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「一瞬の春」と「転機」の本質

人生には大きな「転機」があります。

桑原投手の場合はふたつ。ひとつは2015年にトレードで阪神に来たこと。もうひとつは翌年、金本監督が就任したこと。そのふたつがなかったらもっと早く、且つひっそりと現役を引退していたでしょう。

彼が阪神に来た年に何度か投げる姿を見ました。真っ直ぐはかなり速いしスライダーも鬼のように曲がる。しかしノーコン。カウントが悪くなって歩かせるか、ストライクを取りに行って痛打される。「これは厳しいな」と感じたのを覚えています。

金本監督の見解は違いました。私を含めた多くの阪神ファンが「球は速いけどストライク入らない」「スライダーは切れるけどノーコン」と考えていたのに対し、彼は「ノーコンだけど球は速いし変化球も切れる」「コントロールは悪いけど打ちにくい」と捉えていました。同じ事実を見ていても解釈の方向性が真逆。優れた指導者は部下の短所ではなく長所で評価すると学びました。

久保二軍投手コーチの助言もあって制球難を克服すると、2017年には67試合(最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得)、翌18年は62試合に登板しました。まさに我が世の春。酷使といえば酷使です。でもタイガースで長く投手コーチを務めた中西清起さんいわく「期待に応えてくれる選手は可愛いからどうしても使いたくなる」とか。金本監督も同じ気持ちだったのでしょう。その分、桑原投手の大幅な年棒アップを球団にお願いしていたそうです。

一軍で活躍したのは、実質この2年間のみ。でも彼の献身的な働きを阪神ファンは決して忘れることはないでしょう。たとえ一瞬であっても、人として生まれたからには一度は陽の当たる場所に立ちたい。諦めなければ可能性はゼロじゃない。「転機」の本質は人との出会い。そのチャンスを全身で受け止めて活かすことで人生は変わる。

桑原投手のブレークに刺激を受け、日々の活躍を励みにした人は私以外にもたくさんいるはず。現役生活おつかれさまでした。そして素晴らしいピッチングをありがとうございました。

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