エマニュエル・トッド インタビュー:ロシア敗北で支配は100年間
「私は親ロシア派ではないが、もしウクライナが戦争に負ければ、勝つのはヨーロッパだ」
刺激的なタイトルですが、Corriere di Bolognaは信頼できるニュースソースで、イタリアで広く読まれている新聞「コリエレ・デラ・セラ」の地方版として、高いジャーナリズム基準を維持し、ボローニャとその周辺地域に関する正確でタイムリーなニュースを提供しています。以下、記事の内容を詳しく見ていきます
L'antropologo Emmanuel Todd e il suo libro controverso: «Non sono filorusso, ma se l’Ucraina perde la guerra a vincere è l’Europa»
今回の印象に残った言葉
この戦争の結果がヨーロッパの運命を決定します。もしロシアがウクライナで敗北すれば、ヨーロッパはアメリカに100年もの間支配され続けるでしょう。ですが、私が信じるように、アメリカが敗北するならば、NATOは解体し、ヨーロッパは自由になるでしょう。
もっと重要なのは、ロシアの勝利ではなく、ロシア軍がドニエプル川で止まり、プーチン政権が西ヨーロッパを攻撃する意思がないことです。1億4千4百万の人口と減少傾向にある人口、1700万平方キロメートルの領土を持つロシア国家は、すでに自国の領土を占有することに苦労しています。ロシアは、前共産主義時代の国境を再構築した後に拡大する手段も欲望も持たないでしょう。
西洋の反ロシア的なヒステリーは、ロシアのヨーロッパへの拡張願望について空想しているに過ぎず、真剣な歴史学者から見ると滑稽なものです。ヨーロッパ人に待っている心理的なショックは、NATOが私たちを保護するためではなく、制御するために存在していることを理解することです。
ウクライナ情勢を通して見る、欧米社会の行き詰まりと変革の必要性
エマニュエル・トッド氏の著書『The Defeat of the West(原題:La défaite de l'Occident)』のイタリア語版出版を機に行われたインタビューでは、ウクライナ戦争を通して見た欧米社会の行き詰まりと、ロシアの戦略的優位性が論じられました。本記事では、インタビューの内容を深く分析し、大衆の記事として再構成させて頂きます。
欧米社会の無神論化と虚無主義の蔓延
トッド氏は、欧米社会における宗教的規範の消滅と、それに伴う虚無主義の蔓延を指摘する。トランスジェンダーの思想に象徴されるように、生物学的事実を否定し、虚偽を肯定する風潮が広がっているという。この現象は、人間の有限性や死の不可避性に対する不安から生じる破壊衝動の表れだと氏は分析しています。
ロシアの戦略的優位性
ウクライナ戦争の帰趨について、トッド氏はロシアの勝利を予測し、その根拠として、以下の点を挙げています。
米国の軍事産業の衰退
ウクライナ軍の後退と兵員不足
対ロ経済制裁の欧州経済への悪影響
ロシア経済の立て直しの成功
氏によれば、ロシアの工学系人材の豊富さと、非同盟国との貿易継続が、制裁の影響を最小限に抑えたと分析しています。
NATOの本質と欧州の従属
トッド氏は、NATOの本質は欧州の保護ではなく、支配だと喝破する。ウクライナ戦争を通じて、米国は、ドイツとロシアの接近を阻止し、欧州に対する支配を強化しようとしているのだと氏は分析する。Nord Streamパイプラインの爆破は、その象徴的事件だったと指摘しています。
リベラル寡頭制 vs 権威主義的民主主義
欧州の「リベラル寡頭制」とロシアの「権威主義的民主主義」を比較し、トッド氏は後者に理解を示しています。プーチン大統領とラブロフ外相の論理には一定の合理性があると氏は述べ、欧米リーダーがロシア側の主張を真摯に受け止めていれば、戦争は回避できたはずだと示唆しています。
亡命に関する立場
トッド氏は、フランスが全体主義的になったり人種差別的になったりしない限り、祖国に留まる意向を示しています。一方で、もし政治亡命の必要に迫られれば、米国ではなくイタリアやスイスを選ぶと明言した。
結論
トッド氏のインタビューは、欧米中心の世界秩序が大きな転換点を迎えていることを示唆しています。ウクライナ戦争の帰結次第では、NATOが瓦解し、欧州が米国の支配から解放される可能性もあるそうです。
記事を読んでの感想
日本を含む世界各国は、この地政学的変動を冷静に見極め、賢明な外交戦略を構築していく必要があるでしょう。トッド氏の議論は、そのための貴重な示唆に富んでいます。
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