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ChatGPTを使ったデータ分析で人事は今後どう変わるのか
こんにちは。WorkTech研究所の友部です。
以前、ChatGPTを使って人事でどんなことができそうか、について、こちらのnoteに書かせいただきました。
その後、2023年7月にリリースされた「Code Interpreter」という機能がリリースされました。ネーミング的にも、エンジニアとか技術系の人しか関係ない機能なのでは、という風にも見えますが、人事の方でも十分活用することができる機能です。この機能を使うと、人事データを使った分析が、データアナリティクスに詳しくなくても、統計学に明るくなくても、人事にいるひと誰もができてしまいます。そして使い方次第では、私のように人事でデータ分析を生業としているような人が淘汰されるのではないか、という危機感を覚えるくらい、素晴らしい機能です。
今回は、ChatGPTの「Code Interpreter」という機能を使って、人事データの分析がどのように変わるか、についてお話します。
ChatGPTでデータ分析ができる「Code Interpreter」
「Code Interpreter」は人間が普段使う言葉で指示を出すと、それをプログラムに翻訳してくれる機能です。ChatGPTでは、Python(パイソン)のコードとして実行します。Pythonはプログラミング言語の一つで、データ分析や人工知能に強い言語とされています。「プログラミング言語とか書いたことない・・・」となるかもしれませんが、ChatGPTとのやり取りではプログラミング言語の知識は必要ありません。
ざっくりしたやることのイメージは以下のとおりです。
手元にあるデータの入ったCSVファイルやPDFファイルをいくつかアップロードする
「多変量解析して」とか「とりあえずデータ分析してみて」とか言葉で指示を出す
これだけで、データ分析やグラフによる可視化を行ってくれます。また、分析結果からの示唆やネクストアクションとなる施策の事例も提示してくれるので、データをただ集計するだけ、とか数字が増えた・減ったというだけではありません。
では、実際にChatGPTの「Code Interpreter」を用いた人事のデータ分析について事例を紹介します。なお、ChatGPTの「Code Interpreter」の機能を使うには有料のChatGPT Plusに登録する必要があります。また、機密情報や個人情報の取扱は注意したほうがよいでしょう。
ChatGPTを用いた「エンゲージメントサーベイ」の分析の例
データ分析機能の活用のわかりやすい例として、今回は「エンゲージメントサーベイ」を事例として紹介します。以下のnoteでも紹介しましたが、従業員サーベイの「大変さ」の中に、「分析しても課題がわからなくて大変」と書かせていただきました。
こういった「大変さ」も、ChatGPTを用いたデータ分析では比較的容易に乗り越えることができるかもしれません。
サンプルで用意したデータ
今回事例として用意したのは、以下の3つのデータです。なお、これらのデータは全てシミュレーターでランダムに作成したものですので、どこか特定の組織の課題など示すものではありません。
従業員データ(社員番号、年齢、入社日、性別、職種)
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サーベイ質問データ(質問番号、質問カテゴリー、質問項目、質問文)
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サーベイ回答データ
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ポイントとしては、サーベイ質問データの質問番号とサーベイ回答データの質問番号の表記が異なる(No.1 と Q.1)ことと、従業員データの社員番号とサーベイ回答データの社員番号(Respondent ID)の項目名が異なる、というところです。人事のいろいろな部門が持つデータを組み合わせるとよく起こる、「同じ項目でも呼び方が違う問題」です。
しかし、ChatGPTによるデータ分析では、これらの違いを気にすることなくデータ分析を行うことができます。
CSVのアップロード
まずは用意したCSVデータをアップロードします。
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CSVデータをアップロードすると、データを確認します。質問項目のデータと同様に、属性データと回答データもアップロードします。サーベイの回答データについては、「各質問(Q1からQ71)に対する回答が数値で、Q72は自由記述の回答が記録されています。」というように、中に書かれているものを自動判定します。
分析の方針を確認
では、分析しましょう、といってもどこから手を付けていいかわからないこともあると思います。その場合には、ざっくりした質問をすることも可能です。
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デシプティブ統計ってなんでしょうか・・・。それは置いといて、何から手を付けていいか、よくわからない場合でも分析の方針を提案してくれるので、それに従って分析を行うことができます。もちろん、分析について詳しい方はもっと詳細なところから手をつけることも可能です。
eNPSの計算
このサーベイでは「eNPS」を算出するための質問をQ.71で用意しています。eNPSは「employee Net Promoter Score」の略称で、従業員のエンゲージメントを計測できる指標の一つです。数値の計算方法が特殊なのですが、ChatGPTに計算してもらうことができます。
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まず、eNPSとはなんぞや、ということについて教えてくれます。次に、アップロードしたデータの中から、eNPSに当たる質問を探しだします。そして、eNPSを算出します。ここまで全て自動で行います。
では、どういった層のeNPSが低いのか、質問します。
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役職別では非役職者の結果を見たい、などありますが、年齢別はちょっと細かすぎるので年代ごとでまとめて見たい。その場合でも、指示を出せばちゃんと集計してくれます。
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5歳刻みにしてeNPSを再集計してくれました。これを見て、「30歳〜35歳でeNPSが特に低くなっているので、ここを深掘りしよう」など、分析を進めることができます。
組織課題の抽出
次に、サーベイの回答結果から組織課題を抽出しようと思います。
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それぞれの設問の内容がわからないですが、ChatGPTが回答データと質問項目データを自動で紐づけてくれます。しかし・・・
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今回のサンプルデータ、質問項目データには不備があるため修正が必要となります。そのため紐づけの際エラーがでるのですが、自動でデータを修正して使えるようにしてくれます。そして、修正した結果が以下の出力です。
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スコアの低い設問項目が何か、をリスティングしてくれました。さらに、これらをまとめると「成長の機会やキャリアパス、働きがい」といった領域に課題がありそう、ということまで教えてくれます。
となると、「成長やキャリア」について、より課題を感じているセグメントがどこなのか探ってみたくなります。
課題となっているセグメントを探す
成長・キャリアについて課題に思っているのはどういったセグメントなのか聞いてみます。
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分析の方針について説明してくれます。また、回答データと属性データについて、社員番号とRespondent IDを紐づければ良い、と推測してくれます。
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まずは性別で比較したときのスコアの違い。「組織内で男性が自分の成長に対する期待感が低い可能性がある」、と示唆出ししてくれます。
他にも役職や部署ごとの比較も出してくれます。ChatGPTへの指示によって、こうした結果をグラフとして可視化することもできます。
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このように、ChatGPTにCSVファイルをアップロードして、あとは対話で気になるところを深掘りしていく、というごく初歩的な分析ではありますが、ChatGPTを使えば簡単にできる、ということをおわかりいただけたかと思います。
今回の事例では、シミュレーターでランダムに生成したデータを使っているため数値の傾向などあまりきれいに出ていませんが、実際の組織サーベイの結果などを使うこと、より傾向は見えやすいと思います。なお、冒頭でも書かせていただきましたが、機密情報や個人情報の取扱は注意する必要があります。
ChatGPTを使ったデータ分析で人事はどう変わるのか
このツールが人事で大きな影響を及ぼす可能性が高いと感じるのは、「データに対するリテラシーが高い/低いによらず、誰でも活用できる」というポイントだと思います。
何よりも大きいのは、対話によって指示出しができるところです。プログラミングや統計学に関する知識がそれほどなくても「とりあえず何か示唆だして!」と聞けば回答を返してくれますし、ある程度詳しい人だったら「多変量解析して」などより詳細に指示を出すことも可能です。Pythonのコードを書けるのであれば、ベースとなるコードだけChatGPTに作ってもらって、あとは自分でアレンジしてデータ分析する、といったことも可能です。
人事でデータ活用・データ分析が必要となる場面はいろいろあると思います。求められるデータ分析について、とにかくアクションを起こすことが目的の場合には分析の精度よりよりスピード感が大事になることもありますし、大事な意思決定においてはスピードよりも分析の精度が重要なこともあります。どちらの場面においても、ChatGPTをデータ分析のツールとして活用することは可能です。
また、こちらのnoteで「人事で活躍するデータ活用人材」のイメージについて書かせていただきました。
このnoteの中で、「データ分析人材に必要なスキル」として以下の3点をあげさせていただきました。
データハンドリングスキル:データを収集・加工・分析・可視化できる
統計的知識:データの特徴や傾向を把握できる
ビジネススキル:目的や成果を適切にコミュニケーションできる
このうち、「データハンドリングスキル」「統計的知識」については、今回紹介したChatGPTによるデータ分析で補うことができます(もちろん、求められる分析のレベル感にもよります)。そのため、「目的や成果を適切にコミュニケーションできる」人がChatGPTを使いこなせば、データ分析人材として十分活躍できる可能性があります。
将来的には、「人事におけるデータ活用人材不足の解消」も期待できるかもしれません。
今回のnoteではChatGPTの分析機能で人事がどう変わるのか、について書かせていただきました。分析機能の事例を紹介させていただきましたが、データ分析作業をいかに簡単に進めることができるか、理解していただけたかと思います。ChatGPTなど生成AIに関わる技術は、人事におけるデータ活用という観点で大きな影響を及ぼす可能性があるという意味で、WorkTech研究所では今後も引き続き注目していこうと思っております。
人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。