野村克也と清宮海斗の「強さ」
こういうプロレスが見たかった!!
サイズとパワーで劣っていても、脚を攻撃して寝かせてしまえば体格差は消える。ましてや大きな身体で豪快な技を多用する辻選手はスタミナの消耗が早い。ならば攻め疲れが出るまで耐え凌ぎ、動きが止まったところで首や頭部に大技を集めてダウンさせ、3カウントを奪えばいい。20分一本勝負じゃなければ膝への関節技でギブアップも狙える。
さすがはプロレスリング・ノアのエース。それでこそ清宮海斗。小さい者が大きい者を倒すための教科書みたいなレスリングを堪能しました。
ノアのリングで辻選手と同じくデカくて動きの速いジェイク・リー選手に敗れた経験が活きた気がします。ジェイク選手は柔術を学んでいて寝技も強いけど、辻選手にそっち方面の引き出しはあまり感じない。もしかしたら、清宮選手には見た目よりも少しだけ余裕があったかもしれません。
プロレスは大衆娯楽。見る側は頭を空っぽにして楽しめばいい。でもやる側には緻密でロジカルな思考回路が不可欠だと考えています。プロレスにおける「客が沸くならなんでもいい」「盛り上がればそれでいい」は、書店における「売れるならどんな本を置いてもいい」「お金になればそれでいい」と一緒。そんな低くて雑な志ではいずれ見透かされ、なめられてしまう。
さらに言うなら、デカい強者が毎回勝つなんてつまらない。かつて故・野村克也さんがヤクルトで各球団をクビになった選手を再生させ、エースと4番をかき集めた長嶋巨人を「弱者の兵法」で翻弄した痛快な思い出が蘇ってきました。
「弱者の兵法」で強者を倒せるのなら、それはイコール強いということ。野村ヤクルトも清宮選手もたぶん一般的な意味での強者ではない。けど強い。そこに惹かれます。
2023年の夏は、清宮海斗の「強さ」に要注目です。
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