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努力は仕組化できる/感想

新年、新たな目標を設定して頑張ろうと意気込んでいる人は多いかと思う。しかしこれまた同じくらい「これ去年も同じ目標だったなー、努力が続かないなー」とため息を漏らしている人もいるかもしれない。

この本は行動経済学という視点から『努力できるかどうかは仕組みでどうにかなる部分も大いにある』と努力の才能に欠けたと落胆する人を鼓舞する一冊になっている。

〈行動経済学とは〉
理性と衝動を興味深く見つめてきた学問。人間の意思決定のバイアス(偏り)や行動の特徴を考慮に入れて将来の経済学をさらに発展させることを目指している

そもそも努力とは…

今コストを払って将来大きな報酬を手に入れるか、
今ラクをする代わりに将来何も得られないか、

その今支払うコストのことを努力と呼ぶ。経済学的に考えれば、人間は死ぬまでに得る効用の合計値を最大化するように今の選択を行っている。この合計値のことを生涯効用と呼ぶらしい。(選択は生涯効用の最大化の為)

例1【ダイエット】
今  おいしいものを食べること
将来 美しく健康な体を手に入れること

例2【タバコ】
今  一服すること
将来 健康や寿命を手に入れること


しかし分かってはいても努力を難しい、続かないと感じることは多い。
そこでまず自分はどんなタイプなのかを把握することは一助になる。

自身のパターンを知る

◇時間割引率は高いのか低いのか

【時間割引率】
時間の経過により報酬の魅力が割り引かれてしまうこと

今すぐ 1,000円もらうことの嬉しさ=100
一年後 1,500円もらうことの嬉しさ=150

とする。

●待つことを苦にしないタイプ(時間割引率が低い人
(一年待つことの)心的コスト10
150-10=140  100
⇒一年待って1,500円を手にする方が嬉しい

●待つことがすごく苦手なタイプ(時間割引率が高い人
(一年待つことの)心的コスト80
150-80=70  100
⇒一年待たず今1,000円手にする方が嬉しい

時間割引率が高い人は努力をしない傾向にあるという。

◇達成動機は高いのか低いのか

【達成動機】
自分で目標を達成したいという気持ちの強さのこと

適度の困難さの課題を好み、現実的な目標設定を行い、自分の遂行結果を知りたがる…タイプであれば達成動機の高い人。


◇ソフィスティケィテッドかナイーフか


自分は目先の報酬(利益)に目がくらみがちで最終的に後悔する可能性があるという自覚が
ある⇒ソフィスティケィテッド
ない⇒ナイーフ

◇統制の所在はどこか(内的・外的)

【統制の所在】
物事は自分の力で決まるか、運で決まるか

自分の能力や技能によって物事の原因をコントロールできる(実力重視)⇒内的統制
原因が運や他者などの要因で決まる(運重視)⇒外的統制

高齢者は若年者よりも内的統制が弱い、といわれる。年を取るとなんとなくなるようにしかならないと考えてしまうのかもしれない。

しかし驚いたのは、現在の日本人は世界的に見て勤勉さよりも運やコネを重視する傾向(日本の平均値は4.86で他国と比べるとやや運を重視する国)にあり、若年層で「結局は運で決まるので努力は無駄」といった考えが増えてきているのだそう…(25~34歳が最も運やコネが大事だと思っていて年齢が上がるごとに自分の力を重視している)近年のガチャという言葉がそういった傾向を如実に表しているのかもしれない。

さて自分はどういった傾向にあるのか、おおよそが掴めたところで、目標に努めて向かうに役立つものを紹介したい。

努力に役立つもの


・目標設定

・フィードバック
内容を受け止めそれを目標に反映させること。自分の頑張りを適切に評価できなくなったとき、楽しかったはずのことが辛い努力に変わる。何かを継続しようとするときには自分の頑張りを目に見える形にしてみること

・コミットメント
将来の自分の行動を縛るような工夫(例:もしその行動を実行できなかったら○○する)
ソフィスティケィテッドが使う計画倒れにならないための手立てとしてよく知られる。難しい作業やつらい作業をするときこそ役に立つ。

・フィードフォワード
自分で決定した感じが効果を実感しやすく満足度を高める

・実行意図
どこで、いつどのように行うかをあらかじめ決めておくこと。習慣の形成に有効。ただし「やめる」努力(例:禁煙)には適さない(新しい行動の定着に効果的だが既存の行動を消すことにはあまり効果がないと言われる為)

努力に有効なものもあれば、その反対に阻むものもある。
以下数点には誰にでも当てはまるものもあるように思う。

努力を阻む要因


・デフォルト・ナッジ
デフォルト(初期設定)に従ってしまうという性質を利用する。何をデフォルトにするか、つまり「行動しないときに何が起こるか」の設定次第で人の行動は大きく変化する。(例:WHOは2004年にAIDSが蔓延している国ではHIV検査を受診する、をデフォルトにすることを推奨した。)

努力が苦手だという自覚のある人は自分がデフォルトナッジの効果を受けやすいことを肝に銘じておく必要がある。

BITという組織がまとめた効果的なナッジポイント(EASTフレームワーク)

EASTフレームワーク
1.簡単にすること(Easy)
2.興味をひくようにすること(Attractive)
3.社会的にすること(Social)
4.タイムリーにすること(Timely)

Behavioral Insights Team(イギリス)

・自分だけは大丈夫という思い込み
「どうにかなる」精神が強すぎるとその日暮らしのようになってしまう。(楽観バイアス)

・人と一緒にいる時、つかれているとき
「こうなりたい」という習慣を持った人たちの中に身を置いた方が努力を継続しやすい

・サンクコスト
既にかけたコストのうち、どう頑張っても回収できない費用のこと。努力を続けたことによって合理的な判断ができなくなってしまう可能性がある。(例:コンコルドの誤謬)

1960年頃に開発が進められていた超音波旅客機コンコルド。開発費に莫大な金額をかけていたが、開発途中で完成しても全く採算がとれないことが明らかになった。中止すべきところをサンクコストにとらわれ合理的判断が阻害されそのまま継続した結果大赤字という結末になった

コンコルドの誤謬

サンクコストが発生する前に時が戻ったら自分はどうするかを考える事でだらだらと気持ちや時間、金銭など大事な資源を無駄にしてしまうことを避けられる。

続ける目的は○○○するため


会社の帰りは一駅歩く、夕食後は一時間勉強する…

こういったことを意識してやっているうちは実行意図だがこれを繰り返し何も考えなくても出来るようになれば習慣になる。

何も考えなくても自然と手前の駅で降りて歩いて帰っている、夕食後は自然と自室に行き、教科書を開いている…

このように何も考えなくても行えるようになることは「自動化」と呼ぶ。(この自動化の程度を測定することでその行動が習慣として根付いたかどうかを判断している研究が数多くある)

様々な行動が自動化されるまで日数を見ると18日で自動化される行動もあれば254日(約8ヶ月)かかる行動もあったが中央値は66日となっていた。つまり、どんなことでも2ヶ月頑張ることができれば、その努力は意識せずとも自然に行えるようになっている可能性が高い

2ヶ月その努力を継続出来ればそれは自然と身に付き習慣という「自動化」が成される、ということ。三日坊主と自覚のある人からすれば二ヶ月など遠い先の様に思えるが、これは先に紹介した努力に役立つものを参考になんとか持ちこたえたいものだ。

加えて自動化、つまり習慣化するには

「なぜそれが必要なのか」
「どのような効果があるのか」
「どのように行うのか」
「いつ行うのか」
「なにを目標として行うのか」

をきちんと考えることが重要である。

時間割引率高め、達成動機高め、ソフィスティケィテッドな内的統制の私もこれから2ヶ月をとりあえずの目標にデフォルトナッジや疲れている時に気を配りつつ、フィードフォワードや実行意図を使いながら自動化を目指したい。

何の努力って…?それは、秘密だ。(コミットメント失敗)笑



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