「悪しき因習」と「個々の人生」
団体を批判して辞めていった葉月選手がスターダムに復帰するようです。
当然他のレスラーは面白くないでしょう。ジュリア選手の「社会に出て通用しなかったんだと思う」という発言からは本音の匂いがプンプンします。特に彼女は社会の荒波に揉まれてきた(知らない人間がこんなフレーズで軽々しく言い表せないことは百も承知)苦労人。説得力が半端ないです。
辞めてもすぐに戻って来られるのはプロレス界の悪しき因習です。壮大な引退ツアーを組み、言い方は悪いけど「最後の荒稼ぎ」をしたにもかかわらず、あっさり復帰したレスラーもいました。
一方で人生は一度きり。100年後には批判していた人も自分もいない。結局は己のやりたいように楽しんだ方が勝ちじゃないかという気もします。
もちろん「だから何をしてもいい」ではなく、大事なのは「覚悟」と「決意」。「スターダムに刺激を与えに来ました」というワードからは、もうひとつ伝わらない。
2012年夏。7年ぶりに新日本プロレスへ復帰する際、柴田勝頼選手は「ケンカ、売りに来ました」とマイクで話しました。あれは文字通りの意味に加えて「いまの新日本に自分の考える『本来あるべき新日本のプロレス』を叩き込む」という決意表明も含んでいました。葉月選手の場合は「何を以て刺激を与えるのか」がまだ見えない。
2003年冬。前年秋に辞めた新日本へ乱入した佐々木健介選手に対し、永田裕志選手は「はっきり言っちゃえばいいんですよ。生活が苦しくて他に働き場がないって」というコメントを出しました。葉月選手にはこれを自分が言われたと思って「本音の返し」を考えて欲しいです。
と言いつつ私は彼女の試合、好きでした。特に↓の一戦はいまでもたまに見ます。
これを見たら誰もが「辞めるのはもったいない」と納得するはず。「引退→復帰はダメ」と個々の事情を無視して機械的に切り捨てず、葉月選手の「覚悟」と「決意」に期待しましょう。「人生の形」はひとりひとり違うから。どれかだけが絶対的に正しいわけじゃないから。