高そうですね。尊敬していてかつ、その人が自分のことをよく分かってくれてオススメしてくれたのなら最強かもしれません。
書店のオススメコーナーに取り上げられている本も、書店スタッフが良書と判断して並んでいる可能性が高いです。
もちろん、これらは全て可能性の話です。そうじゃないケースももちろんあると思いますが、良書と出会う可能性を高めるにはこうした部分を参考にすることが多いのではないでしょうか。
ひるがえって、自分が本を薦める立場になる場合は、この玉石混合の中から特にその人の人生が豊かになりそうな本を薦めていきたいものです。(書店による選書サービス、本屋大賞、文学賞、テレビや新聞、雑誌などでの紹介、読書好きさんによるお薦め本紹介、先生から生徒へなど、「本を紹介する」行為もいろいろありますね)
(3)買いさえすれば読まなくてもいい?
書店の目先の売上のことだけを考えれば、実は買ってもらいさえすれば、その後読まなくてもいいとも言えます。
また、本の楽しみ方は人それぞれなので、積読や飾るためなどの購入理由も立派な購入理由だと思います。本棚にその本があるだけで心が落ち着くとか、表紙が素敵すぎて飾りたいとか(それはそれでとても共感できます)。
けれど、「文化の向上」や「知識や教養を高め、人として成長すること」という今回の文脈からすれば、読んだ方がいいという結論になります。
(4)読みさえすれば買わなくてもいい?(買うvs借りる)
たとえば、図書館で借りて読書するのも「文化の向上」や「知識や教養を高め、人として成長すること」に繋がります。
あえて、書店で買わなくてもいいのかもしれません。これは、次の項目
5.書店 において詳しく考えてみます。
次回予告
4-2.本:どんな風に読めばいいの?
(1)紙の本 or 電子書籍(何で読むのか。媒体の話)
(2)一人で読む or 他の人と交流しながら読む
4-3.本:読書離れについて考える
(1)読書率の変化ー子供(小中高)ー
(2)読書率の変化ー大学生以上ー
(3)読書離れの理由