ハードボイルド書店員が「進まなきゃ」と思った名曲
「味覚は子どもの頃の記憶」
何年か前、吉川晃司さんがムックのインタビューでそんなことを話していました。わかる気がします。当時夢中になったものは食べ物に限らず、本でもコミックでもアニメでも音楽でも概ねずっと楽しめているので。
場合によっては、現在の方が好きかもしれません。作品に込めたメッセージみたいなものをより明確に感じ取れるから。表面上に映し出されたものに限らず、裏側まで含めて。
世紀末をとっくに過ぎた2024年。時代が令和へ移ってもなお、変わらず↓をヘビロテしています。
アニメ「北斗の拳2」のOP、TOM☆CATの「TOUGH BOY」です。
正直いま聴くと、作品世界ではなく、まさにいま己の生きている現実の風景とダイレクトで繋がってしまいます。
「この腐敗と自由と暴力のまっただなか」
あるいは
「この狂気と希望と幻滅のまっただなか」
それでも
「進まなきゃ 勢いを増した向かい風の中を」
アニメのOPでバットがバイクに跨り、ボウガンを携え、ひとりで正面から突っ込んでいく。あの無謀と映るチャレンジ精神は、明らかにいま見る方が魂を滾らせます。こんなカッコいいモンじゃないし、彼みたいに若い命を張っているわけでもない。けど、私が書店業界に対して訴えていることも、ほんのちょっとぐらいはこれに近いかなと思ってしまうのです。
ドン・キホーテ? いやいや。ドン・キホーテの何たるかを知覚している時点で、すでに彼の純粋さとは無縁です。ただ目の前の現実を一歩ずつでも前へ進めたい。少なくとも私はそれだけ。
あの時、バットはどんな心境だったのか? あるいは一緒かもしれない。国や社会をどうこうも皆無ではないけど、何よりもまずこのままでは自分自身が納得できない。たぶんそれが原動力。
「TOUGH BOY」ぜひ聴いてみてください。
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