暗記に逃げるな! 論理で考えろ!
アウトライン
① 著者(新井紀子さん)の紹介
② 本の結論
③ 本の要点
1.人間がAIより優れている3つのポイント
2.わかりやすい授業はダメ!?その理由とは?
3.わかりにくいことを考える子どもの育て方とは?
④ 教師としての考え
⑤ 保護者としての考え
⑥ まとめ
⑦ 子育てハッピーアクション
① 著者(新井紀子さん)の紹介
国立情報学教育研究所教授であり、「ロボットは東大に入れるか」(東ロボくん)プロジェクトディレクターを務めた新井紀子さん。
前著「AI vs 教科書が読めない子どもたち」は大きな話題を読んだ。
「AIは意味を読み取ることが苦手だ。だから、A Iは人間には敵わない。ただし、子どもの読解力を調べてみたら子どもたちの読解力が驚くほど低くて、AIに負けるかもしれないから驚いた」という内容の前著書。
では、具体的にどのようにすれば「AIに負けない子どもに育つのか」という点を本書「AIに負けない子どもを育てる」では詳しく解説しています。ちなみに、この本は、公立の小学校教員なら全員が買って読むべきだと思います。日頃から意識していきたいことが満載です。それでは、簡単に紹介します。
②本の結論 「論理で考えること!暗記に逃げない!」
読解力があれば、自分で勝手に勉強できる。暗記に逃げずに意味がわかる子になる。AIは意味を考えるのが苦手なので、AIに負けない子ども→大人になる。
③ 本の要点
1.人間がAIより優れている3つのポイント
① 「意味がわかること」→これができないとAIに仕事を奪われるよ!
② 「欲求があること」→意欲がある子ども、挑戦する子どもに育てよう!
③ 「すぐに怠けること」→これは、笑うしかない。でも人間のいいところ!
2.わかりやすい授業はダメ!?その理由とは?
新井さんは、「わかりやすい授業ではダメ」だと言っています。
その事例として、富山県立山町の小中学生の学力を例にあげています。立山町では、小学校の学力テストの点数はよいが、中学校の学力をもっと伸ばしたいと考えていたそうです。新井さんは、自分で作成した読解力を判定するテスト、RST(リーディングスキルテスト)を小中学生に受けてもらいその結果を分析しました。
ちなみに、RSTはこの本に「体験版RST」が付いているので、ぜひやってみてください。結構難しいし、かなり疲れます。正しく読むことは大変だということを身をもって体験できます。
分析の結果、立山町の中学校1年生は、「定義を読んで、抽象的な概念を理解する力」と「論理的に考える力」に課題があることがわかりました。なぜ、そのような結果になったのかという理由が私には衝撃でした。
その理由は、「小学校の先生が、よかれと思ってキーワード穴埋めプリントやドリルを多用していた結果、考えずに暗記する子どもに育てていたから」だというのです。
つまり、小学校の段階で「暗記」に頼り、「論理」で考えない児童ばかりになってしまっていたため、中学校での伸びしろが少ないというわけです。
この本から私が学んだことの一つとして、
「わかりやすい教え方をしすぎるとダメ。わかりにくいことでも一生懸命考える子どもを育てないとダメ」
という点です。
昔は、地方の公立の高校から東大に入る生徒がたくさんいました。その理由は、「暗記」ではなく、「論理」で考えていたからです。「暗記」ばかりに逃げてしまうと、わかりやすく教える塾や家庭教師がどんどん増えます。塾に行ける子たちばかりが優秀な東大などの学校に入ります。
そうすると、日本はどうなるでしょう?大都市の塾に入れる子達だけが、優秀な企業に就職したり、官僚になったりして地方の気持ちがわからない日本になります。地方の高校から「論理」で考える子ども達が東大に入り、様々な地域や様々な見方から日本を考える人材が日本のことを議論する。その地方の人材が地方に戻ったり、大都市から地方のことを考えたりすることが地方創生にもつながっていくのではないかと新井さんは語っています。その通りだと思いました。
3.わかりにくいことを考える子どもの育て方とは?
では、具体的にどのようにすればよいかが年齢別に書いてあります。ざっくりと紹介します。
幼児期:母語のシャワーを浴びること。外部とたくさん接触すること。歩く・走る・喧嘩をする・仲直りする経験をすること。読み聞かせをする。自然に触れる。
低学年:主語・述語が整った短い文で説明すること。生活習慣を整えること。気長に見守ること。鉛筆の持ち方を整えること。
中学年:音読をする(定義は絶対)。読書を奨励。テストの丸つけのときに意味が同じかどうかをみんなで考える。分数の相対の考えを繰り返し教える。
高学年:板書をリアルタイムで写させる。定義を言わせる。(円周率の3.14って何の数字?→円周を直径で割った時の比の値)文章を200字で要約。単元テストではなく、学年末テストでいい点を取れるようにすること。
特に、私がグサっと来たのは、テストの丸つけの話です。子どもに答えを配ると意味を考えずにそのまま答えを写してそれで終わりという児童がいます。そうではなくて、「先生、これは意味が同じだからいいのではないですか?」という児童を育てていきたいと思います。
国語は、すべての教科の源である。そうすれば、算数、社会、体育にも応用が効く。意味がわかれば部活を一生懸命やっていた子も受験のときに成績が一気に伸びる!?
④ 教師としての考え
・わかりやすい授業だけではない。わかりにくい授業も大切だ。読解力はすぐに成果は出ないし、親の言うことはなかなか聞かないので、公立の小学校教員である我々が板書を写させたり、定義を確認したりしてあげることを通して意味のわかる子どもを育てていかなければならない。
・今のご時世「密を避けなさい」とは言われているが、学童保育や保育園でクラスターが発生したという話を聞かない。小さな子どもほどリアルな体験や相手の表情を読み取ったりすることが大切になる。だから、低学年ではそのような触れ合いを大切にするべきではないか。
・小中学校のホームページはedumapになっていますか?edumapとは、著者の新井さんがこの本の印税をすべてこのedumapの構築とメンテナンスに充てるとおっしゃる学校ホームページのシステムのことです。もし、まだedumapなっていないのであれば、今すぐにでも変更すべきです。私の勤務校でも4月からedumapにしてどの教員でもどの場所でもインターネットにつながっていれば更新できるようになり、オンライン授業も可能になりました。今すぐにでも変えるべきです!edumapの詳しい説明は下のホームページからご覧ください。
⑤ 保護者としての考え
・ 読み聞かせや音読は大切である。きちんと見とってあげたい。
・ いろいろな体験をさせてあげることが親にできること。子どもの視野を広げてあげたい。また、いろいろな人とも触れ合わせていきたい。
・アウトプットさせる力を子どもにつけてあげること。子どもにクイズを出してもらって、それを親が答えることなどを通して「意味がわかり、論理で考える」子どもになってほしい。
・論理で考え、意味がわかる子どもだったら、自分で文章を読んで自分で勉強する自主学習の習慣があるはず。残念ながら、私の子どもは休校中に自分で勉強しなかったので、文章を論理で考えていないと思われる。これからの伸びしろと考えるようにしよう(ポジティブに考えよう)。
⑥ まとめ
「意味がわかるとAIに負けない子ども→大人になる。」
⑦ 子育てハッピーアクション
・子どもとたくさんのことを体験し、一緒に共有しよう。
・学校で習ったことを夕飯のときにクイズ形式で出してもらおう。
・本を読ませよう。読まないようなら、読む姿を見せよう。おすすめの本を紹介しよう。読み聞かせをしよう。
小学校教員なら、必読です。学校に1冊は置いておきましょう!