「My Funny Valentine」と「5作の長編」
先日↓を聴きました。
毎月の最終日曜日にオンエアされる「村上RADIO」。6月のテーマは「歌う映画スターたち」でした。
最も印象に残ったのは、映画「ブルーに生まれついて(原題:Born to Be Blue)」でチェット・ベイカーを演じたイーサン・ホークの歌う「My Funny Valentine」です。
誰もが一度は耳にしたであろうスタンダード・ナンバー。カフェや商業施設でこの曲が流れると、ヴォーカルの有無にかかわらず、行動を一時中断してしばし聴き入ってしまいます。
イーサン・ホークのバージョン、素晴らしかった。ただ私のなかでは「リプリー(原題:The Tallented Mr Ripley)」でトム・リプリーを演じたマット・デイモンが歌うもののインパクトが、ほんの少しだけ上回りました。これは歌唱力云々という話ではなく、演じた役の違いに起因していると思われます。
最初は緊張ゆえか、競馬でいうところの「かかり気味」。しかし徐々に落ち着きを取り戻し、自ら縛りつけていた己の感情を表現を通して解き放っていく。そんなトムの姿が作中における彼の生き方に、さらには自分自身の内面と重なるのが心地良かったです。
なおパトリシア・ハイスミスの原作には、トムがこの曲を歌うエピソードは出てきません。なぜなら映画版だとジャズ・ミュージシャンを志望するディッキーが、小説では画家になることを目指しているから。しかし(以前にも書いた気がしますが)私はこの変更に関しては、作品のテーマをしっかり噛み砕いて尊重し、より力強く打ち出すものだったと感じています。
トム・リプリーが主人公の長編小説は5作あり、いずれも河出文庫から翻訳が出ています。興味のある方はぜひ。
作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!