採用のKPIをどう考えるか
こんにちは。WorkTech研究所の友部です。このnoteでは人事におけるデータ活用を中心に書かせていただいてますが、これまで社内にいる人財をどう活用するか、を中心にお話をして来ました。いわゆるタレントマネジメント領域のお話ですが、人財を活用しようにもそもそも入り口の採用がちゃんとできていないと、活用どころではありません。そこで、今回は入り口である採用におけるデータ活用について、とっかかりとなる話をしたいと思います。
こちら研究所でも直近のホットトピックでして、「採用のKPI」をどう考えるか、をあれこれ議論しているところでもあります。
人事においてKPIが重要、という話をしてきましたが、採用においても同様で、そのKPIはどう考えればよいのでしょうか。
採用のKPIといえば・・・
「採用のKPI」というと何を思い浮かべるでしょうか。多くの場合、「入社者(あるいは内定者数)」を思い浮かべるかと思います。採用の目的は従業員を増やすことでもあるので、入社者数をKPIとして採用活動の是非を問うのはよくあることだと思います。採用活動の改善のために見る指標はほかにもいろいろありますが、まずは入社者数をKPIとして利用することが多いでしょう。
入社者数は採用のKPIとして優れています。立案した人員計画に対して足りない人数が目標値であり、その目標値に対してどれくらい人を採用できたかという入社者数により、採用にまつわる活動・機能がうまく進捗しているかを端的に確認することができます。こちらのnoteでも書かせていただいている通り、私はKPIを「端的にプロセスがうまく行っているか判断するためのツール」と捉えているので、入社者数を採用のKPIとして用いるのは妥当だと考えることができます。
ただ、採用の本当の目的はなんだっけ?と考えると、もっと良いKPIがありそうな気がします。
採用の本当の目的は何か
従来の採用のKPIである「入社者数」には課題点があると考えています。それは、
「いいひとを採る」KPIではなく、「人を採る」KPI、になっている
ということです。採用活動や機能が「うまくいっているか端的にわかる」ものが採用のKPIになります。入社者数をKPIにするということは、まずは人員計画の人数を埋めるというところに目的をおいていることになりますが、それが採用のゴールでいいのでしょうか。
採用の本当の目的は、シンプルに「いい人を採る」ことかと思います。立案した人員計画の足りない穴をただ人数で埋めたい、というわけではなく、ちゃんと会社や事業の目標を達成できる「いい人」で埋めたい。
採用のKPIとは採用がうまく行っているか端的にわかる」指標であることが望ましいです。「採用がうまく行っている=いい人が採れている」ということになります。いわゆる、採用の量だけではなく質を上げましょう、という話につながります。
採用のKPIはどうあるべきか
では、採用のKPIはどうあるべきでしょうか。採用の目的を「いい人を採る」だとすると、まず最初に明確にしなければいけないのは「いい人」とは何か、です。
いい人とは何か
「いい人」とは、もちろん性格的に良い人、という意味ではありません(もちろん、性格が良いことはいいことですが)。
企業組織において「いい人」というと、パフォーマンスの高い人だったり、ポテンシャルの高い人などいわゆる「優秀な人」のことを指しますが、このあたり定義が曖昧だったりします。ハイパフォーマーの定義については以下のnoteで言及しておりますので、ご参照ください。
いい人とは何か、採用観点では「入社後活躍するひと」です。入社前の実績や活躍など、その人のもつ能力の参考材料として重要ですが、あくまで入社後活躍しなければ過去の経歴はあまり意味をなしません。
活躍とは何か
では、「入社後の活躍」とはなんでしょうか。採用活動を行うにあたって、予め人材要件という形で「会社がその人に期待する役割」が設定されているかと思います。人材要件とは関係なく、なんとなく優秀そうだから採る、というケースもあるかもしれませんが稀でしょう。活躍とは、この「会社が期待した役割を果たしてくれること」となります。
採用は人員計画上足りないところを埋める行為、という見方もできます。この人員計画は、まず経営戦略(事業戦略)があり、それに基づく人事戦略があり、そこから作られるものです。会社が期待する役割を果たすことによって、人員計画の足りないところが埋まり、人事戦略、経営戦略がうまくいく、ということになります。
ただし、会社の期待した役割を果たすためには、経営戦略(事業戦略)上必要とされる期間にパフォーマンスを出し続けることが必要です。その期間は経営戦略や人員計画にもよりますが、半年や一年といった短い期間であることはないでしょう。
活用できるKPIにするためには
人員計画上足りないところが埋まったかどうかを示すのが採用のKPIだとすると、その正解がわかるのは長い期間がすぎてから、ということになってしまいます。
しかし、KPIを活用するという観点では、KPIを採用活動や入社初期のオンボーディング改善のために活用したいため、足りないところが埋まったかどうか、何年も待つ、というのは難しいでしょう。長い期間が経てば、会社や事業のフェーズも変わりますし、それに合わせた人員要件も変わってしまいます。KPIを採用活動やオンボーディングの改善に活用するためには、入社後遅くとも半年〜1年くらいで判断できる指標である必要があります。
そのためには、パフォーマンスを出し続けられるか、を半年〜1年で予測でき、具体的な改善点を把握できるように定量的な指標にブレイクダウンできる指標を作る必要があります。WorkTech研究所では、ELTV(Employee LifeTime Value:従業員生涯価値)の定量化などが採用のKPIにも活用できるのではないかと考えておりますが、まだ研究過程にあります。
採用のKPIの難易度は高いが、取り組む効果も高い
採用のKPIとして活用できそうなパフォーマンス予測の手法やELTVの活用などデータ面での難易度は高いと感じています。さらに採用のKPIに取り組むことは、データの面以外でも以下のような点で難易度が高いと感じています。
採用担当のコミットする範囲が入社まで、になってしまうことがある
入社前の期待と入社後の活躍が紐付いておらず、採用が良かったかを評価する手段がない
市況や事業、会社の変化が激しく、「質の見極め」が難しい
ただ、採用のKPIに取り組む過程で、これらのハードルを乗り越えることで、採用の本当の目的である「いい人を採る」ことが実現できると思っています。
今回のnoteでは採用のKPIについてお話しました。定義に応じて、具体的にどのような指標を見るべきか、その指標を見るためにはどのようなデータを取得するべきか、についてはWorkTech研究所で研究中です。データ面に限らず人事機能におけるハードルについても事例など含めて研究を続けています。別の機会にこちらのnoteでもお話できればと思っております。
人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。