バク∝41

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最近の記事

【小説】帰り道

    私はこの道が好きだ。他の誰かから見れば、ただのよくある国道沿いなのだけど、私にとっては思い入れのある道だ。嬉しいときも悲しいときもこの道を通った。誰にも言えない悩みなんかもこの道に相談したりしてみた。いつも答えなんかは返ってこないけど、それでもいいの。それでも満足できたもの。     あゝ、明日もこの道を通って我が家に帰るの。いろんな感情を路肩の溝に置いてきたものだから、あのときの感情を鮮明に思い出すことが出来る。だから今を諦めないで生きていける。この道が私にyel

    • 【小説】チョコレートケーキ

          決して叶うことない想いに君が幻想を見せてきて、僕の脆弱な理性を揺るがせてくるんだ。それは甘くてほろ苦い、そして最後には無くなってしまうチョコレートケーキのようなものだろう。だからこそ僕はゆっくりとフォークを進める。まだ終わらせたくない。     橙色の街の灯りが、頼りなく僕を照らす。僕はアカリを待っている。今日は彼女と二人っきりで食事に行く予定だ。アカリは大学生の時からの友達で、社会人2年目になってもまだ友達のままだ。     「タケル、お待たせっ!」     

      • 【ss】白いシャツ

            サイケデリックなお気に入りのシャツに一点のシミがある。ほんの僅かな一点だが、僕の目を通すとそれは深淵と化すのだ。まるで覗かれている気分だ。こんなシミいつ出来たのだろうか。     クリーニング店に着いたのはちょうどお昼頃。自宅からは徒歩5分ぐらいで、アサガオを店先に構えた蒼天の空のような明るさを醸し出している。僕は心の奥底に佇んでいる黒いヨゴレを消すためにここを訪れた。     「すみません、この服を洗濯に出したいのですが、このシミは消えますか?」     およ

        • 【ショートショート】年末の自信

              もうすぐ今年も終わる。去年と違うのは、僕のすぐそばに4.5kgほどの小さな命の温もりを感じられることだ。31回目の大晦日を過ごすことになるが、これほど責任と愛情を肩に背負うほどの経験は、今まで一度たりともない。     本来の自分はライオンの血筋ではなく、草食動物のようだった。家庭を持つこととなり、人の人生に激しく関与することになった僕は、果たして来年こそはちゃんとしていられるだろうか。     あゝ、少しでも自分自身を傷つけることができ、その痛みを愛情に変えるこ

        【小説】帰り道

          【小説】暗がりの蛍火

              あと数ヶ月、自分の人生を決める大事な日まであと数ヶ月しかない。     灰色の未来を思わせる模試の結果を、月も濁るような目で眺めながら帰路を急ぐ。青色で彩られた制服で着飾る高校生活のイメージはバッチリなのに、どうしてこうも数字だけは追いつかないのか。僕の小さな背中に火が灯る。もっと勉強しなくては。     僕の心を孤独にさせる月の光に照らされながら、家路を辿っていると、ふと奇妙な光景に目が止まった。背中を丸めた老婆が足を抱えてうずくまっている。気になりはするが面倒

          【小説】暗がりの蛍火

          【掌編小説】有明まで

             電車内案内表示装置が目的の駅までの所要時間を知らせてくれる。あと3分。もう少しで着く。潮風と高揚が衝突し、環を成す。その中心地点では、魂を天に預けてベッドに横たわっているときのような落ち着きを得られる。 あゝ、とても待ち遠しい。    「有明が好きだなんて、まるで"おのぼりさん"みたいね」そう三日月のような目で言われたときは、右頬を打たれたら左頬を差し出すような私でさえ不快感を覚えた。でも好きなものは好きよ。 手取り16万にも満たない私の市場価値でも、この場所はそれを

          【掌編小説】有明まで

          【小説】青のセカイ

             理想、人が心に描き求め続ける、それ以上望むことのない完全なもの。そうであってほしいと思う最高の状態。それを俺はいつからか密かに持ち続けている。       「私が御社を志望した理由は、御社での企業研究を通して社会に対して貢献したいためです。というのも...」    就活は半年程前の大学院修士1年の2月に早期内定、内々定を貰って終えた。今までの人生を思い返すと、他人と比べて少しばかり順風満帆なものだと、客観的に見て取れる。    高校は進学校に通い、大学、大学院は東京の

          【小説】青のセカイ

          【短編小説】反転、死に至る病

            「タケル、一緒に帰ろっ!」 そう言うとアヤは、しばらく見入ってしまうほどの、赤く黄色く微かに青を織り交ぜたとような夕焼けが波紋状に照らす、窓辺に佇む机の上の可愛らしい何かのキャラクターのキーボルダーがついた学生カバンをいそいそと持ち出した。   「今日はさ、文化祭の劇の準備結構進んだよね」   「だな。ようやくセリフも覚えてきたし、本番も          きっと上手くいくと思うんだ」   「タケルも結構ハマり役だよね!」    アヤとは高校2年生で同じクラスに

          【短編小説】反転、死に至る病

          【短編小説】労働人応援曲

            人殺しだ。そう、私はたった今、人を殺してしまったのだ。   ある夏の日の夕暮れ、燃えたぎるような血色をした刃渡り5cm程の剃刀が、陰鬱なこの空間を照らす。鏡には鮮明な紅色のまだら模様が響いている。   きっかけは何だったのだろうか。生まれた時からの運命だったのだろうか。今までの人生をのらりくらりと過ごしてきた私の背に、ランドセルに重石をぎゅうぎゅうに詰めたほどの灰色の後悔が、ゆく手を阻むように伸し掛る。   3年ほど前、私は中堅it企業に勤めることになった。就活を真面

          【短編小説】労働人応援曲