お兄さんの大脱走 from 小学校 #a2
お兄さんは、小学生になると、じわじわと学校がイヤになります。なんやかんや、行かなきゃならないのは知ってるんだけど、、なんかヤだ。という感じなのだろうか。
集団登校をするのですが、みんなで朝方、ウチのマンションの前であつまる。でもね、ダラダラやるんスよ。準備を。別に本人は、ダラダラやりたいわけじゃない。でも少しずつイヤな気持ちが働いちゃうから、一つ一つの動作に心が入らない。そうすると、マンションの下から、6年生が「ピンポーン♪ おはようございまーす 準備できましたかー」って。これがですね、誇張表現ではなく、毎日続く。
本人には申し訳ないのですが、かかわる人間が全員、すこしずつイラっとする感じがする。6年生の子は、ハタ持って、ちびっ子引率しないといけないし、ちゃんとやってくれないヤツぁ子どもコミュニティ内だって、目を付けられる。ちゃんと朝出て来いよ。列を乱すなよ。お前人の話きいてんの?ていうのがこつこつと、シンシンと、である。
逃げます。
お兄さんは、この時期の、もう少し後の年になってからメンタルクリニックの先生にASDと告げられるので、このころはまだなんかこう、ダラダラやってるヤツ、なわけです。そんな彼が逃げます。大脱走です。朝方から授業からいろいろあれこれやが、ヤになったのだろう。がっつり逃げ飛ぶエネルギーを溜めて、ひゅって逃げる。
ある日このとでした。小学校からワタシの携帯に電話がかかってきて、知らない学年主任の先生から、お兄さんが学校からいなくなりました、という。い、いな、いななな、いなくなるって何だい。
ワタシは、上司のかたに言います。「すみません。なんか、長男のヤツが、小学校から逃げたっつって電話かかってきてしまって、ちょっと帰ります」はぁ?ですよ。お、おお。すぐ行ってやんな。とは言われるものの、大丈夫なの?と言われるわけですよね。いろんな意味で。だーいじょうぶなの?ってあーた、大丈夫じゃないですよ。あんまり早退する理由で聞かないでしょ。子どもが学校から脱走したのでちょっとお先に失礼します。聞かない。
なんでか、うすら浅くなった呼吸をしながら、タクシー乗って、なんやかんや小学校ついて、先生と会話。
「あー、お父さんどうも、いやー、どうもどうも
すみませんこちらの不手際で。
「まさかいやそんな、で、今どういうじょうきょ
「見つかりました!見つけましたよ。息子さん。
「あら!それはよかったー
先生が続けます。
「いや、でも大変でした。
近所のショッピングセンターの
3階のゲームコーナーの、
ゲームとゲームのスキマにこう、隠れてて
「す・・すごいっすね!よく見つかった。
遊びでない、本気のかくれんぼ。もしワタシが探す立場だったとして、ワタシははたして見つけられただろうか。ピンポイントにそんなスキマを目指せるだろうか。その場所を疑うことができるだろうか。学校からショッピングセンターまでまぁ 300m ほどの距離。まわりに公園とか、コンビニとかいろんな施設もあるのに、公園なんか隠れやすそうなのに。
先生は
「じゃあ、今日はおウチに帰ってもらって、
ちょっとどうしてこうなったのか、
お子さんと会話してみてください
という。
どうしてこんなことしたのかね
お父さんはお兄さんと会話をします。
「さて、どうしてこんなことしたのかね
「うーん。。。わかんない
「そうよね。いつものヤツよね。
「うん。。。わかんない
困るやつやん。困ったな。でも、ときどき起こるカンシャクも、特にはっきりとした理由がない。整理できていないのか、言葉にならないのか、本当に理由が無いのか、本人にしか、でも本人にもわからなくて。さて、逃げないように、なんとかならんもんかね。
「あのさ、お兄がいなくなっちゃうと、
大人がいっぱい困るわけよ。
お父さんなんか会社途中で抜けて来とるのよ。
お給料持って帰れなくなったら
お前ハンバーグ食えなくなるぜ。
ゲームも買えなくなるぜ。
「うーん。やってみる
「ちゃんとしてみようぜ
どうでしょう、解決すると思いますか。はい、そうです。これでは解決しませんでした。この後、逃げるバリエーションが増えていくのです。難易度右肩上がりです。