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Audibleで「ハンチバック」を読んだ(聴いた?)話

Podcastでオーディブルがいいよ!とおすすめされていて、その時の推薦図書で「ハンチバック」が紹介されていたので体験しました。

Audibleとは

Audibleとは、プロの声優や俳優をはじめとしたナレーター等による本の朗読やポッドキャストをアプリで聴けるサービスです。移動中や作業中など、いつでもどこでも聴く読書をご利用いただけます。アプリならオフライン再生も可能です。

https://www.audible.co.jp/

声のプロによる朗読で、ハンズフリーで本を読むことができるアプリです。
存在は知っていたものの、「本を聞く」というイメージがぴんと来ず利用まで至らなかったのですがものは試しでAmazonの無料体験をやってみました。その後、いかに自分が固定概念の枠で読書をとらえていたかを実感する体験となります。

「ハンチバック」を聞く

今年度の芥川賞受賞作で、扱うテーマから様々な反応が飛び交っている作品です。

本のあらすじを読んで、長く重厚な内容だったら読み切らないかもな・・と思っていましたが実際に読み終わるまで通常再生で3時間くらい。文章もかなりライトタッチだったのでするすると読み終わりました。各所で議論されていますが、やはり先天性ミオパチーを抱える主人公が語る「紙の本が憎い」という呪詛にも近い想いが印象に残りました。

「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」

徒歩や交通機関、自家用車などで書店へ出向き、所望する書籍を選んで支払いを済ませる。その本を家まで持って帰り、数百グラム程度の本を手で支え、一定の姿勢を保って読み進める。大多数の「本好き」は、この特権性に気づかず平気な顔で「本のページをめくる感覚がいいよね」とのたまうことを「無知の傲慢」と主人公は断言しています。『読書文化のマチズモ』と評されて様々な議論がなされているこのシーンで、私は不思議と衝撃でも罪悪感でもなく「共感」を覚えました。

なぜなら、自身もまた「書籍へ出向く」「読書の時間を確保する」「思考を邪魔されずに読む」という読書に必要な要素に飢えていることにその時気づいたからです。
※決して自身が障碍を持つ方々と同じ困難を抱えているという意味ではありません。当然私自身も「特権性」の上にあぐらをかいている人間の一人であることを自覚しています。

Audibleで「ハンチバック」を聞いた(読んだ)体験は私に何をもたらしたか

この表現が誤解を生むことを認識したうえで一番しっくりきた言葉は、著者が本書を通して切望している「本のバリアフリー化」という表現でした。
これまで「読書」という占有時間を作らないと本を読むことができなかった私が、夕飯を作りながら、子供を寝かしつけながら、掃除や洗濯ものをたたみながら気軽に本に触れることができました。時間の柔軟性もさながら、「さぁ本を読むぞ」という気合を入れなくても本の世界に足を踏み入れることができる体験は新たな気づきでした。
AirPodsのノイズキャンセル機能を有効にすれば、洗い物をする水音や掃除機の騒音、子供たちがゲームに興じて発する奇声(笑)に気を取られることなく本の世界に集中することができます。

そして、「本は電子であれ紙であれ自分の目で読んでじっくり理解しなければならない」という自分の固定概念そのものが、本から自身を遠ざけていたことにも気づきました。いわゆる「ながら聞き」ではあるけれど、じっくり腰を据えて読んだときと洗濯物をたたみながら読んだときで内容の理解度には大きな差はなかったのです。きっとこれはプロによる朗読という付加価値が大きく貢献してくれたのだと思います。

さらに本書の「3時間弱で読み切れる」という部分も、私の読書体験で得られた効果の一つでした。出勤時の移動時間や昼休み、寝かしつけ後。日々の隙間時間をかき集めて無理なく読み切れるちょうどよい時間でした。その後ほかの本を読んでみたのですがどれも1冊5~6時間以上かかってしまうので、何日もかけて読んでいるうちに飽きてしまうんですよね。
本はページ数が多ければ多いほど、内容が厚ければ厚いほど世間的には高評価されるが、時間と心の余裕が常に枯渇している自分にとって「少し物足りなさはあるけれど、しっかり平らげることができた」ことが充実した体験でした。

Googleのプロダクトインクルージョンに対する考え方

少し前に、「Google流ダイバーシティ&インクルージョン」という本を読みました。

この中に印象に残っている一節があります。

インクルーシブでありたいと望むだけでは不十分だ。しっかりとした意図をもってじっくりと検討し、実行する必要がある。デザイン、開発、テスト、マーケティングといったプロセスにおけるキーポイントの中心にインクルージョンを据えて、ユーザーの違いを確実に考慮し、対処するようにしなければならない。ダイバーシティとインクルージョンの急先鋒ジョー・ガースタンドは「意図的に、じっくりと、積極的に包摂(インクルード)しなければ、無意識に排除(エクスクルード)してしまう」と人々の注意を喚起する。

第一章「すべての人のためにつくる:どうしてプロダクトインクルージョンは大事なのか」

表現を拝借すると、今回の一連の出来事は「本を集中して読めないことは自分の努力や向上心が足りないからだ。本気を出せば時間も読む気も作れるはずだ。本を全部読み切れないのは自分の好奇心が足りないからだ」という排除(エクスクルード)体験がAudibleとハンチバックによって包摂(インクルード)された体験でした。

まとめ

今回得た気づきのまとめです。

  • 目で読んでも耳で聞いても効果は変わらない。そう、プロの朗読ならね。

  • 私は読書に対して「多くを読みたくさんの知識を得た」ことよりも「少ない情報でもしっかり読み切った」ことに充実感を感じるタイプのようだ。

  • 排除(エクスクルード)は無意識の中にこそ広がっているし、気づけば自分自身がエクスクルードしている。

  • Audibleはいいぞ。ハンチバックをAudibleで聴くときはちょっぴり恥ずかしいシーンがあるのでイヤホン推奨

Amazon Audible無料キャンペーンは三か月。また面白い本見つけたら読書感想文を残したいと思います。

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