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毎日が、「自分を信じる」というギャンブル

昔書いていたブログを読み返していたら、こんなタイトルのものを見つけた。

毎日が、「自分を信じる」というギャンブル。

書かれたのは2008年。何のことかと思って読んでみれば、ライターについての話だった。こんなことを書いていた。

「文章を書く」なんて、ものすごく不安定なものを仕事にしていると、
自分を信頼していない限り、すぐに崩れ落ちていく。

何もないところに、自分の「心」に描いたことを
カタチにするという、なんともあやふやな作業。
こんなものを商売にしようとしたこと自体がギャンブルだ。


なかなかうまいこと言うな、2008年の私よ、と思った。
確かに「文章を書く」って不安定なものだ。
これが正解、というものがないから、自分で自分を信じていないと、他人の評価ですぐに自信をなくす。
自分で自分の書いたものを信じていなければ、「公開する」とか「コンテストに応募する」とか「有料記事にする」なんてことはできないと思う。
ましてや「仕事」になんて、恐ろしくてできない。

「書くことを仕事にする」って、ある意味、そういうギャンブルに“勝ち続けること”だと思ってきた。負けたらお金は入ってこない。もしくは「次」がない。
だからもし、「どんな人がライター(書く仕事)には向いていると思いますか?」と聞かれたら、たぶんこう答えるかな。

「毎日、『自分を信じる』というギャンブルを楽しめる人」

実のところ、私は「スリル満点でたまらんよね」と思っている。
結局、人生をこれに賭けてしまった。そしてめちゃくちゃ楽しんでいる。
「書くこと」に出会えて、人生を賭けてもいいと思うものに出会えて、私はとても幸せだ。

そういえば、昨日note友達のミニチュアちいさんが、私のすすめた吉田修一氏の『永遠と横道世之介』を読んだ感想を記事にしてくれていた。

朝一番に読み、また世之介のことを思い出して、彼に会いたくなった。そして、ちいさんの記事の最後の方に書かれていた文章を読んで、涙が出てしまった。

この物語の中で世之介はカメラマンとしての自分のことをこう言っている。

カッコつけて言わせてもらえば、僕はもう写真に出会えただけで、人生勝ち組なんだなぁって。

この一文を引用したあとの、ちいさんの文章が響いた。

私もミニチュアに出会えて勝ち組なんだなぁ。
だから、もう上を目指そうとあがくのではなく、今を見据えてじっくりゆっくり活動していけばいいんだねと思いました。

ミニチュアちいさんの記事より

ポロッと涙が出た。
私も「書くこと」に出会えて、もうそれだけで人生勝ち組なんだなと思ったからだ。

こんなにも好きなことに出会えて、それを仕事にして生きられるなんて、幸せなことだ。今は確かにそう思う。
ただ、若い時はその幸せを嚙みしめているだけの毎日ではなかった。
焦りや嫉妬もあった。
自分がやりたかったような案件を任されているライターさんを見て羨ましく思うこともあった。
フリーランスだから、「評価」=「稼ぎ」だと思い、とにかく稼ぐことに執着していた時期もあった。
仕事が来なくなるのが怖くて、クライアントの無理難題を笑って引き受けることもあった。
どんな仕事でもやるものだから、「なんでそんな(しょうもない)仕事請けるの?」と、ライター仲間に蔑まれ、モヤモヤしたこともあった。

病気になるまで、自分が無理をしていたことにも気づかなかった。いや、気づかないふりをしていた。
でも、ガンになって立ち止まって、「自分の生き方」を見つめ直す機会をもらえた。
そうしたら、初めて焦りがなくなった。
しばらくして、ガンを治すために生きるのではなく、ガンを治してどう生きたいのかが大事だと気づき、その答えを考えたとき、やっぱり私はただ、書きたかった。

ちいさんの言葉を読んで、その気持ちを思い出したのだ。
もう無理はしなくていいんだ。私も今を見据えてじっくり活動していけばいいんだ。リラックスしよう、と思った。
だって、すでに人生勝ち組なんだから。
「書くこと」に出会っているのだから。
その思いがなんとも清々しくて、愛しくて、ポロっと涙が出た。

ライターの仕事は、「自分を信じる」というギャンブル。自分の書いたものが伝わると信じて「えーい、これでどうだ!?」と相手にぶつける。
自分の感性と理解力だけに頼って、真っ白なwordの画面を言葉で埋めていき、正解はぶつけてみるまでわからない。
まったく、おかしなことを始めたものだ。
でも、そのおかげで人生にちっとも退屈していない。

noteはギャンブルの勝ち負けを気にしなくていい場所。
仕事じゃないから、今日も私は自分を信じて、書きたいものを、書きたい気持ちのままに書いている。
それができる場所があって幸せだ。

そんなことを考えながら、今日もなんでもない一日を生きる。

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