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読書感想 #3 『すべての、白いものたちの』ハン・ガン

あけましておめでとうございます。
takataroです。

新年1回目は読書感想になります。

感想を書く作品は
ハン・ガン『すべての、白いものたちの』
です。

ご存知の方も多いと思いますが、昨年ノーベル文学賞をとった韓国の作家さんです。

天の邪鬼なので、流行っている作品はあまり読まない方なのですが、ついつい手に取ってしまいました。

この本ですが、私が今まで読んだ本の中で一番視覚に訴えてくる作品でした。

タイトルの通り「白」いものが、多く出てきます。

一応小説ではあるのですが、短い詩の集合体という感じを持ちました。
本の構成も章ごとに区切られており、余白が十分にとられ、白黒の写真も間に挟まっていて、少し不思議な本となっています。

全体を通して静謐な印象を受けます。
翻訳ではなく、ハングルでこの作品を読めたなら、より一層そう感じたのではと思いました。

読んでいるとモノクロの映像が思い浮かびます。
「黒」を効果的に使うことで「白」が映えてみえます。

例えば

 闇の中で、あるものたちは白く見える。
 ぼんやりとした光が闇の中へ分け入っていくとき、さほど白くなかったものまでが青ざめた白い光を放つ。

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』河出書房新社,二〇二三年二月ニ〇日初版発行,35ページ


「白」と「黒」を基調とする中で、ときどき「赤」や「緑」が出てくるとそれらが発色鮮やかに感じられます。
例えば鶴の描写

全身が白いのに足だけは明るい赤だった。鳥はつるつるした大きめな岩の上に上り、両足を乾かしているところだった。

同書89ページ

そして草の描写

その道は雪や霜ではなく、薄みどりの、根気強い草に覆われているかもしれない。

同書139ページ

主人公の母国語(恐らく韓国語)には「白く笑う」という表現があるそうです。

途方に暮れたように、寂しげに、こわれやすい清らかさをたたえて笑む顔。またはそのような笑み。

同書97ページ

このような表現を持つことに羨ましさを感じました。日本語にもこういった表現があったらなと。

少しだけ絵本の『翻訳できない世界のことば』を連想しました。

感想以上となります。

流行っているからと嫌厭せず、この本と出会えて良かったと純粋に思っています。

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